新卒未経験が目指すべきITエンジニア像。まずは一流のビジネスパーソンたれ。そして手の動くPMに なれ。

福井克明(編集長)

福井克明(編集長)

ENGINEER.CLUB編集長/ボールド経営戦略本部長/50歳/ボールド歴8年

ITエンジニアの需給がひっ迫し、文系未経験からでもITエンジニアを目指す新卒学生が増えました。しかし、理系(特に情報系学部)の経験者ならともかく、未経験からいきなりITエンジニアになろうとする場合、いったいどんなエンジニアになれば良いのか、そのためにどんな努力をすれば良いのか、目指すべきとことも道筋も分からないという人も多いのではないでしょうか。今回はそういう方のために、汎用的なひとつの正解例を提示し、そうなるためにはどんな努力をしていけば良いのかをまとめてみます。


1.ITエンジニアもビジネスパーソン

まず最初に新卒生が絶対に勘違いしてはいけないのは「ITエンジニアもビジネスパーソンであり、技術力だけでは絶対に一流にはなれない」ということです。未経験からITエンジニアを目指す場合、とにかく技術力をつけ理系に追いつかねば!と思う学生が多いです。もちろん、技術者ですので、技術力がないと話になりませんし、少しでも早いタイミングで理系経験者に追いつこうとする姿勢は結構です。しかし、最初だけのつもりが、ずるずるといつまでも技術力偏向になりがちで、そこは気を付けなければなりません。

1-1.技術者である前にビジネスパーソンであること

これはITエンジニアに限ったことではなく、全ての業種、全ての職種に当てはまることですが、技術や知識だけ持っていても、それを使ってもらえる人間でなければ絶対に一流のビジネスパーソンにはなれません。ITエンジニアも同様であり、自分と同じ程度のスキルを持っている人はいくらでもいる、という発想が大事です。その中で、誰に頼みたいか?という視点や、誰に一番最初に次のステップにチャレンジさせてもらえるのはどのような人間か、という視点が重要です。結局、一流のビジネスパーソンを目指していなければ、一流のITエンジニアにもなれないのです。

1-2.ITエンジニアが一流のビジネスパーソンになりにくい背景

ところが、冒頭でも書きましたように、いまIT業界は空前のエンジニア不足に陥っています。それゆえ、技術力さえ持っていれば、案外と自分の他にそれが出来る人が見つからなかったり、多少人間力が劣っていてもお仕事が回ってきてしまう状況にあります。食いっぱぐれないという意味では結構なことですが、この環境こそがITエンジニアを一流のビジネスパーソンにさせづらくしている最大の要因です。人間は、強く求められたり、大いに困る場合にだけ、自分が持っていない後天的な能力を身に付けますが、そうでない環境で自分を律して研鑽していくのは大変なことだからです。

1-3.技術力と人間力を常に伸ばし続ける必要性

20代、30代のうちは技術力さえ持っていれば、仕事はどんどん与えられそれなりに評価も受けます。しかし、ITエンジニアも30代後半や40代になってくると、折衝力やリーダーシップ、チームの中での協調性やコミュニケ―ション能力、後輩の育成能力やマネジメントと言った「ビジネスパーソンとしての能力」を大いに問われ始めます。技術力に偏重して時を重ねてしまうと、自身のキャリアが頭打ちになり、場合によっては業界から退場させられることも散見されます。

また、雇用している企業側もとかく技術力の研修ばかりを充実させ、人間力やビジネス力を磨かせる体制を整えていない企業が多いため、環境に流されずに自分を律して研鑽を積む姿勢が問われることになります。


2.技術力を磨く

ITエンジニアは技術者ですので、もちろん技術力がないとお話になりません。未経験からITエンジニアを目指す場合に、どのような順序で技術力を磨いていくべきかまとめましょう。

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2-1.まずは与えられた仕事を人一倍真面目にやる

まずは最初に与えられた仕事を誰よりも早く習得できるよう、真面目に全力でやりましょう。IT業界の技術レンジは下図のようなピラミッド構造になっており、ひとつ上のステップに上がるには「選ばれない」と自分の意思では上がれません。これはITエンジニアに限らず、多くの仕事において同じことが言えますが、特にIT業界は、特に研鑽もせずに漫然と仕事をいていると、同じフェーズの仕事を5年、10年と続けさせられ年齢を重ねてしまうことが多いです。ギリギリ合格点の仕事をするのではなく、常に同じフェーズにいる他のエンジニアよりも前向きにプラスアルファの成果を出せるよう意識しながら仕事をしていきましょう。

