まったくの未経験でもITエンジニアに転身して活躍できるのか?
ITエンジニアって、まったくの未経験からでもなれるの?というご質問をよく頂きます。
結論から言えば、未経験からでもなれます。新卒はもちろんのこと中途の転職においても可能です。
いま「エンジニア 未経験」とGoogle検索した際の結果表示も、転職サイトや人材紹介エージェントの広告記事だらけだったのではないでしょうか?それだけニーズがあるということでもあります。
新卒者が未経験からITエンジニアを目指す記事はこちらにまとめてありますので、この記事では中途転職者にフォーカスして解説しています。
「ITエンジニアになる」ことだけを目的にするならば、今の市況感であれば容易です。しかし、これまでに8業種を渡り歩き各社で役員を拝命し、累計2000人以上のビジネスマンをマネジメントし育成してきた経験から言うと「ITエンジニアはなってからが大変」という印象です。自己研鑽意欲が高く勤勉か否かという「自分の問題」もありますが、本来、教育を提供し優秀な技術職を育成せねばならない「企業側の問題」が大きいです。その辺を踏まえながら、未経験からITエンジニアへの転職をまとめてみましょう。
目次
1.ITエンジニアに未経験から転身できる背景
日本におけるITエンジニアの不足(枯渇)は言われ始めて久しいですが、まったく改善されていません。改善どころかますます逼迫している状況です。下記の図でも分かるように、今後20年にわたり不足数が拡大し続けるような予測がされています。未経験から転職できる背景には人材不足にまつわる幾つかの要素があり、それを本章でまとめていきますが、何より、異業種から未経験で転職してきたITエンジニアが大活躍しているという事実が大きいです。
営業職だったり、バーテンダーだったり、およそエンジニアリングとは無縁の職種の方々が、最初は苦労するものの技術面でのキャッチアップを終えると元々の業界でのご経験や培われた人間力などを活かしてITの第一線で活躍されています。そういう意味において、全くの異業種からの転職だからと言ってこれまでの努力や経験が役立たない訳ではありませんし、むしろ強みとすらなりえることは是非とも覚えておいてください。実際、弊社600人のエンジニアの最上位に立つTOPエンジニアも完全な異業種からの転職組です。
1-1.空前絶後の人材不足業界だから
日本においてIT産業が誕生して以来、エンジニア数は常に不足してきました。ITバブル崩壊直後(2000年~)、リーマンショック直後(2008年~)、コロナショック(2020年~)の3回にわたり、半年から1年程度、需給が落ち着いた時期がありましたが、それとて過激な奪い合いがなくなっただけで失業者で溢れるようなことは全くなく、むしろ需給バランスがちょうど合ったような状態でした。
「需給のバランスが悪く、売り手市場である」というのは未経験者に門が開かれる絶対条件であり、その筆頭にITエンジニアの業界があると言えます。
1-2.経験者だけでは業界も回らない、全産業のIT化が滞るから
業務の単なるデジタル化に始まり、インターネットの普及、全国民スマホ1台時代によるアプリケーションの急増、IoTの発展、ビッグデータ解析、機械学習(AI)の進化、ブロックチェーン等のセキュリティ技術の革新、そして今はやりのデジタルトランスフォーメーション(DX)というように、IT業界における新たな需要は枚挙にいとまがありません。特に日本の場合、先進国でも珍しい「大手SIへの一括委託」率が圧倒的に高いことも手伝って、IT人材の枯渇は全産業の共倒れを招きかねない喫緊の課題となっています。
国家全体として、IT人材の教育・輩出機能が全く追いついておらず、経験者の一部だけが転職市場で流動することでは需要を全く吸収できない状態です。未経験者を採用し育成することは、リスクも難度も高いのですが、それを避けては通れない環境になっています。
1-3.未経験者からエンジニアを育成する企業が増えているから
以上のような背景から、新卒段階での学生の採用はもちろんのこと、中途市場においてもITエンジニアに興味をもった未経験者の方がエンジニアになっていけるような道筋ができつつあります。多種多様な企業が採用と育成を打ち出し、未経験求人も多く掲載されています。一部ですが、育成型の研修企業も増えました。ただし、後述しますが「ビジネスになるから」という理由で参入したベンチャーが多く、未経験者が本当に一流のエンジニアへと育っていく社会システムと呼ぶには程遠い状況であり、求職者の見極め能力が必要な段階です。
2.未経験からITエンジニアになる方法
