就活の軸は「業界軸」がオススメ。文系からでもなれる技術職「ITエンジニア」の魅力

就活の軸は「業界軸」がオススメ。文系からでもなれる技術職「ITエンジニア」の魅力

福井克明(編集長)

福井克明(編集長)

ENGINEER.CLUB編集長/ボールド経営戦略本部長/53歳/ボールド歴11年

就活をしていて最も悩ましい質問に「あなたの就活の軸はなんですか?」という質問がありますよね。面接というシーンにおいて「なんと答えるべきか」は、また別の機会に譲るとして、今回は面接の答え方ではなく本当に何を軸に就活したら良いのか?答えから言えば、実際には「業界」で選んだ方がいいですよ!というお話です。業界で選ぶというのは、安易な選択肢だし、差別化にならない「軸」だと言われがちです。ただ、自分の人生を考えた場合、やはり業界選びは最重要です。月並みな答えで申し訳ないですけど、令和の今なら断然ITが良いです。

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目次

1.右肩上がりの「業界」を選ぼう。

なぜ今さら「業界で選べ」などという古臭いことを言うのか、とお思いの方もいらっしゃると思いますが、それでもなお、絶対に業界は選んだ方が良いです。そしてどんな業界を選ぶかというと、限られた数社だけではなく「業界全体が」右肩上がりの業界を選べということです。それには多くの理由がありますが、代表的なところを4つにまとめてみましょう。

1-1.そもそもサラリーマンの出世は「好業績」でないと停滞するから

業界の好不況により、まず絶対的に出世の確率や難度が変わります。サラリーマンというのは企業の発展性が鈍ると一気に上が詰まる仕組みになっています。それはもう特徴というより定説・真理です。ですので、入社する企業に求めるべき最低条件が「業績が伸びること」です。しかしながら学生の目線では、なかなか本当に伸びる企業というのは見抜きにくいものです。

業界そのものが好況であれば、伸びる企業の存在数が多いですので確率が上がりますし、経営をやや失敗して他社との勝負に劣勢になった企業ですら業界と共に伸びることがあります。その視点において、業界を選ぶことは非常に重要だと言えます。

1-2.会社が好業績であれば、おのずと教育や適材適所も充実するから

会社が好業績であると出世のペースが頭打ちにならない以外に、教育や社員育成が充実します。新卒から最初の数年でどのような教育を受け、どのようなスキルを身につけるかは人生を左右すると言っても過言ではありません。業界が右肩上がりで業績好調の会社は、社員への教育や、適材適所を丁寧にやるだけの体力を持っていることが多く、(あくまでも相対論ですが)充実した教育を受けられる確率が高めです。

 一人前の社会人になってから後の話であれば多くは自己責任とも言えますが、せめてそこまでの期間はしっかりとした教育を受けたいものです。

1-3.業界全体が好況であれば、売り手市場になり転職も有利に進むから

業界全体が好況であるということは、原則として恒常的な人手不足になりがちです。自然と売り手市場になり、一人一人の存在価値や市場価値が高めに推移していきます。新卒で入った会社で一生働くことも当然大きな魅力ではありますが、もし転職したくなった場合にも、業界さえ好況であれば伸びている企業も多く、転職に困ることはありません。

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1-4.要は人生は努力と確率論だから

業界の好不況、企業の浮沈に関わらず自力で人生を開拓できる人もいるにはいます。そういう人は、多少不景気な業種であっても自分の好きな業界に行けば良いというのもまた正です。しかしながら、真面目に努力をしていてもなかなか突破口が見つからない人の方が多数です。そのとき、業界そのものが右肩上がりというのは、企業だけでなく個人にとっても追い風です。自分を認めてもらえるチャンスも、努力が奏功するケースも、とにかく確率が上がります。自己の努力を無駄にせず、順風満帆なキャリア形成をしたいと思うならば成長業界であることは必須と言えます。


2.令和の日本の「良い業界」とは

では令和の日本において、業界まるごと右肩上がりという「中長期の好況」が見込める業界とはどこでしょうか。まさに今この記事を読みながら就活について考えている20代前半の方たちが、これから働く4050年においてずっと好況と言える業種は、日本には本当に少なく、結論から言えば大きく3つしかないと言われています。

一つ目はいよいよ本格的な高齢化社会を迎えることに伴い市場規模が維持・拡大される業界です。具体的には、介護及びそれにまつわる器具や製品、葬儀とそれにまつわるサービス、相続などに伴うサービスや事業継承M&Aなど。

二つ目は少子化や総人口減に伴う「国策」に伴って市場規模が維持・拡大する業界です。具体的には、外国人の移民や教育に関連するサービス、インバウンドの観光にまつわる事業などです。

ただ、いずれも大きな国家的課題を内包した業界であり、法整備や国策の方向性によって大きく結果が左右される業界です。

三つ目の業界だけが、民間主導でありポジティブな観点で中長期で市場規模を維持・拡大しそうな業界で、それがITです。

国策となった場合のマーケットの伸び

(参考)国策となった場合のマーケットの伸び(インバウンド観光の例)