2-2.ひとつ上にあがるために日々の努力と資格取得

日々の努力や自己研鑽の姿勢を他人に分かってもらうのに有効なのが、国家資格やベンダー資格を取得していくことです。よく「エンジニアは活きた技術力が必要であり、資格を持っているだけでは何の役にも立たない」と言われます。それはそれで正か否かで言えば正なのですが、それを資格取得の努力をしない言い訳にしてはいけません。

上級者であれば確かにそういう面はありますが、特にロースキルな段階においては「ひとつ上のフェーズにチャレンジさせてもらう際の大きな武器」として、先手、先手の資格取得は極めて有効だと言えます。特に資格取得を支援し重要視している企業においては、資格を取った人から順にチャンスが与えられていく傾向にありますので、時間の許す限り、常にひとつ上の資格に挑戦する姿勢は大事です。

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2-3.幅広い興味と研鑽。フルスタックエンジニアの価値

ITエンジニアには、大きく分けて「開発エンジニア」「インフラエンジニア」「ネットワークエンジニア」などの種類があります。

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ひとつの領域でスペシャリスト的にスキルを伸ばす方が圧倒的多数ですが、近年は、開発もインフラもネットワークも全ての領域を超えて習得しているフルスタックエンジニアの価値が高まっています。もちろん、全ての領域で上級者になるのは並大抵の努力では叶いませんが、一方で、開発のエンジニアもインフラやネットワークについての最低限の知見は会った方が絶対に仕事は円滑に回りますし、逆もしかりです。ある程度、自分のスキルに一定の自信がついて来たならば、フルスタック的な学びを始めることをお勧めします。


3.人間力を磨く

一流のビジネスパーソンたる為には、技術力と並行して人間力も磨かなければなりません。人間力は定義も曖昧であり、かつ企業が人間力を磨く環境を用意できていないことも多々あるため、どうすれば良いか分からずに放置してしまうITエンジニアが多数います。

人間力は大きく分けると、コミュニケーションや協調性などに代表されるヒューマンスキルと、PDCAやマネジメントなどに代表されるビジネススキルとに分かれます。ただ、いずれのスキルも「相手の期待水準を上回る」という姿勢が大事で、それを強く実践していくことで「人間力の高い人」というブランディングが出来ていくものです。

3-1.社会人としてのコミュニケーション

エンジニア(もしくは技術職)という響きから、寡黙な職人気質な職業だと思われがちなITエンジニアですが、実際はそんなことはありません。もちろん、営業や人事といった職種に比べれば多少口ベタでも何とかなるという側面はありますが、それも下流工程をやっている若手のうちだけです。エンジニアは単独で仕事を簡潔できることはほぼ無く、必ずと言って良いほどチームプレイになります。ですから、他のメンバーの置かれている状況や性格などに合わせて、自らコミュニケーションを取る姿勢は必須となります。

3-2.ビジネスパーソンの人間力は利他の精神

人間力と一言で片づけてしまうと曖昧で分かりにくいですが、スタンスとスキルに分けて考えるとしっくりきます。ITエンジニアに限らず、ビジネスパーソンは仕事に向かう「スタンス」が大事です。(以下の目標設定の記事にスタンスのことについて書いています)

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要は、自身のスタンスを良好にしていかないと、いくらスキルを持っていても依頼されない人間になってしまいます。スキルがなければ話になりませんが、スキルがあっても「他人様から使われなければ」何の役にも立ちません。

ですので、ITエンジニアにとって最も重要な人間力は「自分の努力によって、自分のスキルを使って相手の役に立ちたい」と思う気持ちであり、それも、ただ役に立つだけではなく「相手の期待値を超えるパフォーマンスを出して行こう」とする姿勢が大事なのです。

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3-3.進んで人間力を磨く自立心

ところが、人間力やスタンスのようなものは「学ぶ」場が限られています。特にITエンジニアを雇用する企業は、とかく技術力研修ばかりを優先して充実させます。それは、最低限以上の技術力があれば仮に人間力が足りなくとも、戦力にはなるからですし、人間力を向上させるのが難しいからでもあります。企業に人間力を磨く講座やそれを実践する場があれば、それに越したことはありません。自身の会社にそのような研修があれば率先して出席するようにしましょう。

