新卒向けの35歳定年説について解説

35歳定年説とは?エンジニアの定年が35歳と言われている理由

福井克明(編集長)

福井克明(編集長)

ENGINEER.CLUB編集長/ボールド経営戦略本部長/53歳/ボールド歴11年

IT業界を志望する学生にとって(特に技術職として志望する学生にとって)様々な情報が飛び交う中でも特に関心が強いワードに「35歳定年説」があります。これから人生をかけてIT業界に飛び込もうと思うにあたり、かなり不穏な言葉ですし、真偽の確かめようも難しいので当然興味の出るところだと思います。結論から言えば、35歳定年説はあります。ただ、学生でも分かると思いますが本当に35歳で定年になる訳でもなく、全てのエンジニアが35歳で路頭に迷う訳でもありません。

今回は35歳定年説の実態と、そのためにどういう会社探しをし、どのような努力をすれば良いのかを解説してみます。

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1.35歳定年説はある。

あるかないかで言うと、エンジニアの35歳定年説はあります。ただ、実はそれはエンジニアに限ったことではありません。古くは、事務系のOL(特に派遣社員を中心とした)の人達を語る際にも言われましたし、今でも極めて体力勝負を求められる職業には35歳定年説がささやかれることがあります。エンジニアの場合、常に技術の最先端をキャッチアップし続けなければならないことと、頭の柔軟性や手の動くスピードなどから35歳くらいになると若手に勝てなくなるという意味で正しい面もあります。しかし、そもそもエンジニアに限らず、全てのビジネスパーソンが35歳くらいまでに身につけなければならない素養を身につけていなければ定年や定年に近い状態に追い込まれることを知るべきです。その辺から解説していきましょう。

1-1.エンジニアの35歳定年説

日本にIT産業が誕生して以来、ITエンジニアは(リーマンショック後の数カ月を除き)常に枯渇していました。先進国でIT化の波が一気に加速する際に日本だけはバブル景気崩壊後の大不況にあったこともあり、各企業がIT投資およびそれに伴うIT人材投資に及び腰であったため常に需要に供給が追い付かない状態だったのです。 

※リンク(その経緯等について詳しく読みたい人は下記記事参照)

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それが全ての原因だとは言いませんが、とにかく新卒でIT業界に入ってくる人が技術漬けにされ、技術力ばかりを求められます。技術職なので技術を磨くことは最優先事項であり、それはそれで間違っていないのですが技術力だけしかない状態で30代後半や40代を迎えると、ある日人事部から呼び出され「君、よく見ると技術力しかないね。その年齢になったら色々できないと技術力だけなら若手の方が早いからね」と肩を叩かれ、技術でない閑職に回されたり、場合によっては退職勧奨をされ再就職も叶わず、アルバイトをしながら年金を待つような人生になっていくという流れが出来てしまいました。かなり簡単にまとめましたが、それがIT業界の35歳定年説であり、間違いなくありましたし、今なお多少なりともそういう現象は続いています。

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1-2.エンジニアだけではない35歳定年説

ここまでだけで既に「そんなひどい話があるのか!」と思う人もいるかも知れませんが、そういう業界はITだけではありません。強靭な体力を必要とする仕事、例えば宅配便のドライバーであったり、外食産業やアパレルなど立ち仕事メインで活発に動き回らなければならないような職種であったり、デザイナーやコピーライターなど柔軟な発想と実力と実績のみのプロの世界など、数えればキリがありません。ただ、体力勝負なほど分かりやすくなく、また実力主義のプロの世界であるのにサラリーマン的に目指す人が多いのが日本のITの特徴であり、そのギャップが大きいのでIT業界のみが取りざたされている印象です。

1-3.実は全産業・全職種がある意味で35歳定年説

もっと踏み込んでみると、それほど特殊な仕事でなくとも35歳あたりを境に「使い物にならない」と言われたり「閑職に追い込まれたり」「肩を叩かれたり」ということは散見されます。大手企業の中でも、出世の優劣が明確につき始め二度とトップランナーとして活躍できないことを知るのもこの頃ですし、中小企業やベンチャーでは「もう無理」と言われ雇用関係が終わることだってあります。