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2-1.40年後までマーケットが維持されそうな業界は少ない

  日本はもともと金融やメーカー、インフラや重工業などが牽引して世界第2位のGDPを実現してきた国家です。素晴らしい業界であり、今後も世界と渡り合ってもらいたいですし、一部の企業は世界をも席捲する可能性を今なお秘めています。しかし、業界全体が中長期で好況という業界は皆無に等しいのです。

2-2.ある程度産業化が進んでいないと先々が見通せない

また、介護や葬儀、移民などに関わる業界はまだまだ産業化の端緒についたばかりです。国の保険制度なども威張れませんし、フラッグシップとなる企業もおらずナショナルスタンダードも確立していません。先行きはまだまだ不透明と言えます。介護業界に必要となる人材の需給ひっ迫はIT業界に近しいレベルであり、数十万人単位で不足するのですが(図2参照)、事業の前提となる保険制度が成り立っていないもので産業として成り立ちにくいです。国家課題ではあるので、いずれ国策で一気に成熟する可能性はありますが、現在では重労働な割に低賃金な業界の代表例になっています。一方で、介護職員全員の給与を平均5万円引き上げるだけでも年間に1兆円をも超える財源が必要となり、介護総費用額は10兆円以上になるという難題を抱えた業界であり先行きが見通せません。よほどその職業に夢や使命感を抱いている人でないと、新卒の就活で選ぶのは危険な業種と言えるでしょう。

介護の伸び

2-3.国策に頼らずとも民間主導で伸び続けるIT業界

 その点において(産業としては未成熟な面はありますが)民間主導で法整備に左右されず、相対的に中長期の見通しが立ちやすく市場が安定しているという意味では、IT業界は大きな選択肢と言えます。経済産業省が発表した今後の需給動向においても、2030年には58万人も不足するという統計もあり(図3参照)、市場の拡大により益々の需給ひっ迫が見込まれています。なんでもかんでも需給がひっ迫していればいいという訳ではなく、国家課題というよりもあくまでも市場拡大に人材供給が追い付かない形での需給ひっ迫が最もよく、それが唯一IT業界と言えます。

IT人材不足

 

2-3.専門職と総合職のバランスが良い

IT業界を広義で捉えた場合、実際に新卒の採用人数は全業界の中で圧倒的1位です。それだけ業界自体が活況で多くの企業が人的投資を積極的に行っているからであり、活況であるが故にキャリアの選択肢も多種多様です。大きく分ければ技術的な専門職になるのか、営業や企画などの総合職になるのかという二択ですが、専門職・総合職ともにバリエーションに富んだ多様な職種があり、自分に合った職種も(見極めるのは大変ではありますが)きっと見つかる業界とも言えます。


3.IT業界にはどんな職種があるか

 ではIT業界に進む場合、どのような職種があるのでしょうか。非常に多種多様な職種が誕生してきている業界ではありますが、大きく分けると、総合職、準専門職、技術専門職に分かれます。

3-1.他業種・多職種との互換性が高い総合職

IT業界と言うと、なんだか専門性の高い業界に感じる学生も多いと思いますが、実際にIT業界で総合職になるために必要な技術や知識はありません。もちろん、入社してからは多くのことを学ばねばなりませんが、入社段階ではSPI程度の試験しか行われず、それは他の業界と何も変わりません、

総合職として携われる職種は、営業、人事、管理、企画など他の業種にもあるほぼ全ての職種があります。また、それぞれITの知識も必要としますが、営業においても人事においても仕事の構造そのものは他業種と同じなので、後々IT業界を離れたくなった際に移れる先が多い「汎用的な」職種と言えます。どうせ同じ営業をするなら業界そのものが活況なIT業界でという「業界軸で選ぶ」筆頭の職種です。

3-2.デジタルマーケティング等の準専門職

  IT業界には、エンジニアと呼ぶほどの技術専門性はないが、総合職とは一線を画した専門的な職種がいくつかあります。代表的なのは、Web広告やSEOなどの知識・テクニックを駆使したマーケティングに従事する職種です。各種メディア分析やGoogleアナリティクスに代表されるいわゆるweb解析の専門家です。自社のサイトやサービスのための分析をインハウスで行う人もいれば、ビジネスとして他社(クライアント企業)のサイトやサービスを分析する人もおり、いずれの場合もデジタル領域に打ち出すメディアや広告・広報などを最適化することで業績を向上させるコンサルタントのような役割を果たします。

  この領域は、時代の最先端を追い続け、なんだったら先手を打っていく職種ですので、刺激的で興味深いものではありますが、そもそもデジタルマーケッターになりたい!と思った場合、職種確定で採用してくれるのは規模の大きめな広告コンサルかSEOコンサルなどを本業にしている一部の企業だけですのでトータルでの採用数は少ないです。またコンサルティング全般に言えることですが、世間一般のリテラシーが低い期間(数年~長いと数十年)だけに需要のある特殊な職種であり、営業職や技術職への転向も難しい職種でもあるので、よほど大学時代から独学やインターンで慣れ親しんだ人以外は、安易な覚悟で目指すのはお勧めできない特殊職種ではあります。

