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システムテストを30秒で理解する!テスト工程の全体像と他のテストとの違いについて

ENGINEER.CLUB編集部

ENGINEER.CLUB編集部

論:システムテストとは、設計どおりにシステム全体が連携して動くかを確認する工程です。

「次のフェーズはシステムテストを進めます」

現場の打ち合わせで、当たり前のように飛び交う「システムテスト」という言葉。
(単体テストや結合テストとは何が違うんだ…?)

今さら誰にも聞けず、話についていけないまま焦りを感じていませんか?
安心してください。
IT業界に入ったばかりの頃は、誰もが通る道です。そして、その疑問はたった30秒で解消できます。

この記事では、かつての私自身もそうであったように、現場で戸惑うあなたが自信を持って次の打ち合わせに臨めるよう、「システムテストとは何か」を徹底的にわかりやすく解説します。
テスト工程の全体像から他のテストとの明確な違いまで、この記事を読み終える頃には、完全に理解できているはずです。


1.システムテストとは

1-1. システムテストの定義

システムテストとは、開発したシステム全体が、設計書や要件定義書に記載された通りに正しく動作するかを検証するテスト工程です。
英語では「System Test(ST)」と呼ばれます。

個々の部品(単体テスト)や、部品同士を繋いだ時(結合テスト)の確認が終わった後、いよいよ「一つのシステムとして」正しく動作するかを総合的にチェックする段階です。

例えば、ECサイト(ネット通販サイト)で例えるなら、「ログイン機能」や「カート機能」がそれぞれ単体で動くだけでなく、
「ユーザーがログインし、商品をカートに入れ、決済を完了し、注文履歴に正しく反映される」という一連の流れ(=システム全体)が問題なく動くかを確認するのがシステムテストです。

1-2. システムテストの目的

システムテストの目的は、大きく分けて3つあります。
 1. リリース前の品質保証
  システムテストの最大の目的は、システムが本番環境(お客様が実際に使う環境)で問題なく動作することを保証し、品質を担保することです。

 2. 利用者視点での動作確認
  実際のユーザーがシステムを使用する際の業務フローや操作手順に沿って、システムが期待通りに動作するかを検証します。技術的な正しさだけでなく、「使える」システムであることを確認します。

 3. ステークホルダーへの品質報告
  テスト結果を定量的・定性的にまとめることで、プロジェクトマネージャーや顧客に対して、システムの品質状況を明確に報告します。これにより、リリース判断の根拠となる重要な情報を提供します。

1-3.開発工程全体におけるシステムテストの位置づけ

システム開発は、一般的に「V字モデル」と呼ばれる工程で進められます。
これは、開発の各段階とテストの各段階が対応していることを示す考え方です。

テスト

開発は「要件定義」から「製造」へと進みますが、テストは逆に「単体テスト」から「結合テスト」、そして「システムテスト」へと、小さな単位から大きな単位へと確認範囲を広げていきます。
システムテストは、開発工程の「基本設計」で決められた内容(システム全体としての動き)が正しく実現できているかを確認する位置づけとなります。

1-4. 他のテスト(単体・結合・受け入れ)との違い

システムテストと他のテストの違いを明確に理解することで、各テスト工程の役割がはっきりします。以下の表で比較してみましょう。

テスト名英語略称目的ECサイトの例
単体テストUT(Unit Test)プログラム単位の正確性確認「商品をカートに入れる」ボタンを押したら、
カート内の商品数が1増えるか
結合テストIT(Integration Test)モジュール間の連携確認「ログイン機能」と「カート機能」を繋げ、
ログインユーザーのカートに商品が入るか
システムテストST(System Test)システム全体の機能・品質確認「ログイン→検索→カート→決済→注文履歴」という
一連の操作が全て正しく完了するか
受け入れテストUAT(UserAcceptance Test)ユーザー要求を満たすか確認お客様が実際に操作し、「これなら業務で使える」と承認できるか

このように、テストは「小さな部品」から「システム全体」へと、徐々に確認範囲を広げていくのが特徴です。
システムテストは、開発者側の最終確認工程であり、「システム全体が仕様書通りに動くこと」を保証する重要な役割を担っています。 


2.システムテストの具体的な進め方

システムテストが「何を」するのか理解できたところで、次に「どうやって」進めるのか、具体的な作業フローを見ていきましょう。
現場ではこの流れに沿ってタスクが割り振られるため、全体像を掴んでおくと、自分の作業の目的が明確になります。

