独立系SIerとは?独立系SIerの2つの特徴と転職に向けて知っておくべきこと
就職活動でIT企業はどうだろうと調べ始めたときに、ニュース等ではあまり見ることも耳にすることもない、とある単語を目にすることはないでしょうか?
「独立系SIer」です。
「SIerって会社名なの?」、「独立系って何から独立しているの?」と、就活始めたてのみなさんが疑問に思うのも無理はありません。「独立系SIer」とは、「SIer(エスアイアー)」というコンピュータシステムを提供する企業のひとつの分類のことであり、日本国内でしか通用しない、日本独自のIT用語なのです。
本記事では、「SIer」の中でも特に「独立系SIer」にスポットを当てて、その特徴や、「独立系SIer」に向いているタイプ、そして「SIer」で働くために求めらえるスキル等について、初心者向けにわかりやすく紹介していきます。
「独立系SIer」って就職先としてどうなのかな?と迷うみなさんにとって、本記事がひとつの道標(みちしるべ)になったらいいなと願いつつ、まずは「独立系SIerって一体ナニ?」という基本理解から始めていきましょう。
目次
1.「独立系SIer」って一体ナニ?
前書きでも軽く触れましたが、「独立系SIer」とは「SIer(エスアイアー)」と呼ばれる日本独自のIT企業のひとつの分類です。本章では就活始めたてのみなさんに、「そもそもSIerとは?」、そして「独立系SIerとは?」という「SIer」の基礎知識についてご説明します。
1-1.そもそも「SIer」とは何をする会社なのか
「SIer」を何と読むのかすらわからない人も多いと思いますが、「エスアイアー」と読みます。システムインテグレーションの略語である「SI」に、「~する人」を表す英語の接尾語「er」を合体させた日本独自のIT用語です。「SIer」がどんな仕事をするのかについては、本サイトの別記事が初心者向けに詳しく解説していますので、以下の2つの記事をご参照ください。
関連記事 関連記事1-2.「独立系SIer」は何から独立しているのか
「独立系SIer」とは、何から独立している会社なのでしょうか?
それは、「メーカー系SIer」や「ユーザー系SIer」の背後に存在する親会社が、「独立系SIer」には存在しないという意味の「独立系」です。
「メーカー系SIer」や「ユーザー系SIer」には、それぞれ親会社がバックボーンとしてついています。そこには安定性や知名度の高さというメリットがある反面、「メーカー系」には「メーカー系」の「ユーザー系」には「ユーザー系」の親会社からの制約や縛りが多いというデメリットもあります。「メーカー系SIer」では、システムで使用するハードウェアやソフトウェアの選定時に、親ブランドの製品が最優先候補という縛りがあります。また、「ユーザー系SIer」においても、親会社からスピンアウトしたという成り立ち上、やはり親会社の業種に関連するシステムの受注が主力業種なのは、紛れもない事実です。
その点「独立系SIer」は、親会社が存在しない「独立系」ですから、顧客先の業種や、メーカー系のデバイスの縛りなく、最適なソリューションを選択・提案できる自由度の高さが魅力です。このように、「メーカー系SIer」や「ユーザー系SIer」と大きく異なる「独立系SIer」の特徴については、次の2章でさらにポイントを絞って解説していきます。
2.「独立系SIer」の二大特徴
「独立系SIer」とはどのような会社なのか、前章の解説でその概要についてはご理解いただけたかと思います。本章では、さらに「独立系SIer」についての大きな特徴を2つあげて、それぞれ解説していきます。
2-1.親会社とのしがらみがないこと
「独立系SIer」の大きな特徴は、まずこの1点です。前章でも解説した通り、「独立系SIer」には親会社が存在しません。そのため、親会社からの業種やデバイスの制限に縛られることなく、顧客にとってベストなソリューションを提案することができます。
