
データベース設計が重要な理由と実務で使える進め方
「データベース設計の重要性がいまいちピンときていない」
「実務ですぐ使えるようなデータベース設計のノウハウを知りたい」
そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
データベース設計は、システム開発の土台をつくる大切な工程です。
しかし、設計と聞くと「難しそう」「専門用語が多くてとっつきにくい」と感じる方も少なくありません。
この記事では、初心者の方でも理解しやすいように、データベース設計の基本的な考え方と、実務で役立つ進め方を丁寧に解説します。設計の目的や流れ、設計書の作り方までを一つずつ整理しながら、現場で使える知識として身につけられるよう構成しています。
読み終えた頃には、「なぜこの設計にしたのか」を自分の言葉で説明できるようになり、設計レビューや転職活動でも自信を持って臨めるはずです。
1.データベース設計とは何か
1ー1.データベース設計の役割と目的
データベース設計とは、システムで扱う情報を「わかりやすく」「使いやすく」整理する作業です。
たとえば、顧客情報や注文履歴など、業務で必要なデータをどのような形で保存するかを決めるのが設計の役割です。
目的は大きく3つあります。
- 必要な情報を漏れなく管理できるようにすること
- 情報のつながり(関係性)を明確にすること
- 将来的な変更や追加に対応しやすくすること
設計がしっかりしていれば、開発もスムーズになり、保守や運用も楽になります。
逆に、設計が曖昧だと、後から修正が必要になったり、データの不整合が起きたりする原因になります。
1ー2.設計が必要になる場面とは
データベース設計が必要になるのは、主に以下のような場面です。
- 新しいシステムを作るとき (例:顧客管理システム、予約システムなど)
- 既存のシステムを改修するとき (例:機能追加や業務変更に対応する場合)
- 複数のシステムを連携させるとき (例:販売管理と在庫管理をつなげる)
設計は「最初にやるべき準備作業」です。
ここを飛ばしてしまうと、後から「この情報が足りない」「このデータはどこにあるの?」といった問題が起きやすくなります。
1ー3. 設計がうまくいかないとどうなるか
設計がうまくいかないと、以下のようなトラブルが起こります。
- 必要な情報が保存できない
- 同じ情報が複数の場所に存在し、更新漏れが発生する
- データのつながりが不明確で、検索や集計が難しくなる
- 保守や改修のたびに大きな手間がかかる
こうした問題は、設計段階での「見落とし」や「曖昧な構造」が原因です。
だからこそ、設計は「わかりやすく」「シンプルに」「将来の変化にも対応できるように」考えることが大切です。
2.データベース設計の基本ステップ
2ー1.管理する情報を整理する
まず、最初にやるべきことは、「何の情報を管理するのか」をはっきりさせることです。
たとえば、顧客管理システムを作るなら、「顧客」「注文」「商品」などの情報が必要になります。
このときのポイントは以下の通りです。
- 業務に登場する「モノ」を洗い出す (例:社員、部署、契約など)
- それぞれに必要な項目を整理する (例:社員なら氏名、所属、入社日など)
- 情報の重複や漏れがないかを確認する
このステップを丁寧に行うことで、後の設計がスムーズになり、設計ミスも減らせます。
2ー2.情報のつながりを図にする(ER図)
次に、整理した情報同士の「つながり」を図にしていきます。
このとき使うのが「ER図(イーアール図)」です。ER図とは、情報の関係性を図で表したものです。
「1人の顧客が複数の注文をする」「1つの注文に複数の商品が含まれる」という関係性を、
「図2:顧客・注文・商品テーブルのER図」として表現しております。
ER図を描くことで…
- 業務の流れをチームで共有しやすくなる
- 設計の抜け漏れを防げる
- テーブル設計の土台ができる
手書きでも構いませんが、draw.ioやLucidchartなどのツールを使うと、見やすく再利用もしやすくなります。
2ー3.表(テーブル)に分けて整理する(正規化の考え方)
情報のつながりが見えたら、次はそれを「表(テーブル)」に分けて整理します。
このときの考え方が「正規化」です。
正規化とは、情報を重複なく、すっきり整理する方法です。
たとえば…
- 顧客情報と注文情報を別々の表にする
- 商品情報も別の表にして、注文と商品をつなぐ表を作る
2ー4.実務ではどう使い分ける?(正規化と非正規化)
実務では、正規化だけでなく「非正規化」も使う場面があります。
非正規化とは、あえて情報をまとめたり重複させたりして、使いやすさや速さを優先する方法です。
たとえば…
- よく使う情報を1つの表にまとめておく
- 検索や集計を速くするために、必要な項目を重複させる
ただし、情報の整合性が崩れやすくなるので、更新ルールを決めておくことが重要です。
3.設計書の作り方と使い方
3ー1.設計書にはどんな種類があるか
設計書にはいくつかの種類があり、それぞれ目的が異なります。
代表的なものは以下の3つです。
- 基本設計書
システム全体の流れや構成をまとめたもの。画面のつながりや業務の概要などを記載します。 - 詳細設計書
実際の開発に必要な情報を記載したもの。テーブルの項目や処理の流れなど、より具体的な内容です。 - データベース設計書(テーブル設計書)
データの構造を整理したもの。表の名前、項目、つながりなどを記載します。
これらは使う人(開発者、レビュー担当、運用担当)によって必要な情報が異なるため、目的に応じて使い分けることが大切です。
3ー2.設計書の中身はどこまで書く?
