ユーザー系とは?そのメリット・デメリットをわかりやすく解説!
SIerに興味がある方は、ユーザー系という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
そもそもSIerとは「Systen Integrator(システムインテグレーター)」の略で、顧客の業務内容を分析し、改善案を提案し、システム設計からハードウェアの選定や調達、導入サポート、運用まで一貫して請け負う企業です。
そのSIerは、その設立経緯によって大きくユーザー系、メーカー系、独立系の3種類に大別されます。ここではユーザー系について深く理解していただくためにも、メーカー系、独立系との違いについても紹介していきます。
SIerはその設立経緯が企業風土や開発案件の内容に密接に関係しているので、その中身を把握することはエンジニア業界で働く人にとって非常に役立つと思います。ぜひ、御活用下さい!
目次
1.ユーザー系とは?3つに分類されるSIer
大企業の場合いくつか子会社がありますが、その1つとして「ユーザー系IT企業」というものがあります。ユーザー系は大手企業の情報システム部門が分社化・移転して設立した会社です。システム子会社、情報子会社とも呼ばれています。
親会社の業務・業界知識とITに精通した情報戦略企業であり、主な業務は情報通信分野におけるコンサルティングとシステムインテグレーションを行っています。
ユーザー系IT企業は日本独自の企業形態であり、欧米企業の本社IT部門業務に相当するグループ全社の情報化推進機能を持っています。
そもそもSIerは主にユーザー系・メーカー系・独立系の3つに分類されます。これら3つは資本関係によって分類されているものですが、その特徴は大きく異なります。以下では、ユーザー系・メーカー系・独立系それぞれの特徴や違いについて説明していきます。
関連記事1-1.ユーザー系
ユーザー系とは、金融・電力・保険・商社・鉄道などの情報システム部門が、外販やコスト削減のために子会社として独立した企業です。
一つの会社の情報システム部門のままだと、自社のシステムの運用・保守のみで利益を生み出せませんが、独立して会社になれば他の会社からの仕事も請けられるので、利益を生み出せるというわけです。親会社の業務システム開発で培った業界知識やノウハウを活かして外販を行いますが、親会社が売り上げの大半を占める場合が多いです。
ユーザー系の主な仕事は、親会社のシステム開発や構築、運用、保守です。また企業からの要望でシステムの効率化や可視化、コスト削減などのプロジェクトを請け負います。
【ユーザー系企業例】
金融系
- 東京海上日動システムズ
- ニッセイ情報テクノロジー
- 第一生命情報システム
商社系
- SCSK
- 伊藤忠テクノソリューションズ
- 日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ
製造系
- 新日鉄住金ソリューションズ
- トヨタコミュニケーションシステム
その他
- JR東日本情報システムズ
- ANAシステムズ
- NRIネットコム
1-2.メーカー系
コンピューターメーカーや、ハードウェアメーカーの情報処理部門やソフトウェア開発部門から独立した企業です。
独立した子会社であることが多いですが、メーカーの傘下企業として稼働している場合もあります。親会社経由で受注する仕事もあれば、自社の営業で仕事を獲得してくることもあります。
グループ内で販売するハードウェアや、ソフトウェアを組み合わせたシステム開発が得意です。
メーカー系企業例
- 日立ソリューションズ
- NECソリューションイノベータ
- 富士通エフサスシステムズ
- 東芝テック
- 三菱電機メカトロニクスソフトウェア
1-3.独立系
親会社がなく、独自に設立、経営している企業です。IT業界の過半数を占めているのが、この独立系IT企業です。
主に大手の鉄道、銀行、電力会社などの名称に○○システムや○○総研がつく会社は、ユーザー系企業です。主な仕事はシステムの運用・保守よりも、システムの開発です。
そのため、要件定義や設計、開発といった業務がメインになります。しかし一口に独立系といっても、高い技術力で元受けの仕事を担当する企業や独自の自社製品・サービスで差別化する企業、下請け・孫請け・派業を主とする企業など様々です。