給与をもらっている以上、全ての職種がプロフェッショナルな訳ですので、年齢とともに成長を重ね、年齢なりかそれ以上のパフォーマンスを出し続けていなければ思うように報酬がもらえなくなるのは自明の理です。実際に勤勉で努力家でない人達はみんな35歳定年になってしまうとも言えます。それが顕著に出やすく、本当に職を失ってしまう人が多いのがIT業界のエンジニアだというだけの話です。


2.そうは言っても環境(会社)選びは大事

成長意欲を持ち会社から与えられるものだけではなく自己研鑽にも励んで力をつけていかないと、結局どんな職種であれ35歳あたりで優劣が決してしまうとは言え、やはりどんな企業を選び、どんな環境に身を置くのかは大事です。特に新卒でエンジニアになる場合、最初に入社した企業での研修や経験によって、自分の常識や当たり前の基準が決まっていく訳ですので、会社選びは慎重に行いましょう。

2-1.35歳定年説を乗り切れる確率が高い企業の5条件

何事にも絶対はありませんが、35歳以降も(もっと言えば定年まで)エンジニアとして働き続けられる確率の高そうな企業を探すことは可能です。もちろん、正社員として採用した新卒エンジニアを全員定年まで活躍させようと思っている企業が一番良いわけですが、それでは漠然としているし、どこの会社もその質問をすれば「当たり前です」と答えますから探せません。ですので5つの観点で「良い会社選び」の条件を示しておきます。

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2-2-1.40代以上のエンジニアが多数雇用されていること

35歳定年説を破って全社員を65歳まで雇用しようと本気で思っている企業には、絶対と言ってよいほど40代・50代の活躍の場があるはずです。雇用できているということは、彼らが働く場所があるということです。これほど分かりやすい指標はありません。年齢が近くて楽しそうみたいな理由で、20代と30代しかいないような企業を選ぶと、自分が40代になった時に憂き目を見ます。

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2-1-2.技術力研修以外に人間力や仕事力を身につける研修が多数用意されていること

エンジニアの場合、技術力だけを磨いていても褒められ給与が上がるのが20代です。ところが先述の通り、技術力だけを磨いて40代を迎えると「技術だけなら若い人の方がキャッチアップが早いから」という定番の台詞の餌食になります。学生さんはすぐに「技術研修が充実している会社に行きたい!」と言いますが、技術職を採っておきながら技術研修がない会社などほとんどありません。見るべき点は、技術力以外の人間力とか仕事力を伸ばすための研修が充実しているか否かです。

2-1-3.営業が強いこと

自分が技術者になろうとしている学生の場合、見落としがちなのが営業力です。この業界で会社を選ぶ際に重要なファクターのひとつです。客先常駐型(派遣型)の企業においては、営業こそが良いプロジェクトを良い条件で取ってきてくれる訳で、彼らが獲得したプロジェクト以外に働く場所がないですし、頑張った際に自分のスキルレンジを上げるように調整してくれるのも営業です。また、自社開発型の企業においても、技術だけではモノは売れません。良い商品と強い営業が揃って初めて社会で売れていくのです。なので、営業の強い会社を選びましょう。

2-1-4.新卒採用より中途採用で会社が伸びていること

これも新卒学生が見落としがちな条件です。IT業界は本当に人材の需給バランスが崩れており、経験者を中途で採用するのは容易ではありません。だからこそ各社とも新卒採用に力を入れるわけで、正直なところ採用難度で言えば中途の方が何倍も大変です。まだ経験したこともない新卒学生のIT企業選びと、この業界内で生きている経験者エンジニアのIT企業選びと、どちらが見る目が正しいかは言うまでもありません。「うちは新卒メインだから!」という企業も多いですが、今の時代に経験者が採れるのに採らないIT企業はありません。採らないのではなく、採れないのだ、と考えた方が自然ですね。

