保守運用の違いとは?必要スキルや資格・キャリアパスまで徹底解説!

三国 竜治

三国 竜治

インフラエンジニア/PM/PL/チーフリーダー/ボールド歴6年

保守業務と運用業務の違いについて、どんなに検索しても明確に説明されていない、と思いませんか?

保守とは維持する事、運用とは継続する事を示しますので、保守運用とは地味な業務と思われがちであり、ITエンジニアとしてのキャリアアップが望めない、と勘違いされる事が多く見受けられます。

しかしながら、決してそんな事はありません。

現在はIT業界における「良いシステム」の定義が変わり、保守運用業務に対するニーズが高騰しており、ITエンジニアのキャリアパスとして、非常に重要な業務となっています。

保守運用業務の具体的な内容・違い・そして必要性までを分かりやすく説明していますので、ぜひご参考にしてください。


1.保守業務・運用業務の違いとは

端的に言うと、サービス提供状態を維持するのが保守業務、サービスを提供し続けるのが運用業務です。

いかなるシステムであっても、機器の故障や何らかの原因による障害(トラブル)が発生します。サービスを提供するには、これらトラブルの原因を早期に発見し、未然にトラブルを防ぐ事が重要であり、「原因の早期発見」を運用業務、発見した原因を解消するのが保守業務となります。

1-1.システムを正常な状態に保つ「保守業務」

保守とは「正常な状態に保つ事」を意味しており、システム内で故障した機器の交換や、その他システム上に発生したトラブルの解決を行い、サービスを提供し続けられる状態(すなわち正常な状態)に保つ事が、主な業務となります。

具体的な業務には「トラブル対応」と「システム改善」の大きく2つあり、数日~数週間で対応可能なものから、数か月~年単位での対応を要するもの、特殊な技術を要するものから、手順が確立しているものまで、様々なものがあります。

1-1-1.トラブル対応

システムにおけるトラブルには、①機器類の故障や性能劣化、②OSやミドルウェア・アプリケーション類の不具合、③セキュリティの脆弱性攻撃などが挙げられ、物理的な機器交換や性能改善、不具合・影響調査および対策といった幅広い対応が必要となります。

①機器類の故障や性能劣化

仮想・クラウド技術が進化した現代では、必ずしも物理的な交換を行うとは限りませんが、システムを構成する機器類が故障した場合には、必ず復旧作業が発生します。また、システムへの多重接続・大容量データの送受信・膨大なデータ処理など、システムが耐えられるキャパシティを超えた場合、CPUやメモリなどのリソースが枯渇するケースもあります。一般的には、これらの原因調査や復旧対応を行うのが保守業務担当、新しい機器類やサポートベンダーの手配、利用者へのメンテナンス通知や、トラブル対応レポートの作成・報告を行うのが運用担当となっています。

OSやミドルウェア・アプリケーション類の不具合

システムを構成する製品(OS・ミドルウェア・アプリケーション)は、開発・販売された後に不具合が発覚するケースが多くありますが、製品開発ベンダーと保守サポート契約を締結している場合であれば、不具合はベンダー側で解消して貰えます。また、マイクロソフト社のWindows Updateなど、発見された不具合に対する修正プログラムを配信し適用させる事で、事前に不具合を解消させているケースもあります。しかしながら、システム構築のコストダウンを目的とし、オープンソースによるアプリケーションを利用した場合には、不具合の原因調査や対応を保守業務担当が行います。

③セキュリティの脆弱性攻撃

主にウィルスやマルウェア感染などが挙げられますが、システムを構成する機器類が感染した際の対処や、各種サイバー攻撃の対応、セキュリティ製品をシステムへ追加導入対応などの業務があります。大手企業では、セキュリティに関する保守は専門部隊「セキュリティ推進室」や「セキュリティ委員」などが設置されているケースも多くあり、一般的な保守業務担当としては、システム構成変更に伴う機器類の設定となるでしょう。

1-1-2.システム改善

システム改善には、①提供サービスの改善、②ライフサイクル対応の大きく2つあり、インフラストラクチャーによる改善と、プログラム開発による改善などがあります。

①提供サービスの改善

提供するサービスに対し、視覚的・操作的なユーザビリティの改善を行い、利用者(顧客)の満足度を向上させる業務です。主にプログラム開発・改修の分野となり、一般的な保守業務担当としては対応しませんが、開発されたプログラムによっては、システム構成(主に通信要件)などの変更が発生する為、開発担当者と連携するケースがあります。

