ヘルプデスクに転職するためのチェックポイントを徹底解説
IT系の職種で求人を探すと募集が多い職種のひとつにヘルプデスクがあります。事前に研修期間が設けられている募集もあるため、IT業界が初めてという方でも採用されやすい傾向にあります。サポート対象が社内か社外(契約顧客など)かで若干業務内容は異なりますが、どちらも利用者が困った時に頼りにされる重要なポジションです。
ここでは、IT業界の経験の有無にかかわらず、これからヘルプデスクをやってみたい!と転職を考えている方にむけて、ヘルプデスクとして求められるスキルや、その後のキャリアプランについて解説していきます。
目次
1.まず、あなたがヘルプデスクをやりたい理由を確認しよう
ところで、あなたはなぜヘルプデスクをやってみたいと思ったのでしょうか。理由は人によってさまざまですが、多い理由のBest5はこちらです。
- 将来的にインフラエンジニアになりたい。(まずは経験を積みたいから)
- ヘルプデスクとして経験、知識の幅を広げたい(IT系以外も視野に入れている)
- ヘルプデスクのリーダーになりたい。
- とにかく給料UP!!(知識はそのあと)
- いまの職場を変えたい(環境を変えたい)
理由によって、これから必要とされるスキルも違えば、今後のプランも変わってきます。今回は、この5パターン別に必要スキルや応募時のポイントを解説したいと思います。
2.ヘルプデスクへ転職するために必要なスキルとは
「転職」なので、すでにあなたには社会人経験があります。IT系の職種でなくても、その時に得た知識や経験はヘルプデスクで必ず活かされます。そして、ヘルプデスクは操作やトラブルの問い合わせに対応し解決する仕事ですが、「先生」や「インストラクター」ではありません。ですので、必ずこの資格が必要!というわけではありませんが最低限必要なスキルはあります。1.で挙げたa~eの、どのパターンでも必要な「基礎知識」です。
2-1.IT系のスキルで最低限必要なものはこれだ
- OS、ハードウェアに関する知識
- ビジネス用ソフト(Microsoft Officeなど)の使用方法、設定、トラブルシューティング
最低限必要な基礎知識として、上記2つをあげました。そして、各パターンでここに積み上げていただきたい知識があります。下図をもとに解説していきます。
それぞれのパターン説明で赤枠内が最低限必要な知識です。
2-2.a.将来的にインフラエンジニアになりたい人が必要なスキル
将来的にインフラエンジニアになりたい人は、基礎知識に加えてサーバ、ネットワーク関連知識が必要となります。サーバやネットワークのサポートを行うヘルプデスクへ転職すれば、これらの操作を行う機会もありますが、そこへ転職するために「全くわかりません」という状態ではいくら熱意があっても採用する側も不安です。最低限、関連用語や機器の名称くらいは覚えておきましょう。知識があるなら、わざわざヘルプデスクを経由しなくてもいいのでは?と思うかもしれません。しかし、理屈は本で覚えられますが、どうやって使われているのか知らなければ最適な構成を組み立てることはできません。まずはヘルプデスクで実際に使っている人の声を実際に聞き、疑問に答えるというのは貴重な経験です。
2-3.b.ヘルプデスクとして経験、知識の幅を広げたい人が必要なスキル
もし、IT系以外も視野に入れて次もヘルプデスクで、と思われている方は、その分野の知識が「+α」にあたります(b-1)。特定製品の知識であったり、英語や中国語などの外国語の習得が必要になる場合もあります。IT系のヘルプデスクとしてさらに知識を、ということであれば、サーバ/ネットワークの知識や、+αとして経理や人事といった経営活動に関わる知識、サポート対象の方々が所属する部署に関する業務知識などが役立ちます(b-2)。
2-4.c.ヘルプデスクのリーダーになりたい人が必要なスキル
最初からリーダー、あるいはリーダー候補として転職するのであれば、知識があるだけではなく自分の体と心の健康も重要になってきます。いきなり根性論ぽくなりますが、リーダーが会社を休みがちであったり、何かあるたびにヘコんでいてはチームメンバーも不安になりますので、まず自分自身のコントロールができるかが必要なスキルです。メンバーを管理する立場となるので、どういったことがハラスメント行為となるのか、など、法務的な知識も必要になります。まずはメンバーとして転職してからリーダーになりたい、という方は、その後これらのスキルが必要になるということを覚えておいてください。
2-5.d.とにかく給料UP!!な人が必要なスキル(知識はそのあと)