2-1-5.評価制度が明確にあり自分の努力で給与が上げられること

評価制度に関してはIT企業は他業種に比べて、かなり見劣りします。目標設定そのものがなかったり、仮に目標があるとしてもトップダウンで2年目はこうなりなさい、というような目標しかない企業も散見されます。また、目標を達成したとしても雀の涙しか昇給せず、結局のところ何を何年やっているのでそろそろ1万円上げようとか、お客様から頂ける金額が上がったから本人の給与も少し上げてやるか、というような乱暴な給与の決まり方もよく聞く話です。自分自身で目標を設定でき、それをきちんとやり切れば、仮にお客様からもらう金額が上がっていなくても自分の給与は上がるというような、自分の努力で待遇を上げていける企業を探しましょう。

2-2.良い企業の5条件を見抜く人事への質問方法

いやいや、ごもっともだけどそんなん入る前に確認できますか?という学生さんの嘆きが聞こえて来そうなので、今回は特別に質問の仕方も伝授しておきましょう。

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2-2-1.40代以上のエンジニアが多数雇用されているか

これはそのままストレートに尋ねても嘘をつける質問ではないので、そのままで良いでしょう。と言うか、20代・30代のエンジニアが当たり前だと思っている人事が多いので「え?40代とか50代なんていませんよ!」と普通に応えてくれる可能性があります。目安は一概に言えませんが、総エンジニア数に対し30%以上が40代以降であればかなり優秀な比率と言えます。

2-2-2.人間力や仕事力の研修が多数用意されているか

技術研修しかやらない会社も多数ありますので、これもストレートに聞いてみましょう。しかし、1講座や2講座あっても仕方なく、ラインナップ豊富にかつ高頻度で実施されていることが大事です。また頻度よりももっと大事なのが参加率です。IT企業にありがちなのが、研修そのものは制度としてあるのだが実態としてはごくわずかな社員しか受けていない、というパターンが多いです。受講させるための啓蒙や自己研鑽の文化づくりからしっかり取り組んでいる企業でないといけません。技術職社員の方で、月に一度以上の頻度で技術力以外の講習を受けている人が何%くらいいますか、というのが最もよい聞き方です。50%を超えていれば相当勤勉な集団であると言えます。

2-2-3.営業力が高いか

これが新卒の質問としては最も聞きだしにくく、聞いても本当かどうか分かりにくい項目です。まずは「営業部の強化には力を入れていらっしゃいますか?」というオーソドックスな質問をしてみて、「え?君は技術職なのになんで営業力なんかが気になるの?」とか「営業はそんなに強くないね~」みたいな企業はやめておきましょう。エンジニア出身の方が社長をしている企業で散見されます。「まあまあです」とか「力を入れていますよ!」と答える企業は見込みもありますが、その場合、商流が浅いか(元請けや2次請けのみ)チーム化できているか(複数参画)あたりで判断するしかないです。自社開発の場合には売上が計画どおりに進んでいるか、他社の競合製品よりも営業力で売れている面はあるか、などが代表的な質問となります。

2-2-4.新卒採用より中途採用で会社が伸びているか

これは純粋に質問しても答えてもらえると思います。中途の方が採れていると言われたらかなり良い企業である可能性が高まります。ただし、中途という表現の中にも「未経験者」をばんばん採って研修で資格を取らせて現場に入れるような採用をメインで行っている企業もありますので、「中途の経験者採用」で伸びているか否かを質問から導けるようにしてください。

2-2-5.評価制度が明確か否か

評価制度が明文化されていないとかはもう論外として、仮に制度があるという場合でも、その内容を根掘り葉掘り尋ねるべきです。ポイントは、①スパン(何か月に1回か)、②目標を自分で建てられるか(トップダウンでないか)、③技術力以外の評点も一定割合以上加味されているか、④達成した際の具体的な昇給額、⑤実際の社員の平均的な昇給額と昇給人数割合、あたりがメインの質問になります。具体的な昇給額は、平均を7年取り続けた場合の30歳時点での月給や年収を計算してみると、その企業での人生デザインが見えてきます。また、客先常駐型の企業の場合には「客先評価」も評点に加味されているか否かも重要なファクターになります。