未経験からエンジニアになる方法は幾つかありますが、一般的な分類ではなく今回は「初期研修をどこでどのように受けるか」という視点で切り分けてみようと思います。これは実は非常に重要であり、未経験からITエンジニアを目指す際に、ご自身の嗜好性なども含め、よく検討した方がよい論点です。
2-1.未経験で雇用してくれる企業群に直接応募
転職サイトなどに掲載されている求人情報をもとに、自分で選んで企業に直接応募する方法です。ひと昔前はオーソドックスな転職方法でしたが、今は2-2で後述するエージェントを利用する方が主流です。、特に未経験者の転職者となると、業界のことも企業の良し悪しも分かりませんので、エージェント企業にいるアドバイザーに相談するというのは大きな選択肢です。
一方で、近年は純粋な転職サイトだけではなく、各種SNS等を通じて企業が直接的に求職者を探す潮流も出来つつあります。転職サイトと違い、企業の特色を色濃く表現しているものも多いので、自分の手で探し出して直観的にフィーリングの合う企業に応募してみるのも良いでしょう。
関連記事【総合転職サイト大手】
・リクナビNEXT(https://next.rikunabi.com/)
・マイナビ転職(https://tenshoku.mynavi.jp/)
・DODA(https://doda.jp/)
・en転職(https://employment.en-japan.com/)
【エンジニア特化転職サイト】
・type(https://type.jp/)
・green(https://www.green-japan.com/)
【その他】
・indeed(https://jp.indeed.com/)
・wantedly(https://www.wantedly.com/)
2-1-1.自社開発型企業(初期研修は自社)
文字どおり企業に採用され、その企業の中で先輩たちと共に自社商品の開発にあたったり、自社が受託している顧客企業のシステムを開発したりする企業群への直接応募です。まず、世の中に名が知れ渡った企業は新卒以外では経験者しか採用しない傾向にありますので未経験での応募は受け付けていないことがほとんどです。ですので、あまり名の知れていない「これからの」企業を見極める必要があります。自社内で先輩たちに囲まれて仕事をすることになりますので、職場環境は好まれがちです。一方で「教育体制が整っているか」「自社製品が売れていくか(会社が潰れないか)」という根本問題があり、また仮にそれらを差し置いても初期研修もその後のOJTも実践が始まってからも「スキルが自社製品のみに偏る」など、エンジニアとしてのキャリアデザインはやや難しい面があります。
2-1-2.客先常駐型企業(初期研修は客先)
未経験者を採用している企業に最も多いのが、SES事業(システムエンジニアリングサービス)を行っており、社員エンジニアを客先に常駐させるスタイルの企業です。首都圏だけでも3000社を超える企業がひしめき合っており、経験者の慢性的な採用難に陥っていますので、広く未経験者を採用しています。多くの場合、SIerを顧客としており、そのSIerが請け負っている大企業の基幹システムや業務システムを開発することが多いです。多種多様な業務に携われ、汎用的なスキルを習得できるのがメリットですが、「現場でのOJT研修が中心となりがちで最初が大変」「客先に自社の社員がほとんどおらず、会社もほったらかしなため自分がどこの社員であるかアイデンティティが持ちにくい」「多重構造の下請け企業に入社すると間に何社もの企業が入っており、顧客に近い位置ではまったく仕事ができない」などの懸念が散見されます。もっとも求人が多いのも事実ですが、もっとも見極めが重要な領域でもあります。
2-1-3.受かる確率を上げるために
いずれの場合にも言えることですが、未経験歓迎と書いてあっても本当に歓迎されているかと言えばそうでもないですし(当然、経験者が最優先です)、自分の人柄や人間性だけで勝負するのではなく、覚悟や情熱を見せないと簡単には採用になりません。独学でIT系の資格を取得したり、自費でスクールに通ってみたり、少なくとも時間や金銭という自己投資を始めていると、採ってもらえる確率が上がるのは言うまでもありません。数社受けてみて、全く無理なようであれば是非勉強を始めてください。転職そのものに時間がかかる傾向にありますので、現職をお辞めにならずに努力を始められることをお薦めします。
2-2.未経験者を企業に紹介してくれるエージェントを使う