これからヘルプデスクになることで給料UPを狙う方(ヘルプデスク未経験)は、まずはしっかり基礎知識を習得してください。資格取得のための学習をすることで、OS、ハードの基礎知識が習得できます。そのうえで今の仕事が「+α」の部分となり、採用につながる場合もあります。すでにヘルプデスクの仕事をしている方が経験者が給料UPを狙う場合は、転職を考える前に現状で給料UPの交渉ができないのかを考えてみましょう。転職するとなれば上司に「辞めます」という話をしにいくのですから、その前座のつもりで交渉してみてはいかがでしょうか。環境が変わっても給料UPを狙いたい!という方は現状の知識のままでも給料が上がる仕事はあるかもしれませんが(d-1)、やはり最低でも「+α」の知識があったほうが良いでしょう(d-2)。
2-6.e.いまの職場を変えたい人が必要なスキル(環境を変えたい)
通勤に時間がかかりすぎる、上司と合わない、とにかくいまのところに行きたくない、環境を変えて出直したい、などなど、職場を変えたい理由は様々です。ヘルプデスク未経験の方であれば、資格取得などを通して基礎知識の習得を、経験者が職場を変えることが最優先であれば、まずは今の知識を充実させることを目標として苦手分野を無くしましょう。ハードウェアのことは苦手、Excelもピボットテーブルはちょっと・・・など、避けてきた分野はありませんでしたか?これを機会にその部分にも取り組んでみましょう(e-1)。既にサーバ/ネットワーク関連の知識がある方は「+α」で何か加えてみてはいかがでしょうか(eー2)。
2-7.a~eどのパターンにもあてはまらない人が必要なスキル
なんとなくやってみようと思った、入りたい会社で募集していた職種がたまたまヘルプデスクだったから、など、5つのパターンにあてはまらない方もいらっしゃると思います。そんな方は、まず基礎知識と次にあげる「共通して必要とされる重要スキル」を身につけてください。
2-8.共通して必要とされる重要スキルがある
業務内容、業種を問わずヘルプデスクの重要スキルとして必ずあげられるのが「コミュニケーション力」です。サポート方法として、電話、メールに加え、質問者のところへ行って直接話をする場合もあります。相手の話を聞いて言いたいことを把握できることが第一歩なので、自分の意見を主張するだけではなく、相手を理解し、言いたいことをうまく引き出してあげる力が必要となります。
2-9.今後必要とされるスキル
外資系企業のヘルプデスクでは必須スキルですが、今後は英語、中国語などの外国語スキルが必要とされる場合があります。IT系の単語はそもそもが英語なので、そこに説明時に必要とする単語と、簡単な日常会話を覚えておくだけでも他者との差別化になります。
3.ヘルプデスクに向いている人の特徴(全パターン共通)
どんな仕事にも「向き不向き」はあります。ITスキルにプラスして「こんな感じの人にヘルプデスクは向いている」という点をご紹介します。
3-1.相手に共感できる
質問の内容で「そんなの無理に決まってるでしょ~」と、言いたくなる場合もありますが、どうしてそうしたいと思ったのか、どうなればいいのか、の2点は重要なポイントです。そこを無下に否定してしまうと、相手が怒ったり、話が進まなかったりと、クレームの原因となったりします。正論を相手に伝えても、受け入れられなければ問題は解決しません。言い換えれば、どれだけ相手に寄り添えるか、です。
3-2.質問やクレームの要点を掴み、説明できる力がある
3-1と少々似ていますが、話を引き出しても「つまり要点はここ!」とポイントが発見できなければ解決の糸口も見つかりません。自分が理解した内容を相手に確認するために、要点を説明できる力も必要です。
「説明できる力」は、他部署に事象を連携する時にも必要になります。
3-3.基本的なビジネスマナーを身につけている
社会人であれば当然といえばそうなのですが、やはり人と話すこととメールでのやりとりが多い職種ですので、言葉使いとメール作成時の文章力などは重要視されます。
4.応募時のチェックポイント
ヘルプデスク応募時に各パターンで共通するチェックポイントはこの3つです。5つのパターンにあてはまらなかった方も、この3つのポイントは必ずチェックしてください。
- 前提条件
- 入社時研修の有無。有る場合はその内容
- 対応範囲、量、人数、勤務場所
未経験OKかそうでないか、必須スキルの有無など前提条件のチェックは不可欠です。また、たとえ経験者であっても入社時に研修があれば安心できます。これらの共通ポイントに加えてパターン別のチェックポイントあげてみましょう。
4-1.a.将来的にインフラエンジニアになりたい人のチェックポイント
対応範囲にサーバ、ネットワークに関連したものがあるか確認しましょう。対応の過去履歴などを見るだけでも良い勉強になります。また、社内ヘルプデスクですと、会社内に端末からサーバまであり、ネットワークで接続された周辺機器が揃っています。実物も見られる場合が多く、利用者の声が聞きやすい環境でもあります。
4-2.b.ヘルプデスクとして経験、知識の幅を広げたい人のチェックポイント