2-1. プロジェクト全体を導くテスト計画の立案

システムテストは、いきなり操作を始めるわけではありません。
まず「何を」「いつまでに」「どこまでやれば完了か」という全体の設計図(=テスト計画書)を作成します。

これは単なるスケジュール表ではなく、プロジェクト全体を成功に導くための道標です。

  • テストの目的と範囲(スコープ):何をテストし、何をテストしないのかを明確にします。
  • スケジュールと体制       :誰がいつ、どの機能のテストを担当するのかを定義します。
  • テスト環境           :どのような環境(サーバー、OS、データ)でテストするのかを決めます。
  • 完了基準            :どのような状態になったら「テスト完了」とするか(例:不具合が0件、テストケース消化率100%など)を定義します

この計画段階で関係者(開発チーム、プロジェクトマネージャー、場合によってはお客様)としっかり合意しておくことが、後の「言った言わない」のトラブルを防ぎます。

2-2.網羅性と効率性を両立させるテストシナリオの設計

計画ができたら、次は具体的なテスト手順(=テストシナリオ、テストケース)を作成します。
ここで重要なのが「網羅性」「効率性」の両立です。

  • 網羅性:要件定義書や基本設計書 に書かれている機能や条件が、すべて検証されるようにシナリオを作成すること。「この機能、テストし忘れてた」をなくします。
  • 効率性:とはいえ、時間は有限です。システムの全パターンを試すのは不可能なため、「ユーザーがよく使うであろう操作」や「不具合が出ると影響が大きい(例:決済機能など)操作」を優先的にテストできるように設計します。

たとえば、ログイン機能なら以下のように整理できます。
 正常系:正しいID・パスワードでログインできる
 異常系:存在しないIDでエラー表示が出る
 境界値:パスワード最大桁数の入力でも動作する

2-3.本番同等の品質を担保する、再現性の高いテスト環境構築

テストシナリオができたら、テストを実施する「場所」を準備します。
「テストでは動いたのに、本番リリースしたら動かない」という最悪の事態を防ぐため、テスト環境は可能な限り本番環境と同一にします。

  • サーバーのスペック、OS、ミドルウェアのバージョン
  • ネットワーク構成(ファイアウォール設定など)
  • テストデータ(本番に近い、大量かつ多様なデータ)

また、「再現性」も重要です。不具合が発見された際に、開発者が「同じ手順で、同じ現象を発生させられる」環境でなければ、原因究明と修正が困難になるためです。

実務でよくある課題と対策
 課題:本番環境と完全に同じ環境を用意するのは、コスト的に難しい
 対策:重要度の高い機能に関わる部分は本番と同等にする性能テストなど、
    環境依存が大きいテストは本番環境に近い規模で実施環境の違いによるリスクを文書化し、関係者と共有

2-4.効率と品質を両立させる計画的なテストの実施

環境が整い、いよいよテストの実施です。ここではテストシナリオに基づき、一つずつ操作と結果の確認を行います。
ここでの「効率」と「品質」の両立とは、「計画的な実施」と「正確な記録」を意味します。

  • 計画的な実施(効率):2.2で設計した優先順位に基づき、重要な機能からテストを実施します。これにより、もし重大な不具合があっても早期に発見できます。
  • 正確な記録 (品質) :テストが「OK」だったのか「NG(不具合)」だったのかを、証跡(エビデンス)と共に正確に記録します。OKなら期待通りの画面キャプチャ、NGならエラー画面のキャプチャを残すことで、結果の客観性を担保します

2-5.リスク分析と品質判定を明確化したテスト結果の評価

テストをすべて実施したら、結果を集計・分析し、「このシステムはリリースして良い品質か」を客観的に評価します。

  • テスト結果の集計:テストシナリオの消化率、発見した不具合の件数、修正済みの件数などをグラフ化し、進捗と品質を可視化します。
  • リスク分析:残っている不具合(未修正の不具合)が、リリース後にどれだけ深刻な影響(リスク)を与えるかを分析します。「動作は遅いが使える」不具合と「決済ができない」不具合では、リスクが全く異なります。
  • 品質判定:1で定めた「完了基準」と、上記のリスク分析結果を照らし合わせ、「リリース可否」をプロジェクトマネージャーやお客様に報告し、判断を仰ぎます 。

判定基準の例

  • 致命的(Severity 1)の不具合:0件
  • 重要(Severity 2)の不具合 :3件以下、かつ回避策が明確
  • 軽微(Severity 3)の不具合 :10件以下
  • テストケース実施率    :95%以上

この基準を満たしていれば「Go(リリース可)」、満たしていなければ「No-Go(リリース不可)」と判定します。

2-6.優先度とインパクトを可視化した戦略的な不具合管理の方法

テスト中に不具合を発見したら、BTS(バグ管理システム)などのツールに記録します。この「不具合管理」こそ、テストの品質を左右する非常に戦略的な作業です。
なぜなら、発見された不具合すべてを、リソース(人・時間)が限られた中で修正することは不可能だからです。そこで、不具合を以下の2軸で評価し、対応の順番を決めます。

