客先常駐とは?つらいと言われる理由やメリット・デメリットを解説
「客先常駐」という言葉はIT業界に限った言葉ではなく、お客様先で就業していれば(つまり勤務地がお客様先なら)その全てが客先常駐です。ですので、働き方というか勤務形態の一種であり、所属している企業や契約形態の違いにはなりません。
多くは大手のSIer(SIerが分からない方はこちら)に派遣されて働くSES企業(SESが分からない方はこちら)のITエンジニアに対して使われることが多い言葉ではありますが、フリーランス(個人事業主)であっても、契約社員であっても、派遣社員であっても、正社員としての特定派遣であっても、働く場所が客先であれば客先常駐ですし、大手SIerの社員であっても客先で常駐している社員は多数います。(参考:ITエンジニアが働く職場の現状)
つまり、自社で働いているのか、他社で働いているのかの違いであって、業種や契約形態や雇用形態や所属している会社の規模などには関係のない言葉です。ここでは、客先常駐で働く場合のメリット・デメリットや留意すべきことなどについてまとめてみましょう。
目次
1.客先常駐とは?
客先常駐とは、自社ではなくエンジニアを必要としている顧客の現場に常駐してシステム開発等を行う働き方のことを指します。働く場所が毎日顧客の現場でありさえすれば、その全ての人が「客先常駐で働いている」ということになります。正社員であるか派遣社員であるか、大手SIerの社員か中小SES企業の社員かなどはまったく関係ありません。
※他の記事を見ていると、客先常駐=SES企業としてそのメリット・デメリットをまとめている記事が多いようですが、もしそちらが気になる方は下記の記事を参照頂くようお願いします。
関連記事2.客先常駐のメリット
とかく敬遠されがちな働き方である客先常駐ではありますが、実はメリットも多数あります。まずはそのメリットから見ていきましょう。
2-1.自社以外の多くのエンジニアと関われる
自社開発等の会社で従事していると、3年・5年、場合によっては10年以上同じ先輩の下で働くことになりますが、一般的に客先常駐で働く場合、半年とか1年、長くても3年程度の現場がほとんどになりますので、色々な現場を渡り歩くことになります。これが嫌だという人もいますのでデメリットの項目でも書きますが、やはり様々なエンジニアを関わり色々なことを学んだり人脈を作ったりできること、惹いては人間関係の構築を何度も挑戦できることは自分の成長につながりますから、大きなメリットと言えます。
2-2.極端な残業になることが少なめ
これは客先常駐の中でも大手SIerの社員であったり、受託契約をしている企業の社員であると必ずしもそうでない場合もありますが、客先常駐で働く場合、多くの場合で時間計算になっていることが多いです。つまり、残業させればさせるだけ、顧客にも超過料金が掛かる契約形態になっていることが多いので、よほどの炎上案件でなければ極端な残業を求められにくい面はあります。実際に、炎上しているプロジェクトにおいても客先常駐で来ているエンジニアは早めに帰らされ、残りは顧客の正社員だけで何とかするというシーンは散見されます。
2-3.出世にキャップがはまらない
客先常駐で働くことのデメリットとして「出世しにくい、スキルが上がりにくい」というものがよく挙げられますし、実際にそういう事例も多いのですが、自社開発に比べ却ってスキルが上げやすいという側面もあります。なぜなら自社開発であれば、先輩のスキルも上がっていかない限り「上が詰まってしまい」いつまでも同じ仕事をさせられるリスクはあります。一方、客先常駐であれば世の中には夥しい数のプロジェクトがありますので、もし自分が経験を積み、評価もされているのに、その現場のひとつ上の行程に空きがなく経験させてもらえないようであれば、その行程で募集の掛かっているプロジェクトに動けば良いということになるからです。それを実現するには後述する会社の選び方も大事になりますし、自分自身の努力も必須とはなりますが、論理上、理不尽なキャップははまらないと考えることもできるのです。
3.客先常駐のデメリット
ほぼ全ての項目がメリットの裏返しというか、セットになっているデメリットのようなものですが、当然にして客先常駐にはデメリットも多いです。それを見ていきましょう。