3.環境を選んだあとは最後の最後は自分

言わずもがなですが、どんな企業を選んでも自分が頑張らないのでは話になりません。これはもうITエンジニアに限らず全業種全職種、100%共通です。ですのでここからはITエンジニアのというよりは、新卒の就活生全員に贈る話しにはなりますが、要点をまとめておきましょう。

3-1.適切な「目標設定」こそが自分の将来を決める

人間は自ら掲げた目標以上にはどうやっても成りません。圧倒的高い目標を掲げろとか言うと、昭和だ!という声が聞こえてきそうですが、でもそれは平成になっても、平成の次の時代になっても変わりません。自分で想像しうる限りの高い目標を期限付きで設定し、本気で実現する方法を考えぬき、それを弛まぬ努力で実行する以外に、成長の王道はありません。目標は明確に、半年サイクルくらいの短スパンで必ず立てましょう。

 ※リンク 目標設定の本質を知りたい人は下記リンクより

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3-2.「スタンス」が君の価値を2倍にも3倍にも変える

また、人間力は非常に重要なファクターなのですが新卒から入社早々では、人間力を上げろと言われても即座に上げるのは難しいですし、業務を覚えるので精いっぱいです。しかし、入社直後すぐからでも出来るものに「スタンス」を良くするというものがあります。入社当初は比較的皆さん高めなのですが、だんだんと薄れていくものです。元々高めなものを最高潮に高くし、それを下げない。スタンスを高めに取り続ければ、同じ努力、同じ成果を出していても、あなたの評価が2倍・3倍になっていきます。

 ※リンク スタンスとは何かを本質的に知りたい人は下記リンクより

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3-3.そうは言っても資格取得は大事

最後の最後に新卒でITエンジニアを目指している人限定の話しをもうひとつ。エンジニアは資格じゃなくて経験だとか、資格なんか持っていても現場では少しも役に立たん!とか、上級エンジニアは資格持ってない人の方が多いとか、とかくエンジニアの業界は資格否定派が多いですが…。それが一番の錯覚です。資格のお陰で本当に助かった人とか良い想いをしている人は、わざわざブログに書かないだけです。

学生同士を比べてごらんなさい。正直、能力差なんて言うほどないです。では、どんな企業に内定をもらうか、また入社後によりやりがいのあるプロジェクトや部署に配属されるか否か、一番のホープと思われている先輩のところには誰を入れるか。能力が互角なら、頑張っている人です。もちろん、もともとの性格とか相性とかも見ますけど。ITエンジニア志望の学生とか、入社早々のロースキル技術職の「やる気」とか「努力」を見るのには、やはり資格取得が最も分かりやすい(かつ数少ない)定量指標です。ITパスポートから始まり、基本情報技術者試験、出来る人は応用情報まで。やりたいスキルの決まっている人は、java/bronzeとかPHP5初級とか、LinuCレベル1とかどんどん取っていきましょう!

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4.さいごに

ITエンジニアを目指す学生にとって「35年定年説」が実際にあることは、残念なことこの上ない話だとは思いますが、他の業界にも結局あることだし、正しい企業選びをし、努力を怠らなければ今のIT業界は60歳まででも働ける業界になりつつあります。時代の変遷のせいでもあるし、需給が逼迫し過ぎたせいでもありますが、何より「エンジニアを定年まで働かせてみせよう!」と本気で思っている企業がちらほら出てきていることが一番大きいです。

ぜひ正しい就活をして、素敵な企業を選び、自己研鑽を怠らずにIT業界を楽しく歩いてください。そして、立派なエンジニアになって社会貢献してください。皆さんの可能性は文字通り無限大です!

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