親会社からのデバイスの制限については、顧客に提供するシステムだけではなく、そこで働くITエンジニアのオフィス環境にも大きく影響を与える場合があります。一例として、筆者が「メーカー系SIer」のオフィスに常駐していたときの実話です。コロナ禍が猛威を奮い始め、各企業が続々とリモートワークに移行し始めていた頃、リモートワーク用に各人の自宅に持ち帰るノートPCの在庫が足りないという理由だけで、リモートワークの開始が大幅に遅れたことがありました。在庫が足りないノートPCは、もちろん親会社メーカーの製品です。片や、そんな制約のないとある「独立系SIer」では、様々なメーカーのノートPCをかき集め、いち早くリモートワークに移行できたそうです。
また、「メーカー系SIer」や「ユーザー系SIer」の場合、親会社の方針転換や制度変更に翻弄される場合が多々ありますが、親会社のない「独立系SIer」では、当然そんなことは起こりません。
2-2.幅広い業種のシステムを経験しスキルアップできること
「独立系SIer」は、顧客先の業種の幅が広いことも大きな特徴のひとつです。
「ユーザー系SIer」であれば、親会社が金融系なら金融系システム、通信系であれば通信系システム等、親会社の業種に関連するシステムが主力業種であることは、その成り立ちからも必然です。「メーカー系SIer」については、業種の制限こそないものの、前項で解説したように、システムのデバイスの選定時に親会社の製品に囚われるという不自由さがあります。その一方で「独立系SIer」は、顧客先の業種に制限がないため、幅広い業種のシステムに関わって経験を積めるチャンスの幅も際立って広いと言えます。さらには、デバイス選定時の制約もないため、顧客にとってのベストソリューションを、世界中の数多あるシステムから選び提案するというスキルを磨くことも可能です。
3.就職先として独立系SIerを考えた場合 ~こんな人は独立系SIer向き~
本章では、就職先として「独立系SIer」にちょっと興味がわいてきたあなたに向けて、こんなタイプの人は「独立系SIer」のエンジニアに向いていますよ、という個人的な見解をご紹介します。個人的とはいえ、IT業界歴30年以上という筆者が、「独立系SIer」のエンジニアと一緒に仕事をしてきた経験則をベースにしていますので、それほど的外れではないはずです(笑)。
3-1.様々な業種のシステムに広く関わりたい好奇心旺盛な人
前章「2–2」でも解説したように、「独立系SIer」は顧客先の業種の幅広さが自慢です。金融系、通信系、物流系、食品系、政府系…etc.テレビCMで頻繁に目にするような企業や社会サービスのプロジェクトも多々あります。
そんな多種多様のプロジェクトで広く経験を積みたい、ひとつの業種だけではつまらないという好奇心旺盛な人には、「独立系SIer」の多様さや自由度の高さが向いていると思います。そこでの経験によって、ひとつの業種を深く掘り下げた仕事がしたいのか、幅広い業種に対応できるマルチプレイヤーになりたいのか、将来の選択の幅を広く持つことができるのも「独立系SIer」の魅力のひとつだと言えるでしょう。
3–2.安定性よりも数多くの現場でスキルアップしたい人
脅かすつもりはありませんが、「独立系SIer」が「メーカー系SIer」や「ユーザー系SIer」に比べると、企業の安定性がやや劣ることは事実です。親会社のしがらみがなく自由である代わりに、バックボーンとしての親会社からの恩恵を受けることもないためです。そのようなデメリットがある反面、「独立系SIer」には、前章から解説してきたように、幅広い業種のシステムを経験することによりスキルアップできるという大きなメリットがあります。そういった意味では、「独立系SIer」は、多少の難には目をつぶっても、自分のスキルを幅広い業種経験によって高めたいという、意欲的な人に向いていると言えるでしょう。
ただ、「独立系SIer」が安定性にやや劣ると言っても、「独立系SIer」はそこそこの規模の大手企業ばかりですから、何の前触れもなく倒産するという心配はありませんので、その点はご安心くださいね。
3-3.「ベストソリューション」を提案したいこだわり派の人
顧客先のシステムには、可能な限り顧客が望むベストなソリューションをご提供したいというのが、ITエンジニアの本音です。その際に、親会社の意向や「メーカー」制約の壁によってそれが阻まれるのだとしたらどうでしょうか?仕方がないと諦めるでしょうか?