設計書は「細かく書けばいい」というものではありません。
むしろ、読み手が迷わず使えるように、必要な情報を適切な深さで書くことが重要です。
ポイントは以下の通りです。
- 誰が読むかを意識する :開発者向けなら詳細に、レビュー用なら概要中心に。
- 変更が多い部分は簡潔に :頻繁に変わる項目は、更新しやすいように簡潔に。
- 安定している部分は丁寧に:テーブル定義や命名ルールなどは、しっかり書いておく。
「どこまで書けばいいか迷う」という声は多いですが、まずは「相手が迷わず使えるか」を基準にすると、設計書の質がぐっと上がります。
3ー3.チームで共有しやすい設計書のコツ
設計書は「書いて終わり」ではなく、「チームで使えること」が大切です。
そのためには、以下のような工夫が有効です。
- 構成を整える :目的、対象範囲、設計方針、テーブル定義、図、補足…といった順番で整理する。
- 図を活用する :ER図や画面の流れなど、視覚的に伝えることで理解が早くなる。
- 命名ルールを統一する:表や項目の名前にルールがあると、チーム内での混乱が減る。
- 更新履歴を残す :誰がいつ何を変更したかが分かると、保守がしやすくなる。
設計書は「読む・使う・更新する」すべての場面で役立つ資料です。
だからこそ、読み手の立場に立って、わかりやすく・使いやすく仕上げることが、設計者としての信頼につながります。
4.設計を進めるときの流れ
4ー1.要件を聞いて、必要な情報を洗い出す
設計は「何を管理するか」を明確にするところから始まります。
まずは、業務の流れや画面の構成をもとに、必要な情報を洗い出しましょう。
たとえば、注文管理システムなら
- 管理すべき「モノ」 :顧客、商品、注文
- 各モノに必要な情報 :顧客名、住所、商品名、価格、注文日など
- 業務ルール :1人の顧客が複数の注文をする、1つの注文に複数の商品が含まれる
この段階で情報の抜け漏れがあると、後の設計や実装で手戻りが発生します。
業務フローや画面設計と連携しながら、情報の流れを整理することが重要です。
4ー2.表の構成を考える(テーブル設計)
必要な情報が整理できたら、それを「表(テーブル)」に分けて構造を考えます。
ここでは、情報のまとまりごとに表を作り、項目(カラム)やつながり(リレーション)を設計します。
設計時のポイント
- 同じ情報を繰り返さないように分ける(例:顧客情報と注文情報は別の表)
- 業務ルールに沿って関係性を設計する(例:1対多、多対多)
- 将来的な変更や拡張に対応できるように柔軟な構造にする
この段階で「なぜこの構造にしたのか」を説明できるようにしておくと、レビューでも自信を持って臨めます。
4ー3.設計書と図をまとめる
テーブル構造が固まったら、設計書と図を作成します。
設計書には、表の定義や関係性、命名ルールなどを記載し、図(ER図)で全体の構造を視覚的に表現します。
設計書に含めるべき情報
- 表の名前、項目、型、制約(主キー、外部キーなど)
- 表同士のつながり(リレーション)
- 検索性能を意識したインデックスの設計
- 命名ルールや設計方針(正規化・非正規化の判断基準など)
図は手書きでも構いませんが、draw.ioやLucidchartなどのツールを使うと、共有や再利用がしやすくなります
4ー4.設計を見直すときのチェックポイント
設計が一通り終わったら、レビュー観点で見直しを行います。
ここでは、設計の妥当性や保守性、パフォーマンスなどをチェックします。
主なチェックポイント
- 表の構成が業務要件に合っているか
- 情報の重複や漏れがないか
- 項目の名前や型が適切か
- 検索や更新の効率が考慮されているか
- 将来的な変更に耐えられる構造か
レビューで指摘されたときに、設計の意図を説明できるようにしておくことで、設計者としての信頼が高まります。
5.設計スキルを仕事に活かすには
5ー1.面接で設計経験をどう伝えるか
転職活動では「設計経験あり」と履歴書に書くだけでは不十分です。
面接では必ず「どんな設計をしたのか」「なぜその構造にしたのか」といった深掘りが行われます。
このとき重要なのは、「設計の根拠」を言葉で説明できるかどうかです。
たとえば…
- なぜその表の構成にしたのか
- なぜ正規化や非正規化を選んだのか
- なぜその図(ER図)で業務を表現したのか
こうした判断の背景を論理的に説明できると、「上流工程に関われる人材」として高く評価されます。
また、設計レビューでの指摘をどう改善したか、チーム内でどう共有したかなど、実務での工夫も伝えると説得力が増します。
