受託開発とは?受託開発の仕事の流れやメリット・デメリットを解説
IT業界について調べていると、受託開発という言葉を聞いたことがあると思います。ここでは受託開発の正しい意味やそのメリットとデメリット、仕事のプロセスについて詳しく解説していきたいと思います。
目次
1.受託開発とは
受託開発とは、クライアントから仕事を受注し、システムやソフトウェアを開発することです。具体的な受託加発の事例を、以下に記します。
- 男性向けのファッションをWeb上で販売するシステム開発
- モバイルゲームをWeb上で運営できるシステム開発
- 大型電機店の顔で認証する決済アプリケーションの開発
- 稼働しているコインランドリーの売上状況や稼働状況をデータ化し、一元管理するシステム
- 駐車場の空き情報や料金、予約状況をユーザーに告知するサービスの開発
システム開発は、自社で開発することもあります。これは、自社開発といいます。ただ自社で開発するための人員が足らなかったり、開発に必要な技術力がなかったりする場合、その開発を他社に依頼することになります。そういった開発を依頼され、仕事として受注して開発することが受託開発になるのです。
関連記事2.受託開発の仕事の流れとは
では受託開発の流れについて、具体的にみていきましょう。
2-1.仕事を受注する
受託開発のスタートは、他社から開発のお仕事を受注することから始まります。他社から「こんなシステムを御社で作ってもらえませんか」という依頼を受けるわけです。受注の代表的なパターンを以下に記します。
- 自社のホームページのお問い合わせフォームに直接新規依頼がくる
- 自社に直接、開発依頼の電話がかかってくる
- 以前お付き合いのあった会社の紹介で依頼がくる
- 自社の営業がアプローチし、新規で開発案件を受注してくる
2-2.クライアントと打ち合わせ
仕事の依頼を受けたら、どういったシステムを開発するかクライアントと打ち合わせをします。基本的にSEと実装を担当するプログラマーの二人で出向きます。クライアントが用意した資料や口頭でクライアントの要望を聞き取り、再度提案書をもって打ち合わせを行います。この段階で要件定義をした上で仕様書を起こし、システムのだいたいのイメージが決まります。また納期やスケジュールも打ち合わせの段階で決定します。
2-3.見積もり作成
打ち合わせでシステムのイメージが決定したら、まずはシステムの完成に必要な工数と人数を見積もります。IT業界ではシステム構築に必要な費用を見積もるために人月単価という考え方を使います。人月単価とは、エンジニア1人が1ヶ月働くのに必要な費用を1人月として表します。例えば1人が10ヶ月働けば10人月、10人が10ヶ月働けば100人月と表します。この1人月の費用は会社によって異なり、仕事の難易度によって決定されます。この人月単価をつかって見積もりを作成し、クライアントに提出します。
2-4.予算すり合わせ
見積書をクライアントに提出したら、予算のすり合わせが発生します。見積りがクライアントの予算内ならば開発が開始されますが、クライアントの予算をオーバーすれば優先順の低い機能を削ったりして金銭面での折り合いをつけます。
2-5.設計&実装
システムの開発が開始されるとSEが中心になってシステムの設計を行い、プログラマーが実装を行います。また規模が小さな会社では、設計から実装までをプログラマーが担当し、すべて1人でこなさなければいけない場合もあります。設計が終わって実装段階に入るとひたすらプログラムを書く期間になります。
関連記事 関連記事2-6.定期的打ち合わせ
開発が始まるとクライアントと定期的に打ち合わせを行います。システムを完成してから、作り直しを指示されたり返品されるのを防ぐために、プログラムを書きながらシステムとクライアントのイメージとにズレが生じないよう定期的にミーティングを行って、フィードバックをもらうのです。パソコンを持って行って実際にクライアントにシステムを操作してもらったり、簡単にインストールできるものならクライアントにシステムをインストールしてもらい、動作確認をしてもらう場合もあります。実際に出向いて打ち合わせをしたり、電話やメールで具体的な指示をもらうことで細かな修正を加えていくのです。
2-7.納品
クライアントとの打ち合わせで修正を繰り返しながらシステムを完成させたら、いよいよ納品です。システムの操作に必要なマニュアルや運用マニュアル等のドキュメントを準備し、システムをCDやDVDに焼いて納品します。ここまでが受託開発の一通りの開発プロセスになります。
3.受託開発の仕事内容のやりがい
3-1.オーダーメイド
