
SESとは?派遣との違いやグレー・やめとけと言われがちな理由を解説
「SES」という言葉は、IT業界で働いていれば一度は耳にしたことがあると思いますが、どんなサービスで、企業間がどのような契約を結ぶのか等を正しく説明できる人は多くはいないと思います。また、SESと検索するとネガティブなワードが沢山ヒットしますので、良い印象を持っている人も少ないと思います。
今回は、そんなSESの構造についてわかりやすく解説すると共に、なぜIT業界からSESを行う企業がなくならないのか等の業界の実態について解説していきます。
目次
1.SESとは
SES(システムエンジニアリングサービス)とは、クライアントに技術者を派遣することです。具体的には、クライアントのシステム開発やインフラ環境構築・運用を行う為にエンジニアの技術を提供するサービスを指します。その際にクライアントとベンダー間で契約を結びますが、クライアントの要望によって契約形態が異なります。
SESを行う企業がとる契約形態
- SES契約
- 請負契約
- 派遣契約
それぞれに違いがあり、契約形態によって働き方や責任の所存も大きく変わってきますので、契約形態にどのような違いがあるかを理解する必要があります。
2.SESを行う会社がとる契約形態を解説
前章でも述べたようにSESを行う会社がとる契約形態は3種類あります。契約の内容が異なりますので、何が異なるのかをまとめてみました。
2-1.SES契約は準委任契約と同じ
SES契約を結んだ場合は、業務を進める際の指揮命令はクライアント側(受け入れ側)が行うのではなく、ベンダー側(サービスを提供する側)が行わなければなりません。これは、準委任契約と同じですので、SES契約は準委任契約と同じ意味を持ちます。
このことから、SES契約でも指揮命令がクライアント側になる場合は、違反行為となってしまうのです。ですので、クライアント側に常駐する際に一人で常駐する場合は、指揮命令はクライアント側になってしまいますので、SES契約は成立しない事となります。
関連記事2-2.SES契約と派遣契約の違い
SES契約と派遣契約の違いは、指揮命令権がどこにあるかです。前述したようにSES契約の場合、指揮命令権がベンダー側にないといけませんが、派遣の場合はクライアント側(派遣先)に指揮命令権があります。
派遣には一般派遣と特定派遣があります。一般派遣は派遣登録をしている労働者をクライアントン側に派遣する形態(登録型派遣)で、特定派遣とは、社員として採用してる労働者をクライアントン側に派遣する形態(常用型派遣)をさします。SES企業では特定派遣を行う企業が多いです。
しかし、労働者派遣法の改定により、平成30年10月以降は特定派遣のみを行うことが事できなくなりました。このことから、特定派遣を行う企業は一般派遣事業許可も持っていなければなりません。
2-3.SES契約と請負契約との違い
SES契約と請負契約の違いは、クライアントとベンダーが何を約束するかです。SES契約は、決められた期間業務を行う事(技術を提供する事)を約束していますが、請負契約の場合は、決められた期間で成果物を提出することを約束しています。つまり、SES契約は成果物に対して責任を持たず、請負契約の場合は成果物に対して責任を持つこととなります。
2-4.SES契約と委任契約との違い
SES契約(準委任契約)と委任契約の違いは、ベンダー側が法律行為を行うかどうかです。委任契約は法律行為を行う場合に結ばれる契約となります。エンジニアが行う業務に法律行為は含まれませんので、IT業界にはそもそも委任契約は存在しないのです。
3.なぜSESはグレーと言われるのか?
SESを検索すると「グレー」「違反」といったネガティブなワードが多くヒットします。SES契約はITエンジニアを雇用しサービスを提供する企業では、多くの企業が取り入れている契約形態ですが、なぜネガティブなイメージがあるのでしょうか。
3-1.指揮命令権の所存が明確にしづらい
SESがグレーといわれる理由は、契約内容によっては、指揮命令権といった明確に証拠として残しづらい部分を制限している為、契約が違反されやすい為です。SES契約を結んでいても、実際は業務の指示を出すのがクライアント側である事があります。これは立派な違反行為となります。しかし、指揮命令権がどこにあったかが証拠として残しづらい為、違反行為として明るみに出づらく、グレーと呼ばれているのです。
3-2.実態が二重派遣になっている事がある
SESは派遣契約とSES契約どちらを結んでも働き方は一見同じですので、違法行為が起こりやすいのです。
IT業界はゼネコンと同じで商流があり、様々な企業からエンジニアが集まりプロジェクトを進めていきます。その際に、クライアントとベンダーが派遣契約を結んだ場合は、そのベンダーを通して他会社の社員がクライアント先に派遣されることは、二重派遣となり違法行為となります。
しかし、指揮命令がクライアント側からだったとしても、クライアントとベンダーがSES契約を結んでいる場合は、書面上は違法行為とははなりません。ただし問題なのは、SES契約を結んでも指揮命令がクライアントからある場合は、派遣契約と同じですので、実態は違法行為となるのです。
このように書面上と実際に起きている事象に差異が起こりやいことからグレーと言われているのです。
4.グレーといわれるのに、なぜなくならないのか
このように契約違反が起こりやすい状況にも関わらず、なぜSESがなくならないのかと言うと、IT業界の構造的にSESはクライアント側やベンダー側にとって、とてもメリットのあるビジネスモデルだからです。
4-1.人手不足により、クライアント側が頼らざるを得ない
IT業界は、急速に成長している為、常に人手不足の状態です。その為、クライアント企業は正社員として必要な時に必要なノウハウを持ったエンジニアを採用し雇用する事が難しいのです。また技術は進歩しますので、IT技術を扱う事を本業としていないクライアント企業がエンジニアの育成を行うのにも限界があります。