5ー2.ポートフォリオに設計成果を載せる方法
設計スキルをアピールするには、ポートフォリオに「成果物」を載せるのが効果的です。
ただし、単に設計書を並べるだけでは伝わりません。
以下のような工夫が必要です。
- 背景と目的を明記する :「どんな業務に対して、どんな課題を解決するための設計か」
- 設計の工夫を説明する :「どこに悩み、どう改善したか」「どんな判断をしたか」
- 図や構成を見やすくする:ER図や設計書は、誰が見ても理解できるように整理する
これにより、単なる「設計経験」ではなく、「設計力を活かして成果を出した人材」として評価されやすくなります。
5ー3.設計力を伸ばしてキャリアアップするには
設計力は、キャリアの幅を広げる武器になります。
現場での信頼を得るだけでなく、将来的にはアーキテクト職や技術リーダーへの道にもつながります。
設計力を伸ばすためのポイント
- 設計レビューを学びの場にする:指摘を受けたら「なぜそう言われたか」を深掘りする
- 他人の設計を読む :社内の設計書やオープンな事例を見て、構成や判断を学ぶ
- 設計の目的を常に意識する :「誰が使うか」「どう保守するか」「将来どう変わるか」を考える
設計は「正解が一つではない」分野です。だからこそ、考え方や判断力を磨くことで、設計者としての価値が高まります。
6.よくある質問(FAQ)
6ー1.「設計経験あり」と言えるのはどこから?
「設計経験あり」と言えるかどうかは、「自分の判断で設計を進めた経験があるか」が一つの目安になります。
たとえば、以下のような経験があれば、十分に「設計経験あり」と言って問題ありません。
- 表(テーブル)の構成を自分で考えたことがある
- 業務の流れをもとに、情報のつながりを整理したことがある
- 設計書や図を作成し、レビューを受けたことがある
- 設計の意図を説明したり、改善した経験がある
逆に、誰かが作った設計をそのまま実装しただけの場合は、「設計経験あり」と言うには少し弱いかもしれません。
ただし、設計に関わった経験があるなら、「どの部分を担当したか」を具体的に伝えることで、十分にアピールできます。
6ー2.ER図は手書きでもいい?ツールは?
結論から言うと、手書きでもOKです。
大切なのは「情報のつながりが正しく伝わること」です。
ただし、以下のようなツールを使うと、見やすく、修正や共有もしやすくなります。
- draw.io(diagrams.net):無料で使える定番ツール。ブラウザ上で簡単にER図が描けます。
- Lucidchart :チームでの共有に便利。テンプレートも豊富です。
- ERMaster :Eclipseのプラグイン。Java開発者にはなじみやすいです。
最初は手書きで考えを整理し、最終的にツールで清書するのがオススメです。
レビューや転職時に提出する場合は、ツールで作成した方が印象が良くなります。
6ー3.正規化はどこまでやればいい?
正規化は「やればやるほど良い」というものではありません。
目的は「情報の重複をなくし、整合性を保つこと」です。
実務では、以下のような考え方で判断すると良いでしょう。
- まずは基本的な整理をする(第1〜第2段階) :同じ情報を何度も書かないようにする
- 業務の流れに合っているかを確認する :分けすぎて逆に使いにくくなっていないか
- パフォーマンスや保守性も考慮する :検索が遅くなったり、更新が面倒になっていないか
つまり、「正規化は目的ではなく手段」です。
「なぜこの形にしたのか」を説明できれば、それが“ちょうどいい正規化”です。
7.まとめ
データベース設計は、単なる技術作業ではなく、プロジェクトの品質やチームの信頼、そしてキャリアの成長に直結する重要なスキルです。
この記事では、設計の基本から実務での進め方、設計書の作り方、レビューの観点、そしてキャリアへの活かし方までを一つずつ整理してきました。
特に大切なのは、「なぜこの設計にしたのか」を自分の言葉で説明できる力です。
この力があれば、設計レビューでも面接でも堂々と話すことができ、周囲からの信頼を得ることができます。
設計力は一朝一夕で身につくものではありませんが、日々の業務や学習の中で少しずつ磨いていくことができます。
まずは、目の前の設計に対して「なぜそうするのか?」を考えることから始めてみてください。
設計に自信が持てるようになると、仕事の幅が広がり、キャリアの選択肢も増えていきます。
設計力は、あなたの価値を高める“武器”になります。











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