ヘルプデスクとは?社内SEやコールセンターとの仕事内容の違いを解説
ヘルプデスクの業務で最も大切なことは、ユーザがシステムをスムーズに利用できるようにサポートすることです。システム構築は稼働させたら終わり、ではありません。それを長く安定させて稼働させる必要があります。
システムが稼働しているということは、当然それを使う人がいます。使う人であるユーザと、システムを設計、開発したエンジニアの間に入るような部門ですので、両者の橋渡し的な役割もあります。
技術的な知識に加えてコニュニケーションスキルも必要な「ヘルプデスク」の業務に、あなたはどんなイメージを持っていますか?
知っているようで知らないヘルプデスクの実態を皆さんにお伝えしたいと思います。
目次
1.ヘルプデスクとは
IT系のヘルプデスクとは、ユーザが使用しているシステムやパソコンに関する質問やトラブルについて、そのユーザをサポートする部門です。対象となるユーザが、その会社の社員のみであれば「社内ヘルプデスク」と呼ばれることもあります。
質問の受付は、電話、メール、チャットや、社内ヘルプデスクの場合はユーザ本人と直接会って対応する場合もあります。
類似の仕事としては、以下があげられます。
- テクニカルサポート
- ユーザーサポート
- サポートセンター
- テクニカルサポート
- コールセンター
- カスタマーセンター
- お客様相談室
業務内容については明確な位置付けはないため、同様の仕事内容でも、上記のような呼称に分かれる場合が多く見られます。必ず以下のような具体的な必要条件や、業務内容を確認する必要があります。
- 必要な知識:ソフトウェア、ハードウェア、特定の製品、特定の業務、など。
- サポート対象者:法人、個人、特定の契約が必要か、など。
- サポート方法:電話、メール、チャット、オンサイト、など。
- 対応範囲:一次受け、二次受け、エスカレーション先の有無、など。
- その他:勤務地、研修の有無、勤務時間(シフトの有無)、月収など。
1-1.ヘルプデスクの仕事内容
ざっくり言えば「ユーザのお悩み解決します」というお仕事ですが、ユーザ(顧客、または自社の社員)からの、問い合わせは多岐にわたり、主に以下のようなものがあります。
- 使用しているシステムやアプリケーションについての質問、トラブル対応
- パソコン操作方法
- プリンタなど周辺機器の使い方
- 修理の手配
- 各種クレーム対応
また、問い合わせの受付が「電話・メール」といっても、社内ヘルプデスクなどの場合は、機器の交換、インストールや設定作業などの「現地作業」を行う場合もあります。
1-2.社内SEとの違い
社内SEは、その会社のシステムについて「設計」「開発」「運用」まで行いますが、社内ヘルプデスクが係わるのは「運用」からの場合がほとんどですし、ヘルプデスクはユーザ対応がメイン業務となりますので「開発」を行うことは、ありません。
ユーザが少ない場合や、「設計」「開発」をアウトソーシングして社内SEがヘルプデスクを兼任することもあります。
関連記事2.ヘルプデスクの適性
一番にあげられるのは何といってもコミュニケーションスキルがある人です。
サポート対象のユーザは、理路整然と説明できる相手ばかりではありませんので、まずユーザの話を聞いて、その内容を理解してあげられること、相手によって説明の仕方が変えられればさらに仕事はスムーズです。
どうやったらそんなことが!?と、思うような事象を報告してくるユーザもいますので、好奇心旺盛な方にも向いていると思われます。
いろいろな方とお話をするのが好きな人にも楽しめる仕事ではありますが、自分がしゃべり過ぎないように注意する必要があります。相手7:自分3、程度の割合で相手に話していただくとちょうど良いようです。
ヘルプデスクは「ユーザのお悩み解決」にあたり、相手の要望や質問内容を正確に把握し、そのうえで、回答を相手に伝えます。不特定多数の方とお話するので、初対面の方とお話することが苦手であったり、電話対応が苦手な方には、あまりお勧めしません。(最近はメールかチャットのみでサポートを行う会社もありますが)
また、ストレスが多そう、という意見をよく聞きます。
それはクレームの電話や、いきなり怒鳴られたりするような場面を想像してのことだと思います。このような電話がかかってくることは事実ですが、クレームはあなたに対するクレームではありません。製品や、それを販売している会社に対してのことです。いきなり怒鳴ってくる人も、実は単なる八つ当たりであったり、よく聞いてみれば見当違いのことを言い続けているだけだったりします。
話す相手が代わるだけで相手がトーンダウンする場合もありますので、電話を代わってもらう、折り返しにする、など、無理をせずに是非まわりに助けを求めてください。まわりの先輩達はいい対処方法を必ずご存知です。
関連記事3.ヘルプデスクに必要なスキル・知識・資格