3-1.長期的な一貫したキャリアデザインがしにくい
様々な経験が出来ると言えば聞こえは良いですが、それは裏返せば一貫してひとつのスキルを磨き続ける人生にはなりにくいという側面があります。フリーランスや派遣なら自分でプロジェクトを選べますが、いずれかの企業の正社員として特定派遣で客先常駐している場合、企業の指示によって入るプロジェクトが決められますので、絶対に自分のやりたいことをやり続けられる保証はありません。これが自社開発で例えばjavaによるシステム開発しかしていない企業に勤めれば、ずっとjavaを出来ることはほぼ全員に見えているキャリアデザインですので、そういう意味でのデメリットはあります。
3-2.帰属意識が持ちにくい
毎日毎日、直行直帰で客先常駐する訳ですので、自分がどこの社員かという意識は薄れがちです。顧客や、そこに呼ばれている他の会社のエンジニアとばかり仕事をすることになりますので、自分がどこの所属であれ、この現場にいて経験さえできるなら、どこの所属でも関係ないという意識になりがちです。これは何年も自社開発で同じメンバーとばかり仕事をしている人とは大きな差が出ます。自社の本社の人間や担当営業などより、よほどお客様先の方々の方が近しいと感じる、というケースは多いです。
3-3.スキルアップに限界がある
客先常駐で呼ばれる現場の場合、その多くはPM(プロジェクトマネジメント)やPL(プロジェクトリーダー)のポジションや上流工程は、顧客のエンジニアが担当することが多く、常駐で呼ばれているエンジニアはひとつ下に見られて、誰にでもできるような仕事を振られる確率は高めです。ひどい場合、入社以来8年間ずっと同じ仕事をしているが本社は何も気にしてくれずほっらかし、みたいな例も多くあります。また、きちんとスキルアップできない場合、40歳を超えたあたりから急激に必要とされなくなるという大リスクにさらされます。
関連記事4.客先常駐で働く場合の留意点
メリット・デメリット意外に留意しておくべきことが幾つかありますので、それをまとめましょう。
4-1.郷に入らば郷に従え
客先常駐で働く場合の最大の留意点は、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)のレポートラインの確認と、細かな現場のルールを遵守することです。自社開発であれば、レポートラインは常に同じ上司だし、ルールもほぼ不変で慣れて身体に染みつくものですが、客先常駐の場合、その契約形態や現場の状況ごとに、毎回毎回レポートラインが変わりますし、何をやってよくて何が悪いのか、その順番はどうでなければならないのか、という細則が現場ごとに違います。これをエンジニアたちは「お客様先のご作法」と呼び、それを早めにキャッチアップする姿勢が求められます。そこでいちいち疑問に思っていたり異を唱えるのは、客先常駐には向きません。
4-2.技術力以外の自己研鑽を自力でする意識
自社で働く場合、そこにいる全ての社員が自社の社員ですので、上司や先輩含め周囲の人々があなたの総合的なスキルが上がるよう、技術力以外のことでも教育してくれたり注意してくれたりするケースも多いですが、客先常駐の場合、おしなべて技術力を買われて技術力の提供を目的に呼ばれているケースがほとんどですので、技術力以外の人間力や仕事力などを磨く機会や、注意叱責を受けるシーンも(相対的に)少なめになります。ですので、自身が年齢や経験に即したビジネススキルを身につけていけているか否かを気にする姿勢や、自己研鑽に励む姿勢が必要とされることが多いです。
関連記事5.さいごに
客先常駐とはあくまでも働く場所の違いでしかありませんので、それが良いとも悪いとも言えず、メリットもデメリットもあり、また客先常駐特有の留意点もあるのはお分かり頂けましたでしょうか。
ただ、客先常駐で働く多くの場合がSES企業の正社員として特定派遣で働くケースが多いですので、良いSES企業の探し方も教えてくれ!という声が聞こえてきそうですので、ポイントだけまとめまておきます。本文中のメリット・デメリットと照らし合わせながら読んで頂ければある程度納得されるかも知れませんが、もししっかり読みたい場合にはこちらの記事も参考になさってください。
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