  1. 優先度(Priority):「いつまでに」直すべきか。スケジュール上の緊急度。
    (例:次のテストに影響するため、今日中に直してほしい)
  2. 重要度(Severity / Impact):「どれだけヤバい」か。システムへの影響度。
    (例:システムが停止する、データが消える=致命的)

「重要度は低い(見た目のズレなど)が、お客様の目に触れやすいため優先度は高い」といったケースもあります。この2軸で不具合を可視化し、開発チームと「どれから直すか」を合意しながら進めることが、戦略的な不具合管理です。


3. システムテストを成功させるためのポイント

ここまではシステムテストの「やり方」を解説しました。最後に、あなたが現場で「お、この新人わかってるな!」と一目置かれるために、私自身の経験と、多くのプロジェクトで共通して見られる成功要因を4つに絞って解説します。

3-1.リリース基準を事前に合意形成する

これは2.1の計画立案 とも重複しますが、非常に重要なので独立させました。システムテストの「ゴール」が曖昧なままスタートすると、「あれも確認してほしい」「これも不安だ」と後からテスト項目が追加され、スケジュールが破綻します。
「どのような状態になったら、自信を持ってリリースできるのか」という完了の条件(=リリース基準)を、必ずテスト開始前に、特にお客様(発注者)と明確に合意形成してください。

例)○ 致命的・重大な不具合が0件であること。
  ○ テストシナリオの消化率が100%であること。
  ○ 特定の性能要件(例:応答時間が3秒以内)を満たしていること。

3-2.「仕様書通り」からユーザーになりきる探索的テストの活用

テストシナリオは「仕様書通りに動くか」を確認するものです。しかし、実際のユーザーは仕様書通りに操作するとは限りません。

そこで有効なのが**「探索的テスト」**です。

これは、シナリオに縛られず、テスト担当者がユーザーになりきって「私ならこんな操作をするかも」「このボタンを連打したらどうなる?」と、自由にシステムを触りながら不具合を探す手法です。
「仕様書通りだけど、直感的に使いにくい」といった問題や、シナリオベースでは見つけられなかった思わぬ不具合を発見できることがあり、品質をもう一段階高めることができます。

3-3.バッファとリスクを織り込んだ現実的なスケジュール管理

「テストは計画通りに進まない」ことを前提としてください。
なぜなら、テストとは「不具合を見つける」作業であり、不具合が見つかれば必ず「修正」と「再テスト」という予定外の作業が発生するからです。
優秀なテストリーダーは、この「不確実性」をスケジュールに織り込みます。

  • **バッファ(予備日)**を設ける。
  • 「この機能は複雑だから不具合が多そうだ」とリスクを予測し、あらかじめテスト期間を厚めに確保する。

スケジュールが遅延すること自体が悪なのではなく、遅延を予測せず、発覚が遅れることが問題なのです。

3-4.多層的な品質ゲートとレビュープロセスで品質を確保する

システムの品質は、システムテスト「だけ」で担保するものではありません。開発工程全体で品質を高めていく意識が重要です。

  • 多層的な品質ゲート:単体テスト、結合テスト の各段階で「この品質でないと次の工程(システムテスト)には進ませない」という基準(品質ゲート)を設けます。これにより、低品質なものが後工程に流れてくるのを防ぎます。
  • レビュープロセス :そもそも「テストシナリオ」 自体に抜け漏れがあっては元も子もありません。作成したテスト計画書やテストシナリオは、必ずチームメンバーや有識者にレビュー(査読)してもらい、客観的な目でチェックしましょう。

不具合は、開発の後工程(システムテスト)で見つかるほど修正コストが膨大になります。できるだけ前の工程で発見し、潰しておくことがプロジェクト成功の鍵です。


まとめ

今回は、現場で戸惑いがちな「システムテスト」について、その定義から具体的な進め方、成功のポイントまでを網羅的に解説しました。
最後に、重要なポイントを振り返りましょう。

  • システムテストとは、システム全体が要件定義書や基本設計書通りに動くかを確認する、開発者側の最終テスト工程である 。
  • 他のテストとの違いは「確認範囲」であり、単体(部品)→結合(部品同士)→システム(全体)→受け入れ(お客様確認)の順に進む 。
  • 具体的な進め方は、「計画→設計→環境構築→実施→評価→不具合管理」 という戦略的なフローに沿って行われる。
  • 成功のポイントは、「ゴールの合意」「ユーザー視点」「リスク予測」「前倒しの品質確保」 にあります

この記事を読み終えたあなたは、もう打ち合わせで「システムテスト」という言葉に戸惑う必要はありません。
自信を持って「システムテストとは、システム全体の一連の流れを、ユーザー視点と要件に基づいて検証する工程ですよね」と答えられるはずです 。

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