開発エンジニア、ネットワークエンジニアなどが打ち合わせをする相手は、自分と同等レベルの知識を持つ相手がほとんどであると思います。対してヘルプデスクはOSやネットワークに関する知識も当然必要ですが、「ピンからキリまで」なITスキルをお持ちの方とお話する必要があるので、これらの専門用語を噛み砕いて説明する、何かに例えて説明する、といったことができると喜ばれます。
関連記事さらに、しつこいようですがユーザのITスキルは「ピンキリ」ですので「自身のお悩み」を正しく伝えてくださる方ばかりではありません。起きている事象を正確に把握するためのヒアリング能力も必要です。
OS、ネットワークの知識以外では、Microsoft Office製品を使用できることが条件としてよくあげられています。また、ブラウザを使用するシステムが増えていますので、各種ブラウザの設定、操作方法も知っておく必要があります。技術は浅くても広く、またサポートするユーザの業務に関する知識が必要になる場合もあります。
以上をまとめると、以下のような知識、能力が必要といえます。
【必要な知識】
- サポート対象となるOSの知識
- ネットワーク関連知識
- 各種ブラウザの設定、操作方法
- サポートするユーザの業務知識
【必要な能力】
- 専門用語を噛み砕いて説明できる能力
- ヒアリング能力
- サポートするユーザの業務知識
【推奨される資格】
上記資格は必須ではありませんが、資格そのものというよりも、取得のために学習する内容は確実に役立ちます。
その他、ヘルプデスクがサポートする業務によって専門知識が必要なものは、資格の有無にかかわらず積極的に知識を吸収していくと、対応がスムーズになります。
関連記事 関連記事 関連記事 関連記事4.ヘルプデスクの年収相場
年収300万円から400万円での募集が多い傾向にありますが、転職サイトで以下のような仕事内容で募集されていても「ヘルプデスク」か「社内SE」や「ITエンジニア」かで年収に差が出ます。
- 社内のシステムに関する問い合わせ対応。
- PCのセッティング(初期設定など)
- ネットワーク機器などのチェック
また、同じ「ヘルプデスク」としての募集でも仕事内容が異なれば年収に差が出ます。
年収450万以上のヘルプデスクには、英語が使えることや、サーバ構築、保守経験があること、開発言語が多少できること、などが条件として設定されている案件が見受けられます。
5.転職前に知っておくべきヘルプデスクの七不思議
ところで「ヘルプデスク」はよく聞く職種ではありますが、「未経験者でもOK」の文字がついていることなどから、あまり専門性を感じないのではないでしょうか。
システムが安定稼動するため、というよりも、システムを安心して使用するためには欠かせない職種であるにもかかわらず「何かITっぽさが薄い」という意見まであります。
そんな不遇な(笑)ヘルプデスクの不思議について考えてみました。
5-1.なぜかエンジニアとは呼ばれない
OSやネットワークの知識があり、パソコンのキッティングからトラブルシューティング、ログ解析まで行っても、ヘルプデスクはエンジニアとは呼ばれません。「ヘルプデスク」のイメージとして「マニュアル通りの回答をすればいい、初心者でもできる仕事」のような、イメージがあるのかもしれません。
実際、「(ヘルプデスクは)ロースキルの人間でもやれる仕事」と、目の前で言われたことがあり、正直
ふざけんな
と、思ったことがありますし(笑)、社内の新人研修で「成績が悪いからヘルプデスクに配属」と言われたというケースも聞き、IT企業でその扱いか、と、非常にがっかりしたこともあります。
ヘルプデスクはシステム開発を行うことはありませんので、エンジニアとは呼ばれないのかもしれません。
しかし、ユーザの要望を把握し、問題の解決策を提案するというスキルは、SEが行う業務分析と企画提案で必要なスキルです。「ユーザのお悩み」の中には要望と要件が入り混じり、更には思い込みが加わっている場合もありますので、これらを判別しなければいけませんし、ユーザの話を聞くうえでその業務に関する知識や業務の流れを把握しておく必要があることもあります。
さらに、問題解決のためには他チームや他社との連携や折衝が必要になることもあります。
このあたりはエンジニアというよりコンサルタントに近いような気もしますが、いずれにせよ「○○エンジニア」に比べて年収は低い傾向にあります。
5-2.なぜか業務範囲が決まっていない
転職サイトで「ヘルプデスク」の仕事を検索すると、簡単な操作の問い合わせ、といったものから、PowerShellが必須条件になっていたり、システム監視のみであったり、調査、検証など、一体誰をヘルプしているのかよくわからない様相を呈しています。
開発ではないし、エンドユーザの対応もしてもらいたいし、とりあえずヘルプデスクってつけとく?のような安易さが伺えなくもないですが、前向きに考えれば、範囲が決まっていないということは、やりたいことをやらせてもらえるチャンスが多い、ということでもあります。
実際に、当初の予定は
- 一日数件の社内問い合わせ対応と、若干の事務作業
という「ヘルプデスク」で入社した人が、全て本人の希望で