更に、システムをつくる時には、多くのエンジニアが必要になりますが、完成後は一部のエンジニアがいれば事足りてしまいますので、正社員として無期限で雇用し続ける必要が無いのです。
このようなクライアント側の都合から、必要な時に必要な技術を持ったエンジニアの技術力を一定期間だけ借りることができるSESはクライアントにとってメリットが多いのです。
4-2.SESはベンダー側にとってもメリットがある
必要な時に必要な技術を持ったエンジニアを雇い入れるなら、SES契約ではなく派遣契約だけ存在すればいいのではないかと思う人もいると思います。派遣契約ではなくSES契約を行う企業が存在するのは、前章でも述べたように指揮命令権がベンダー側にある為、指揮命令権がクライアント側にある派遣契約と異なり残業時間や作業分担等を管理しやすいからなのです。
IT業界で働くエンジニアにとってもクライアントの言いなりにならずに済む為、SES契約を望むエンジニアも多いです。
更に、SES事業自体が、ITエンジニアがいれば始められるビジネスである為、SIerやSESで経験を積んだエンジニアが自身で起業するのにもってこいのビジネスモデルである為、数名規模の会社から何千名規模の会社まで数多くの会社がSES事業を行っているという実態もあります。
5.エンジニアにとってのSESで働くメリット
SESがこの業界でベンダー側にとってもクライアント側にとってもメリットがある事業形態であることがわかりましたが、SESで働くエンジニアにとってのメリットが何かをご紹介します。
関連記事5-1.メリット1~様々な経験が積める~
SESで働く一番のメリットは、様々なプロジェクトを経験でき、技術に触れる事が出来ることです。クライアン
ト側に就職するわけではありませんので、同じ仕事をし続けることはほとんどありません。任された業務が終われば、新しいプロジェクトに関わることができる為、様々な環境で経験を積むことができ経験値を高められる事から、エンジニアとしての価値を高めやすいのです。
また、自分の興味がある技術がある場合、それを学び自己研鑽において実績を上げれば、転職しなくても興味のある分野に関わる事が出来るのです。
関連記事5-2.メリット2~残業のコントロールがしやすい~
メリットの2つ目は、残業時間がコントロールしやすい事です。
成果物に責任を持つわけではなく業務を遂行する事に責任を持つので、極端な話ですが、成果物に責任を持つ請負とは異なり、リリースに間に合わないから徹夜して作業をするといった事は発生しづらいのです。そして、労働時間に対して対価が支払われますので、残業すればしただけクライアント側にコストがかかります。
このことから、クライアント側は無駄な残業をさせないようにするのです。しかし、その分労働している時間に対価が払われますので、1分1秒の作業のクオリティは求められることになります。
6.エンジニアにとってのSESで働くデメリット
SESがグレーと呼ばれるといったデメリットもありますが、それ以外にもSES事業で働くエンジニアにとってデメリットはあります。
6-1.デメリット1~帰属意識が薄れがち~
デメリットの1つ目は、自社に対しての帰属意識が持ちづらい点です。普段客先に常駐して業務を行う為、用事が無ければ自社に立ち寄る必要が無い状況に置かれます。クライアント先と自宅の往復になると、自分はどこの会社の人間なのかわからないといった感情が湧きがちです。その為、自社に帰属意識が持てず転職を繰り返すエンジニアも多くいるのです。
6-2.デメリット2~最後までプロジェクトに関われない~
デメリットの2つ目は、技術を提供する事に対価が支払われる為自分の任された業務が終わればクライアントとの契約が終了してしまう事が多く、自分が携わったプロジェクトに最後まで関われないといった事が起きます。技術を扱うエンジニアとしては、最後まで自分の関わったプロジェクトを見届けられない事がストレスになる人もいますので、SESで働く上でのデメリットと言えます。
7.デメリットを払しょくできるようなホワイトなSES企業はあるのか?
ここまで、SESのグレーな部分やデメリット等を説明してきましたので、SESを行う会社で働く事を不安に思う人もいると思います。しかし、様々あるSESを行う企業の中には、エンジニアにとってホワイトな企業もあるのです。ホワイトな企業の特徴は、ITエンジニアの成長が自社の成長だと考え、様々な制度や福利厚生を導入している会社です。
ITエンジニアの数が増えれば増える程、業績が伸びるビジネスモデルである為、積極的にエンジニアを雇用する会社は多くあります。しかし、雇い入れたエンジニアがすぐに辞めてしまったり、お客様先で良いパフォーマンスが発揮できなかったりすると、人材を増やしても意味がありません。
こういった点にしっかり目を向け、エンジニアが不安に思う要素を補っていく制度や体制がある会社に所属すれば、SES事業で働くメリットを最大限に生かしてエンジニアとしての価値を高めて行くことができます。
ホワイトなSES事業を行う会社の特徴は、以下の通りです。
- 新卒や未経験者中心でなく、中途経験者のエンジニア採用に成功して伸びている企業
- 人間力教育の仕組みにきちんと投資がされている企業
- 営業力が高い企業
- 人事評価制度が明確である企業
- 40代以上のITエンジニアが多く活躍している企業
以下の記事で詳細を紹介していますので、是非参考にしてみて下さい。
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関連記事 関連記事8.さいごに
SESは、様々な契約形態が存在するがあまりに、残念ながらネガティブな面も多くあります。しかし、IT業界で欠かせないビジネスモデルであり、経験値を高めたいエンジニアにとっては様々な経験が積めるという最大のメリットがある働き方です。
SESの構造をしっかりと理解し、ホワイトなSESを見つけ出して、是非エンジニアとしての価値を高めてみて下さい。
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