ご自身での企業発掘と直接応募が難しいと思われる方は、転職エージェントを使うことになります。転職エージェントには大きく分けると2種類あり、ひとつは他の職種と同様に「キャリアアドバイザーが相談に乗ってくれ、単に企業への紹介をしてくれる」エージェントと、未経験からのエンジニア職に特化し「数週間~数か月の本格的な研修を実施した上で企業に紹介してくれる」エージェントがあります。それぞれのメリットデメリットをまとめてみましょう。
2-2-1.研修がない紹介エージェント
研修がない一般的な紹介会社は大手からベンチャーまで多数存在します。一番のメリットは時間もお金もかけることなく、キャリア相談に乗ってくれ、かつ自分に合いそうな企業を紹介してくれることです。各企業の未経験者の採用実績も分かっており、もっと言えばどんな人物なら採用されるかなどもある程度わかった上で紹介してくれますので、自分自身で転職活動をするよりは格段に成功確率が上がります。ただ一方で、そのエージェントの顧客企業しか絶対に紹介してくれないというデメリットが付きまといます。大手エージェントであればあるほど取引顧客数は多くなりますが、逆にキャリアアドバイザーによる面談やアドバイスは少なく(もしくは皆無で)、システマティックに自動で企業が10社20社とメールで紹介されてしまうというような本末転倒な状況になりえますし、逆に弱小エージェントだとかなり親身に相談には乗ってくれるものの、自身の性格や嗜好性に関係なく、自社の顧客を紹介されるというリスクがあります。エージェントを使うか使わないか、使うなら大手にするか中小にするか、正解はありません。ごめんなさい笑。
無理やりにでも概論で語るとすれば、自分で企業を見極める目がある人は自己応募で、見極める目はあるものの時間がないという人は大手のエージェントで、じっくり相談に乗ってもらい丁寧なアドバイスをもらったうえでないと決断できない人は小さなエージェントで、という感じかなと思います。いずれの場合も、初期研修は就職した企業内か客先ということになります。
【研修がない紹介エージェント一覧】
リクルートエージェント(https://www.r-agent.com/)
パーソルキャリア(https://www.persol-career.co.jp/)
マイナビエージェント(https://mynavi-agent.jp/)
パソナキャリア(https://www.pasonacareer.jp/)
アデコスプリング(https://www.springjapan.com/)
enエージェント(https://enagent.com/)
レバテック(https://levtech.jp/)
ギークリー(https://www.geekly.co.jp/)
ワークポート(https://www.workport.co.jp/)
キャリアデザインセンター(https://cdc.type.jp/)
アイムファクトリー(https://www.aim-factory.com/)
アールストーン(https://www.rstone-jp.com/)
など
2-2-2.研修がある紹介エージェント
転職エージェントには、初期研修をかなり丁寧に実施してくれる企業があります。エージェントが研修してくれると言った方がいいのか、研修会社がエージェントもやり始めたというべきか。おそらく双方ありますが、よく分かりません。笑
これらのすごいところは、自費で受けると数十万円を下らないような充実研修をほぼ無償で提供してくれるところです。これは未経験者には大変ありがたいですね。ただし、当然デメリットもあります。本格的な研修ですのでまず時間を取られます。長いものだと、平日朝9時~18時までみっちり毎日で3か月などになりますので、現職を退職してからでないと参加できずつまり研修が無償なのはありがたいが、深夜バイトでもしない限り、3か月無収入になってしまうことです。また、それらのエージェントは研修を無償で提供する代わりに「そのエージェント経由で転職してくれ」という縛りがついています。(もしくは研修を有償で提供し、そのエージェント経由で転職してくれれば研修費が無償になる)
ですので、そのエージェントが持っている顧客に転職することなることが既成路線となることと、研修が本格的な分、今の職を辞してからしか転職活動ができないことがデメリットです。
関連記事【研修がある紹介エージェント一覧】
インフラトップ(https://infratop.jp/service#webcamp)
インターノース(https://www.internous.co.jp/training/forapplicants/)
グルーブギア(https://www.groove-gear.jp/camp-geek/)