- 一日十数件の問い合わせ(障害含む)対応
- 社内各種システムのアカウント管理
- PCキッティング
- PC修理
- 社内用サポートWebページ作成
- マニュアル作成
まで増えた例があります。当然交渉により年収もアップしています。
5-3.なぜか評価が低い
「設計」「開発」に深くかかわらないためか「難易度の低い仕事」と見られがちです。
「出来上がったものを動かすだけだし、マニュアルあるし、何かあったらエスカレーションできるでしょ」
というご意見もありますが、出来上がったシステムに不具合があったとき、設計したSEや開発エンジニアの代わりにまず文句を言われ、対応をせまられるのはヘルプデスクです。
代替案をひねり出し、何とか時間を稼いでも、開発エンジニアのレスポンスが悪く、あげく調査依頼の回答に「まずは、不具合によりご迷惑をおかけしたお客様にお詫びいただき・・・」などと書かれると「作った奴が謝れよ」と心の中で毒突いたりします。
そうして矢面に立ちながらもユーザの話を親身になって聞き、その対応には技術的な知識が必要なことがほとんどであるというのに、どこから「難しくない仕事」という判断がされるのか疑問です。よほど対応マニュアルがきちんとしていれば別ですが。
また、いろいろなサイトでエンジニアにもコミュニケーションスキルが重要と、という文字をよくみかけますが、これだけ知識とコミュニケーションスキルが必要な職種がなんということでしょう。
5-4.なぜか知り合いが増える
さて、そんな報われない感漂うヘルプデスクも、もちろん悪いことばかりではありません。「一期一会」的なお仕事ではありますが、「常連さん」も存在します。
社内ヘルプデスクに顕著な例ですが、そんな常連さん経由で名前が知れ渡ると、全く知らない部署へ尋ねていったのに妙にやさしく対応してもらえたりします。
こちらが知らなくても相手は自分のことを知っていて良いイメージを持ってもらえている、という状況は、仕事を進めるうえで非常にありがたいシチュエーションです。そうして社内で知り合いが増えますと、現在のシステムに関する不満や要望などの情報も増えていき、それは新しく社内に設置する機器の選定やシステムの変更時などに役立ちます。
また、少しでも知っている相手とお話するほうが緊張も緩和されますし、ある程度の信頼関係が築ければ、頼みごとも非常にしやすくなります。
5-5.なぜか知識が増える
インストールや設定変更、またはエラーや、ユーザが実際に使っている場面など、リアルに見たり聞いたりすることが多いため、自分自身の知識としてもためやすく、その後の説明にも説得力が増します。
ネットワーク障害の切り分けを行うために、DOSコマンド(ping、ipconfig、netstat、tracert、nslookup、arpなど)を使ったりもしますし、実際にLANケーブルをたどってHUBとの接続を確認する場合もあります。未経験でヘルプデスクを始めた方であっても、テキストだけの学習と違い実践での使用になりますので理解しやすいですし、関連知識も覚えやすくなります。
5-6.なぜか別スキルもUPする
ユーザは、ITスキルレベルは「ピンキリ」でも、業務スキルについてはプロです。お話を伺う機会があれば聞いておいて損をすることはありませんし、そのユーザが行っている業務への理解も深まりますので、「なぜこれが必要なのか」「どうしてこういう使い方をしたのか」など、質問や要望の意図、つまりユーザの本意を知る手がかりにもなります。
それがITスキルに直結しない知識だとしても、役に立つ日は必ず来ます。
また、サポートするシステムやアプリケーションに関して、それ専門の知識が必要な場合などは、否が応でも覚えます。同様に、周辺機器の修理や点検などに来られたエンジニアの方とお話する機会があれば、それもスキルアップのチャンスです。
5-7.なぜか幸せ
ヘルプデスクの一番の特典は、直接「ありがとう」と言葉をかけてもらえることです。
また、問題が解決してユーザが喜んでくれた時などは、こちらも嬉しくなりますし、IT系の職種でこれだけ感謝の言葉を直接いただける職種は無いのではないでしょうか。
それに、たとえ上司や先輩に褒めてもらえなくても、ユーザに褒めてもらえる機会は毎日あります。ちょっとした気遣いや提案を喜んでくれるユーザは意外に多いのです。
6.まとめ
ヘルプデスクは、IT関連知識も身につきやすく、そのシステムを使うユーザの反応を直接見たり聞いたりできる職種です。
また、相手の話をよく聞き、目的や気持ちを理解したうえで的確に回答をするということは、IT系だけではなく、社会全般で必要なスキルです。どれほど技術があっても、これらができなければユーザの要望は実現できませんし、せっかくの技術も役に立ちません。
ヘルプデスクで身につくスキルは、幅広く応用がきくスキルです。
機会があれば、是非一度ヘルプデスクを経験してみることをお勧めいたします。
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