そんなときに、「仕方がない」と諦めきれないこだわり派の人は、親会社の制約や「メーカー」の壁から自由な「独立系SIer」が向いていると思います。もちろん「ベストソリューション」と言っても、予算内での「ベスト」であることは必須条件ですが…。
とはいえ、「顧客要件を実現するために必要な機能が、別メーカーの製品には予算内で存在するのに…。」という悔しい想いをしたことがあるITエンジニアは、筆者だけではないはずです。
4.「SIer」で働くために必要なスキルとは
最後の章では、「独立系SIer」に限らず「SIer」で働くために特に求められる3つのスキルについて、解説します。とはいえ、これらのスキルは、「SIer」に限らずITエンジニアに共通して必要なスキルでもあります。ITエンジニアに必要なスキルは「技術力」だけではないのです。ITエンジニアになりたいと考えているみなさんは、ぜひ参考にしてください。
4-1.システム全体を俯瞰する力
これは特に、SIerで全体統括するような役割のITエンジニアには必須のスキルであると言っても過言ではありません。また、SIerに限らず、このスキルが高いITエンジニアはどの現場に行っても重宝されます。
SIerが顧客に提供するシステムは、いくつもの機能備えた総合的なシステムであることが殆どです。全体統括する立場にいる場合には、取りまとめる立場としてシステムの全体像を掴んでおくことは必須条件ですし、たとえひとつの機能を担当するだけの立場で参画するにしても、自分の機能の中味にしか考えが廻らないITエンジニアと、システム全体を俯瞰して見ることができるITエンジニアでは、どちらがより優秀か語るまでもないですよね。
4-2.交渉力
これや、このあとで説明するスキルについては、意外と思われる方も多いのではないでしょうか。ですが、この2つのスキルは、ITエンジニアにとって高ければ高いほど優秀なITエンジニアであると断言できます。ここではっきり申し上げておきますが、ITエンジニアの仕事は、プログラミング能力が高いとかPCやサーバのハードウェアに詳しいというだけでできる仕事ではないのです。
特に「SIer」の場合は、顧客先企業やプロジェクトに参画する他IT企業と、スケジュールや費用見積り、仕様調整等交渉することは盛りだくさんです。そこで交渉力を発揮して、自他両方が気持ちよく作業が進められるように進められるか否かが、ただの労働力としてのITエンジニアで終わるか、より高みに登ることができるかの境目であると言っても過言ではないでしょう。
4-3.コミュニケーション能力
コミュニケーション能力についても、「4–2」の交渉力とほぼ同じです。ですが、ITエンジニア全体のスキルという観点から見れば、交渉力よりもコミュニケーション能力の方がより大事で、ITエンジニアにとって必須のスキルであると言えるでしょう。
何故ならば、個人でつくれる小規模のシステムを除いて、たったひとりでつくれるシステムは存在しないからです。社会のそこここで動いているありとあらゆるシステムの大部分は、多くのITエンジニアたちが協力してつくりあげたものなのです。ITエンジニアというと、一日中PCに向かってひとり孤独に作業しているようなイメージですが、その実態は常にコミュニケーションを取りながら作業を進めているのです。
特に、SIerに新卒で入った場合、いきなり大規模プロジェクトの全体統括メンバとして、他のIT企業を統括する立場になることが多々あります。そんなときに、この能力なしに百戦錬磨のITエンジニアたちをうまく統括することなど不可能です。
5.さいごに
「独立系SIer」について、就活始めたてのみなさんにも興味を持ってもらえるように、できるだけわかりやすく解説してみたつもりですが、いかがでしたか? 本記事を読む前に比べて、「独立系SIer」についての理解が深まり、ITエンジニアについて少しでも良い印象を持ってもらえたら嬉しいです。
さいごに、みなさんのこれからの就活の助けになるような本サイトの記事をいくつかご紹介します。どの記事も力作ばかりですので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事 関連記事 関連記事本サイトの記事が、就活始めたてのみなさんの不安を少しでも軽くできたら、こんなに嬉しいことはありません。自分が納得できる就職活動になりますように、陰ながら応援しています。
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