②ライフサイクル対応

システムを構成する機器類・OS・ミドルウェアなどは、ライフサイクルと呼ばれる「サポート期間」が存在します(先に記載したオープンソフトに関しては、その限りではありません)。このサポート期間が満了してしまうと、それ以降に発見された不具合や脆弱性などの報告および対応は行われない為、サポート期間が満了する前に、新しい機器やOSなどに切り替える必要があります。これらは「リプレイス」若しくは「バージョンアップ」と呼ばれ、新たなプロジェクトとして人員を手配し、要件定義・設計・構築・開発と言った大規模なものになります。

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1-2.安定したサービスを提供する「運用業務」

一方、運用とは「機能を生かし活用する事」を意味しており、サービスの提供(利用)やトラブル発生状況などのデータを収集・管理・報告する事が主な業務となります。また、システムを構成する機器やサービスの状態を監視し、トラブルの原因を早期発見する事も、重要な業務となっています。

具体的には、毎日・毎週・毎月など定期的に実施する事が決められている「定常業務」と不定期に発生する「非定常業務」に分類され、運用設計に基づいた対応となる事から、その多くはマニュアル若しくは手順書が整備されているのが一般的です。

1-2-1.定常業務

定常業務の代表的なものは、①サービスの正常性確認、②各種報告業務などが挙げられ、実際にシステムを構成する機器へログインして操作したり、蓄積されたデータを集計してレポートを作成したりします。

①サービスの正常性確認

システムを構成する機器類の状態確認(ランプチェック)や、自動的に実行されるプログラム(ジョブ)の実行結果確認など、目視による確認が多くあります。いつ・どの機器(若しくはジョブ)が・どのような状態であったのかを確認・記録する事で、いち早く状態の変化や異常を察知し、トラブルの発生を未然に防ぐとても重要な業務となります。

②各種報告業務

一定期間内における、ネットワーク機器やサーバ類の稼働率、CPU・メモリ・ディスク容量などのキャパシティ、伝送率や帯域利用率、インシデント発生件数などをレポートし、性能改善やサービス向上に向けた報告業務を行います。一般的には月単位で集計される事が多く、統計データによって発見される問題やリスクなど、サービス品質を維持する上でとても重要な情報となる為、報告レポートの作成および分析に数日~数週間かける場合もあります。

1-2-2.非定常業務

非定常業務の代表的なものは、①インシデント対応、②構成管理などが挙げられ、システムの運用設計によって異なりますが、1日の運用業務において殆どがこれらの対応に該当します。

①インシデント対応

インシデントとは発生した事象すべてを示し、問い合わせや障害・不具合・作業ミスなどの発生など、様々な情報となるため、インシデントを管理するチケットシステムを用いる事が見受けられます。主に監視システムからのアラート検知に対し、チケット起票・アラート内容確認・一次切り分け・エスカレーション・インシデント報告・チケットクローズなどが具体的な流れとなります。

②構成管理

システムを構成するすべての情報は、構成管理台帳等で管理されており、運用業務担当が取り扱う主な情報としては、アカウント情報やパスワード、ネットワークであればIPアドレスや通信制御などが該当します。これらの情報が更新されるトリガーには、利用申請・接続申請・作業申請などがあり、多くの場合には責任者(若しくは上長)の承認が必要であったりする為、その承認プロセスを円滑に回したり、申請者をサポートする事も、運用業務担当の重要な役割となります。

1-3.保守業務と運用業務の比較

保守業務は主に作業実施や環境設定のタスクが多く、運用業務は発生した事象に対する受付と報告のタスクが多くなっています。この事から運用業務は「フロント(前面)業務」と呼ばれたり、1番初めに事象を検知する事から、1番目のレイヤとして「L1業務」と呼ばれる事があります。

運用保守業務のタスクはこれだ!