受託開発はいわばオーダーメイドです。既存のソフトウェアではなく、顧客がわざわざシステムの開発を依頼してくるわけですから、顧客は既製品のシステムでは解決できない問題を抱えているのです。オーダーメイドのスーツを仕立てるように、顧客の要望を丁寧にヒアリングし、顧客に合わせたシステムを開発するという職人のような仕事にやりがいを感じます。
3-2.システムが役立つ実感
上記にもあるように、受託開発は困っている顧客から話を聞いて問題点を洗い出し、手助けするための提案をして実際に商品を顧客に届けることで喜んでもらえる、とてもやりがいのある仕事です。自分が開発したシステムが実際に稼働し、「便利になった」「効率が良くなった」という声をもらえるのは、うれしいものです。
3-3.技術レベルの向上
受託開発で開発するシステムは、金額にすると数百万円~数千万円といった比較的大規模なものが多いです。またオーダーメイドなので、システムの値段は高額になり、それだけしっかりとしたシステムにしなければいけません。正確で高性能なものを作るために高い技術力が要求されますし、知らない技術や知識については調べて解決する必要があります。またチームワークやお客さんとの連絡などで、コミュニケーションスキルが要求されることもあります。様々な壁を乗り越えて一つの商品を完成した時、自分の成長を実感できるでしょう。今まで出来なかったことができるようになったり、新しい知識が身についたという成長の喜びは大きなやりがいになります。
関連記事4.受託開発のメリットとデメリット
受託開発のメリットとデメリットを、以下に詳しくみていきたいと思います。
4-1.受託開発のメリット
・案件の量は比較的安定している。案件を選ばなければ仕事はある
→自社開発・自社サービスだと波や当たり外れがあるし、全く仕事が来ないケースもある
・お客様の希望・要件・予算に合ったプロダクト・システムを提案することの面白さ・やりがいがある。
→オーダーメイド・テーラーメードの世界。お客様の要望に応えるプロフェッショナルな仕事
・良いものを納めれば、お客様の重要なビジネスパートナーともなれる
→開発後の運用保守フェーズで確実な利益を出すこともでき、会社を安定させる基盤となる
→他の案件を担当する会社を探すときの有力な候補になれる
→有力な一次請け会社にも近づける可能性がある
・自社に持ち帰りができるなら、プロジェクト体制をある程度自由にできる
→経験の少ないスタッフをじっくり育て上げられる
4-2.受託開発のデメリット
・下請け的な位置づけで理不尽な要件や、短納期、売上額に見合わない開発案件を押し付けられることもある
・労働集約的な仕事の仕方になるプロジェクトが多い
→必要となる技術力は案件による。技術的に容易なものだけを使っていては、エンジニアとしての成長はない
→仕事のきつさや仕事にやりがいを感じられなくなったり、将来に悲観したりして人が離れやすい
・受託開発が会社の売り上げの中心になると、会社として本当にやりたいことがやりづらくなる
→案件の物量をこなすためにパートナーへの依存度も増し、原価率も悪くなり、利益を圧迫する
・多重請負の問題がある
→中~下層になると、利益が途端に少なくなる
→何を作っているのかわからない。上流からの指示に従うだけで、作る面白さ・やりがいは薄い
→下層の下請けの立場から抜け出すのは困難である
・大きなシステムの受託開発になると、上位層は人を回しているだけになる
・モノを作っているのか、人の管理をしているのかわからなくなる
→上位層はシステムのことを知っていないことも多い。営業やPJ管理だけ行って、実作業は下請けへ丸投げするなど。
5.まとめ
受託開発の仕事内容は、分かっていただけたでしょうか。受託開発というと「下請け」というイメージを持ってしまいがちです。しかし本当は、オーダーメイドのように顧客の要望に沿うシステムを一つ一つ仕上げていく職人のような仕事なのです。みなさんも、たくさんのやりがいを感じられる受託開発の仕事を目指してみてはいかがでしょうか。
- 受託開発とは、クライアントから仕事を受注し、システムやソフトウェアを開発すること
- 受託開発のメリットは、案件量が安定しており、顧客の要望や要件、予算に合った提案をする面白さがある
- 更にクオリティの高いものを納品すれば、重要なビジネスパートナーになれる
- 受託開発のデメリットは、理不尽な要件、短納期、売上額に見合わない案件を押し付けられる可能性がある
- 更に労働集約的なプロジェクトが多い
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