3-3.ITエンジニアという専門職

最後にIT業界の本丸といもいうべき、ITエンジニアという技術専門職があります。エンジニアというと高校・高専・大学などで本格的に習得した人だけが目指す技術職のイメージが先行します。実際、ITエンジニアにもそういう側面はありますが、令和の今、国内のエンジニアの需給がかなりひっ迫しているため、文系未経験からでも目指せる極めて特殊な状況にあります。

文系からでもモノづくりに携われ、かつ手に職がつくということから、近年文系学部からでもエンジニアを目指す人が急増しています。また、総合職や準専門職と違い、新卒でなってしまわない限り、異業種からの未経験転職で目指すことが許されない(ごく一部の道は残されますが相当狭き門です)ラストチャンスのような職種です。

業界そのものが中長期的に展望がよく、かつ需給がひっ迫しており、手に職がつき、ライバルが突然異業種からやってこない。まさに3拍子揃ったITエンジニアという選択肢。文系未経験の学生にも門が開かれているのは、令和の僥倖とすら言えます。


4.文系未経験から新卒でITエンジニアになる方法

文系学部におり、特に独学などでスクールに通うこともなかった一般学生でも今はITエンジニアを目指せます。例外は沢山ありますが、大きく分けると下記のような情勢です(2021年段階)

4-1.日本を代表するITサービスを提供するメガベンチャーのエンジニア

誰もが知っているようなITサービスを提供する企業(例えば楽天とかヤフー、amazonZOZOなど)の正社   員として技術職になるのは、競争倍率も高く、多くの場合、理系(中でも情報学部)出身か文系でも学生時代に数年間の実務を積んでいないと入れません。

4-2.ゲーム開発企業が採用・育成するゲームに特化したエンジニア

弱小のゲームメーカーならばともかく、こちらも既にヒットを何本も飛ばして有名な企業(たとえば任天堂やDeNA、スクエニ、カプコンなどの大手やガンホー、コロプラなどのメガベンチャー)では経験者採用しかしていません。また、ゲームのエンジニアは特化した技術を磨いていくので、後々ゲームでない業界のエンジニアへの転職がやや大変になります。どちらかと言えば、絶対にゲームエンジニアになる!と覚悟を決めている人向けの職種です。

4-3.日本の大手企業の90%以上の基幹システムを受託している大手SIerのエンジニア

SIerの文化は日本独特のものです。(※SIとはの記事のリンクを貼る)大多数の大手企業がSIerにシステムを丸投げしています。大手のSIerは原則理系学生中心の採用ですが、中堅・中小のSIerでは一部文系学生を採用する企業もあります。日本の全業種に及ぶシステム開発にあたることが出来ますが、あまりに人手不足で、プロジェクトごとに他社から多数のエンジニアを借りてきて、SIerの社員はPM(プロジェクトマネージャー)に徹し、複数案件を兼任して管理していくことが求められ、自分自身の製造経験が少ない(いわゆる「手を動かせないPM」化しやすいことがデメリットです。

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4-4.中堅・中小の自社製品・自社サービスで闘う企業のエンジニア

著名な大手企業ではない分、文系未経験者への門戸も開けられています。アットホームな技術部の中でじっくりと教えてもらえる環境があることが多いです。一方で、中堅・中小の自社製品は、その製品自体が市場で勝てずに経営が悪化したり、仮に悪化しなかった場合でも自社製品のみの開発・改修に長く携わるためスキルがかなり偏ることがデメリットです。

4-5.客先常駐型のSES企業から大手へ派遣されるエンジニア

大手IT企業や、大手SIer、ゲームメーカーなどでは自社のエンジニアでは到底足りず、多数のエンジニアを他社から借りてくることが多いです。それらの企業に向けエンジニアを派遣し、客先常駐型で勤務させるのがSES企業です。首都圏に存在するSES企業は3000社とも4000社とも言われ、その多くが文系未経験の学生も採用しています。文系の学生がエンジニアを目指す場合にもっともハードルが低い(採用される確率が高い)選択肢ですが、多くの企業において研修制度やスキルアップ制度、昇給制度などがきちんと整備されておらず、また客先に派遣してほったらかしのような企業も散見されますので企業の見極めが重要になります。

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5.おわりに

凋落傾向にある日本経済の中で、ITエンジニアという技術職を目指す価値や、文系からでも目指せることがお分かりいただけたと思います。どんな適性の方が向いているのか、どんな企業選びをするべきか等は別の機会に詳細を解説しますが、文系未経験から技術職になるラストチャンスが新卒学生としての就活です。ぜひ、みなさんも一度本気でITエンジニアという選択肢を考えてみませんか?

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