入社時に研修がある、あるいは指導役として上司か先輩社員がつく環境がお勧めです。特にIT系以外の分野であれば尚更です。業界が異なれば使用する単語(用語)や言い回しなども違ってきますので、いきなり現場に投入されてとまどうよりは、事前に学習できる期間があれば安心です。
4-3.c.ヘルプデスクのリーダーになりたい人のチェックポイント
リーダー募集、またはリーダー候補募集の案件を探してみましょう。「リーダー候補」の募集であれば、その会社に慣れ、人脈も築けたところでリーダーとなれますので、メンバーとのコミュニケーションも取りやすいく、仕事もスムーズに進みます。
4-4.d.とにかく給料UP!!な人のチェックポイント(知識はそのあと)
給与額の確認が最優先ですが、勤務地、勤務体系(シフト勤務や夜勤、フレックス制度の有無など)、転勤有無、福利厚生の確認を忘れないでください。
4-5.e.いまの職場を変えたい人のチェックポイント(環境を変えたい)
優先順位を決めてから探しましょう。たとえば仕事内容、給与、勤務地、のうち、順位をつけるとしたらどうなりますか。「職場が変えられれば何でも」となると、一番候補が沢山ありそうですが、一番決めにくいものです。また、今の知識のままでは厳しそう、と感じたのであれば、前提条件としてよく上がっている分野についての学習を今すぐ始めましょう。
5.ヘルプデスクのこれから
ヘルプデスクは「コストがかかる部署」として捉えられがちなため、縮小傾向にある部署だと言われることがあります。しかし、これからは単純な問い合わせはAIに任せ、「人だからこそ」という部分を活かして利益につながるきっかけを生み出せる部署となれば、今後は更に重要視される職種であるといえます。そして、ヘルプデスクで身につくスキルは幅広く応用がきくスキルですので、生涯どの職種についても役立ちます。
5-1.ヘルプデスクとAI
ヘルプデスク業務は今後AIの学習能力を活用して、チャットボットやRPAなどで、まかなわれることが予想されます。しかし、AIが発達しても人間の臨機応変ぶりにはまだまだかないませんし「生身の人間が対応してくれている」という安心感を求める人が多いのも実状です。いくら学習機能が高くても、利用者に「使いにくい」と判断されれば結局は人に戻りますし、AIを活用した使いやすいシステムを考えるのは人なのです。また、全員が自分の疑問や要望を正確に表現できるわけではないので、そういったことを上手く引き出し、顧客満足度につなげられるのは、やはりまだ人間です。
6.ヘルプデスクに役立つ資格
質問されることの範囲が広いので、やはりここは定番の「基本情報処理技術者試験」をお勧めします。OS、ハードの基礎知識に加え、会社経営に関わるストラテジ系、マネジメント系の問題も出題されますので、総合的な知識の向上が望めます。少し難易度が高いかな、と感じる方は「ITパスポート」からチャレンジしてください。そこにやはり定番ソフトのマイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)があれば、OS、ハード、ビジネスソフトの知識があることが証明できます。
基本情報技術者試験/ITパスポート
【IPA 試験要綱・シラバスなど】
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_04hanni_sukiru/_index_hanni_skill.html
マイクロソフト オフィススペシャリスト(MOS)
【MOS公式サイト-マイクロソフト オフィス スペシャリスト】
IT系以外のヘルプデスクであったとしても、いまやどこの会社でもPCとプリンタがあり、それが複数あればネットワークで接続されている環境がほとんどです。上記2つを基盤として「必要だな」と感じたものは迷わず学習を開始してください。
7.さいごに
ヘルプデスクはIT系の中でもコミュ力勝負なところがあるので、ひそかに「人情派エンジニア」と思っております。そして、ヘルプデスクとして関わる人の範囲が広いので、自然とIT系以外の知識も増えてます。私は医療系の会社でヘルプデスクをしていた際に覚えたのは「医療系小ネタ」ばかりでしたが、病院に行った時に聞き覚えのある用語が多く、医者との話がスムーズでした。どんな知識でもどこで役に立つかわかりませんので、ムダと思わず頭の片隅に残しておかれるといいと思います。
ヘルプデスクはAIにとってかわられる、という話が最近よく出ますが、AIは「対応の途中で雑談をはさみ、相手の怒りをそらす」とか「相手の理解度を判断して説明方法を変える」というようなことはできません。開発系に転職される方はヘルプデスク経験を活かして是非こういった対応ができるシステムを作って欲しいと思いますが(笑)AIで出来ないことは何なのか、を考えてみると、ヘルプデスクに限らず今後の目指す道も見えてくると思います。
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