2.保守運用業務に必要な資格とスキル

保守運用業務に必要な資格は、大きくサーバOS系とネットワーク系の資格に分類されます。

2-1.サーバOS系に有効な資格

サーバOS系に有効な資格は、マイクロソフト認定資格プログラム(MCP)Linux技術者認定試験(LPIC1-3)、また監視ツールとして、JP1認定技術者などが挙げられます。

何らかのトラブルが発生した際、発生個所・発生原因の切り分けがとても重要となり、この切り分け作業が適切かつスピーディに行われる事で、トラブルの拡大防止やサービス停止時間の短縮となる為、OSのログ確認や正常動作確認と言った知識が必要なのです。

2-2.ネットワーク系に有効な資格

ネットワーク機器であればシスコ技術者認定(CCNA,CCNP)などが挙げられます。

現代のシステムは必ずネットワークが構成されており、システムとしてサービスを提供する為には、ネットワーク知識が不可欠だからです。トラブル発生時やメンテナンス作業などだけではなく、その後のキャリアパスにとっても有利になります。

2-3.必要なスキル

保守運用業務で必要なスキルとしては、コミュニケーション力とドキュメント作成力が重要となります。

サービスを提供するにあたり、利用者からの問い合わせ対応なども重要な業務となります。この際に、適切なコミュニケーションが取られないと、利用者からのクレームに繋がる恐れがあり、また、報告書などの資料の他に、作業手順書・マニュアル類の作成も重要な業務として発生しますので、Excel/Word/PowerPointなどを用いたドキュメント作成力は必須と言えるでしょう。

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3.保守運用業務からのキャリアパス

現代のシステム評価は、これまで信頼性の高い機器を用いていた可用性から、保守性の高さによってコストダウンを図りながら可用性を高める思想へ展開しおり、今後のクラウド化が進めば、更に保守・運用のニーズは高まります。また、システムを構築するには、様々な角度からの要件定義・設計を行わなければならず、その為には保守運用の業務経験が非常に重要となって来るのです。

ITエンジニアのキャリアパスには様々なパターンがありますが、活躍しているエンジニアのケースとしては、監視業務→運用業務→保守業務→構築業務→設計業務→要件定義の流れとなっています。

運用保守業務の流れはこれだ!

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3-1.システムの理解には監視業務が不可欠

現代のシステム構成(通信経路や制御など)は、非常に複雑かつ大規模なものが多くなっています。その背景にはインターネットの普及・グローバル化・仮想技術/クラウド技術の進化等があるのですが、この大規模なシステムを理解するには、設計書などのドキュメントだけでは、長年の経験を持つエンジニアでなければとても理解出来ません。

これではITエンジニアとして技術を磨くどころか、単に手順に沿った対応しか出来なくなってしまい、ITエンジニアが不足してしまいます。そこで最も有効な手段とも言えるのが「監視業務」であり、ITエンジニアを目指すならば、率先して対応して頂きたい業務でもあります。

監視業務では、システムを構成するネットワーク・サーバ機器・OS・サービスなどを24時間365日で監視します。どの機器がどの様な役割を持ち、どの様な通信プロトコルによって、どんなサービスが提供されているのかなど、多種多様な構成を業務として覚える事が出来るのです。

3-2.システムの設計には運用業務が不可欠

システムとは、サービスを提供する環境構築でもプログラム開発でもなく、サービスを提供し続ける事の方が重要であり、サービスを提供し続ける為のコストは莫大なものとなります。このコストを削減する為、そして利用者が快適にサービスを利用する為には、運用設計が非常に重要となります。

運用業務では、いかに効率的な対応が重要かを経験すると共に、システム設計・構築時に運用を配慮してさえいれば、ユーザビリティの向上や品質向上が行えたのにと感じる事でしょう。これこそが、運用設計に必要不可欠な経験なのです。

3-3.システムの構築には保守業務が不可欠

システム設計に基づき構築作業を行う場合であっても、どの作業がどの通信・どの機能・どの機器に影響するかなど、前もって認識している必要があります。

この認識が不足している場合、既存の他システムやサービスに影響を及ぼし、大規模な障害に発展するケースがある為、必ず構築検証を行ったり有識者による手順レビューを繰り返し行ったりします。つまり、作業者としての熟練度が低ければ、構築作業は任される事がないのです。

この作業者としての熟練度を上げるには、保守業務を行う事が最適であり、作業における手順書・タイムテーブルの作成や実機検証を業務として覚える事が出来るのです。


4.さいごに

監視業務とは、IT業界の「縁の下の力持ち」的な存在です。発生した大規模な障害に対し、解決した保守チームが大きな評価を得る光景を目にしますけれど、本来であれば「事前に障害を食い止めている」監視チームが評価されるべきなのです。現在、監視業務を担当されていらっしゃる方がいるからこそ、世界のITシステムが稼働していると言っても過言ではないかと思っています。

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