独立系企業例
- オービック
- TIS
- 大塚商会
- 富士ソフト
- インテック
2.ユーザー系のメリット
ここではユーザー系のメリットについて、具体的にみていきたいと思います。
2-1.経営の安定
SIerを自社に抱えらえる企業というのは基本的に大手で経営規模が大きく、経営資金も潤沢です。
ですから子会社であるユーザー系も、経営は安定しています。親会社が低迷している一部の企業を除けば、顧客を確保しておりかつ不況に左右されることなく常に需要があり、仕事が安定しています。
2-2.自社で働ける
基本的に親会社の開発に携わっているので、顧客のもとへ頻繁に出向くようなことはなく、客先常駐はありません。
独立系などは研修後すぐに客先に常駐し二度と自社には戻ってこないというケースもあり、自社でリラックスした雰囲気で仕事ができるというのは非常に魅力的です。
また自社での仕事が多いことで帰属意識が生まれるので、仲間と一丸となって目標へ向かって仕事をすることは、大変やりがいがあります。
2-3.充実した福利厚生
福利厚生は親会社ベースになるので、親会社がほとんど大手企業のユーザー系は福利厚生が非常に充実しています。
親会社によって大きく異なりますが、宿泊施設やスポーツクラブの利用が優待されるなど、独立系やメーカー系よりも恵まれているケースが多いです。
2-4.ホワイトな労働環境
離職率が全般的に低いのが、ユーザー系の大きな特徴です。顧客が親会社やグループ企業なので雰囲気が良く、過度な社内競争もないので職場が落ち着いています。
またシステムエンジニアは残業が多いイメージですが、親会社が大手であれば、グループ全体で企業倫理を遵守するよう言われているケースが多く、サービス残業や過度な残業はあまりありません。
もちろんシステム開発には波があるため、忙しくなると残業が月に80時間を超えることもありますが、5時間程度の月などもあります。
3.ユーザー系のデメリット
ここではユーザー系のデメリットについて、具体的にみていきたいと思います。
3-1.ITのスキル身につきにくい
業務がスケジュール管理などのドキュメント作成やエクセル管理に比重を置いているため、プログラミングなどのシステム面は協力会社に依頼してしまう傾向があります。
ユーザー系ではプログラミングは最初の3年だけという風潮があり、ITスキルは身につきません。ある特定の技術を何年もやっているメーカー系の何かに特化したエンジニアにはスキルで勝てず、転職は難しいかもしれません。積極的に資格を取ることをおすすめします。
3-2.出世しにくい
社長や部長といった管理職の多くが、親会社からの出向者で占められているのが現状です。内部からの昇進は課長クラスまでというケースも多く、部長レベルにまでいくにはかなり優秀な方に限られます。
3-3.給料がそんなに高くない
大手メーカー系の方が、給料は高い傾向にあります。親会社の給料がベースとなるため、親会社がIT企業のメーカー系と比べるとどうしても低くなるパターンが多いです。
しかし親会社が大きくなればなるほど子会社であるユーザー系IT企業の給料も高くなり、手当てもつきやすくなります。
いかがでしたでしょうか。ユーザー系は、バックに大企業がいるので安定していて働きやすいのがユーザー系の魅力です。
4.さいごに
是非SIerの仕事に興味を持った方は、ユーザー系も視野に入れてみてはいかがでしょうか。ITエンジニアとしてユーザー系を職場の候補として考慮する場合、ユーザー系の業界と親会社を調べることが重要なポイントです。業界と親会社が業務内容に直結しており、そこに入れば自分がどのように働くかシミュレーションしやすいのです。以下、ポイントをまとめます。
- ユーザー系は、大手企業の情報システム部門が分社化・移転して設立した会社が多い
- ユーザー系の主な仕事は、親会社のシステム開発や構築、運用、保守、また企業からの要望でシステムの効率化や可視化、コスト削減なども請け負う
- ユーザー系のメリットは、大手企業の子会社ならではの安定と働きやすさ
- ユーザー系のデメリットは、ITのスキルアップと出世が難しいことが挙げられる
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