会社に人間力研修がない場合、現場で磨くしかないのですが、ITエンジニアの現場というのはこれもまた技術力優先のことが多く、かなりの幸運で良い上司に当たらない限りなかなか人間力の指導は見込めません。そのような場合には、自己負担での外部研修や本などから学び、それを日常で実践してみるしかありません。いずれの場合にも、20代のうちは技術力メインで笑っていられますが30代・40代ともなれば必ず人間力が求められます。課題感と自立心をもって取り組んでいきましょう。


4.手の動くPMになろう

ITエンジニアの世界はPMを頂点とした無数のピラミッドで成り立っています。PMというのはプロジェクトマネージャーの略で、文字通り「プロジェクトをマネジメントする人(=プロジェクトのトップに立つ人)です。ピラミッドの頂点に立つ、責任のあるポジションなので「頑張っていずれはPMになりたい」と思う人が多いです。これを目指すのは、エンジニアとしての立身出世の王道とも言えます。

「PMとは何か」はこちらの記事に詳細に記載してありますし、PMとPLの違いもこちらの記事がありますので、それをご参照いただくとして、今回は同じPMでも「手の動くPMになろう」という点にフォーカスしてまとめていきます。

4-1.手の動くPMと手の動かないPM

未経験からITエンジニアを目指す人には分かりにくい話なのですが、PMにも色々なPMがいます。スペシャリスト寄りなPMとマネジメント寄りのPM、ひとつのカテゴリを極めたPMとフルスタックなPM、1業種に特化したPMと多種多様な業種を経験しているPMなどなどです。ただ、最も重要視すべきは「手の動くPMなのか、手の動かないPMなのか」だと私は考えます。端的に言うと、手の動くPMとは、自らが下流工程からきちんと実地を経験しステップを叩き上げて製造経験も設計経験も豊富に積んだ上でPMになった人であり、手の動かないPMとは、早期にPMに育成するという会社の方針により速習型で駆け足でPMになった人のことです。

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4-2.なぜ手の動かないPMが存在するか

働く企業によってはプログラマー(PG)やシステムエンジニア(SE)として優秀であることよりも、プロジェクトマネジャー(PM)として立ち上がることを優先する企業があります。システムインテグレーター(SIer)と呼ばれる業種において顕著にみられる傾向で、彼らはエンドユーザーである顧客からプロジェクトを受託すればするだけ売上が伸びますので、自社の社員はできるだけPMとして育てていき(しかも速習で)実際の設計や製造は最低限の人員だけを自社から出して、それ以外のPGやSEは他社から派遣してもらう形態でプロジェクトを進めることが多いです。自ずと、自社の社員は1日も早くPMに育てようという意識が働きますので、十分な経験を積まないまま、早めにPMとしての経験を始めることになります。

4-3.最短ルートはやや危険な選択肢

文系未経験の学生と話していると、単に「PMになりたいです」という人が多く、理系の情報系学部などで経験を積んでいる学生と話していると「きちんと製造経験や設計経験を積んだ上でいずれはPMになりたいです」と答える人が多い印象です。どちらが正解ということはないのですが、私としては理系の学生の方がやはり本質的なキャリアビジョンを持っているように思います。マネジメントのプロになると言えば聞こえはいいですが、やはり自分自身が手が動かないと、何か問題が起こった際に、自分自身で原因究明が出来ないこと、仮に原因が分かったとしても突貫作業でその処置をする場合に他人に頼むしかないこと、などの状況を考えると、やはり手の動くPMになってこそ、とは思うのです。

4-4.文系未経験から手の動くPMを目指すには

様々な業種の経験が可能で、下流工程から上流工程までのステップごとに徹底した経験を積めるという点において文系未経験の学生にとってはSES(システムエンジニアリングサービス)企業は大きなひとつの選択肢です。ただし、SES企業の中にはエンジニアを単なる商品(物)くらいんにしか考えておらず、現場に居れたら入れたっきり放置して粗利だけを稼ぐ企業も多いのが実態です。よく見極めることが重要です。


5.おわりに

以上のことから、エンジニアといえどもビジネスパーソンとして一流であるために「人間力」が重要であり、技術知識も偏りがなくフルスタックあれば尚よく、製造や設計の経験を十分にさせてくれたうえで最終的には優秀な「手の動くPM」に育成してくれる企業こそが、文系未経験の学生にとっては最高の環境と言えます。数は少ないですが、営業力が高くて商流が浅く(顧客に近く)、勤勉な社員が多く切磋琢磨な環境を実現している企業もありますので、しっかりと見極めていきましょう!

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