など
3.未経験エンジニアはむしろ入社後のことを心配せよ
以上のように、現在の過熱するITエンジニア市場においては、未経験からエンジニアになる道は多様に用意されています。ご自身の嗜好性にあった方法で転職活動をされれば、かなりの高確率で「ITエンジニアにはなれる」と思います。ただ一方で、エンジニアになった後のことが軽視されており、未経験転職者のエンジニアとしてのキャリアデザインには大いに不安が残ります。これまでの章でも少し触れてきましたが、入社したあと、どのようなエンジニアになっていくかという視点でまとめましょう。
3-1.SES企業が敬遠される訳
まず未経験からエンジニアとして転職できる就業先で圧倒的に多いのがSES企業です。日本のITエンジニアの半数以上がSES業界で働いていると言われていますので、求人が多いのも当たり前なのですが、SES企業には「入ったあと」の懸念がつきまといます。ITエンジニアと呼べるかどうか微妙な仕事しかさせてもらえない、一度客先に入ったらクレームでも来ない限りほったらかしで本社の担当営業から1年に一度しか連絡が来ない、下流工程の同じ仕事を3年も5年もやらされ全くスキルが上がらない、商流が深く顧客の顔が見えないしどこの会社で何をしているのか存在意義が分からなくなる…などなど。SESにまつわる「環境の悪さ」に関するコメントは枚挙にいとまがありません。しかも噂だけでなく、実際のところひどい会社も多いのが実情です。ただ、SESが最も採用されやすいですし、会社の見極めさえ丁寧にやればメリットも多いです。こちらの記事も参考になさってください。
関連記事 関連記事3-2.自社開発企業の懸念点
SESと比べると、自社の社員に囲まれて自社の商品・サービスに愛を注ぎながら帰属意識を持って仕事に就けるという意味で、自社開発の企業の方が人気が高めです。しかし、世の中で既に評判となっているような著名なサービスを持っている企業は、原則として経験者しか採用してくれませんし、未経験でも採用してくれる自社開発の企業の場合、逆に商品力(サービス力)が著名でなく先行きが不安という面が否めません。
また、スキルが自社製品に関連する狭い範囲だけに偏ってしまうことや、社内ピラミッドが小さくて年功序列になりやすく、先輩を超えてスキルを伸ばすのが難しいことが難点です。そもそも、見極めの難しい「自社で開発している商品やサービスの出来」に自分のキャリアデザインが左右されるというのが最大の問題点です。この商品なら人生をかけられる!と思ったものに出会うのは至難の業です。
3-3.勤勉な自己研鑽は必須
そうは言ってもいかんせん未経験からの転職ですので、SESであろうが自社開発であろうが、まずはチャンスをもらえるところで頑張ってみるというのが大事です。「全くの未経験」と「微経験」の違いは大きく、入社した企業がいよいよ芳しくなければ、経験さえ積めば自力で転職することも可能になります。
そのためには入社直後から、自分を律して他人よりも自己研鑽に励むことが大事です。現場の仕事のキャッチアップも、資格取得も、全ては仕事への自分のスタンスとして客観的に判断されますので、いつ転職することになっても「その姿勢の方であれば是非きていただきましょう」と思ってもらえる人間性が大事であり、特に初心者のうちは仕事への向き合い方と、研鑽意欲が重要です。これはITエンジニアに限ったことではありませんが、未経験から経験者を追うなら「できるかぎりの努力をする」という覚悟は持って臨みましょう!
4.おわりに
さて、未経験からITエンジニアになる方法やその留意点などについてまとめましたが、いかがでしたでしょうか。なれることは分かったものの、不安も大きいという感じでしょうか。ITは現在の日本において、今後の数十年の市場観が良い数少ない業界のひとつです。更にそのIT業界において、エンジニア(技術職)になるというのはいわゆる「手に職がつく」ことも含め、非常に有望です。大変であることは当たり前ですが、もし少しでも興味があるのであれば、ちょっとした勉強を始めてみられてはいかがでしょうか?まずはITパスポートあたりの資格が勉強に入りやすくおすすめです。
関連記事 関連記事これを言ってしまってはおしまいですが、今のエンジニア不足の市況感から言えば「未経験でさえなくなり経験者になってしまえば」その後はなんとかなる(会社がどうにもダメな企業であったら転職は比較的容易という意味です)というのが実情です。興味がある方はぜひチャレンジなさってください。
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