転職活動においてエンジニアがポートフォリオを用意すべき理由
「転職活動にポートフォリオがあったほうがいいよ」と言われたら、具体的に何をすればいいのか想像がつきますか?履歴書と職務経歴書があればいいんじゃないの?それを提出して連絡がきたら面談でしょ?と思われる方が多いと思います。
ポートフォリオについては業界によって多少意味や内容が異なりますが、この記事では、エンジニアが自分のこれまでの実績や習得した技術の状況をアピールするためのサイトのことを指します。
あまりピンとこない方は自分が持っている資産の割合で考えてみるといいかもしれません。「資産があります」といっても、現金、株、家(土地)を、それぞれ同じ割合で持っている人、現金のみの人、逆に現金はほぼゼロで株と土地のみ、など、人によってさまざまです。
同様に「IT系で経験あります」といっても、何をどれくらい経験があるのか履歴書と職務経歴書からは読み取れない部分を、ポートフォリオが明らかにしてくれるのです。言葉や書面では説明が難しくても「ここ見てください!」で済むのであれば、お互い時間の節約にもなりますし、公開しておけば誰かの目に留まってオファーがくるかもしれません。
そんな可能性があるポートフォリオについて解説していきたいと思います。
目次
1.ポートフォリオが必要な理由
ポートフォリオには履歴書のように決まった書式がありません。
つまり、あなたのこれまでの経験や、目的、意図、当時の状況なども自由にアピールできるということです。
特に、今後はWeb面接が増えることが予想されますし、Web上に作成されたものであれば、動画でアプリの動作を再生するなど今まではできなかった方法でアピールすることも可能でしょうから、「言葉でうまく説明できない」という方には大きな武器となります。
また、日ごろから公開しておくことで採用担当者の目にとまり、先方からスカウトがかかることもあります。
あなたが寝ている間にも、あなたの実力をアピールしてくれますし、作成の過程で自分の技術や経験の棚卸にもなります。転職するから、という理由ではなくても、自分が参加したプロジェクトが一区切りついた時に更新しておくと、あとで見返したときに過去の自分に励まされたり、昔を思い出すことで次のプロジェクトへのヒントが見つかるかもしれません。
1-1.ポートフォリオとは
もともと「ポートフォリオ」は書類入れ、または、複数の書類をまとめて持ち運べて簡単に出し入れできる入れ物を指します。
その「ポートフォリオに入れていた書類」が、デザイン系の人であれば自分の描いたイラストや撮影した写真であったり、金融関係であれば自分が持っている資産状況を表す書類であったことから、ポートフォリオは入れ物ではなく、自分をアピールするための書類、自分を説明するための書類を指すようになりました。従来の紙媒体のポートフォリオに加え、現在はWebで公開するポートフォリオが増えています。
◆参考
10分でわかるカタカナ語 -第39回 ポートフォリオ(三省堂編修所)
1-2.ポートフォリオに盛り込むべき内容
ポートフォリオはあなたの自己紹介でもあるので、これらの情報をまず箇条書きで良いので書き出してみましょう。既に作成した履歴書、職務経歴書があれば、そこに下記の内容が含まれているかをチェックしてください。
- 氏名
- 学歴、職歴(在籍した会社、業種、職種)
- 経験がある、あるいは得意な職務、OS、プログラム言語
- 参画したプロジェクトやその内容、およびプロジェクト内における役割
※ある程度の規模のプロジェクトであれば他にも参画していた方がいるはずですので、自分の担当していた部分を明確に記載しておく必要があります。 - 自分が作成したアプリやサービス
- 連絡先
Web上に実名や学歴、職歴を公表するのはちょっと抵抗がある、という場合は、閲覧のためのパスワードを設定したり、個人の特定につながる部分については紙媒体で提出するなどの方法があります。
2.ビジュアル重視か内容重視か。それが問題だ。
「ビジュアル」と言ってしまうとデザインや配色に重点を置くようなイメージがありますが、色や素材(写真やイラスト)にこだわるよりは、UI(ユーザインタフェース)や、UX(ユーザエクスペリエンス)について気遣いが見られるポートフォリオを作成しましょう。
システム設計、開発において、UI、UXについての配慮は重要なポイントです。
「操作しやすいな」「項目がわかりやすくまとめられているな」「自分(採用担当者)の知りたいことがわかった」などのポートフォリオに対する好印象は、そのままあなたに対する印象へとつながります。
見た目としては、あれもこれもと追加して雑多なサイトを作ってしまうよりは、ちょっとあっさり気味がちょうど良いようです。ただし、テンプレート素材そのまま、というのは避けましょう。(多少色や素材を変更するだけでも違ったものに見えます)
そして、どんなに内容が良くても誤字脱字があったら台無しです。自分でも見直したうえで、他の人にもチェックしてもらいましょう。
3.あなたのスキルの「みえる化」のためのポートフォリオ
ポートフォリオを作成するためには、まず、あなたのスキルや経験の棚卸が必要です。そのなかで履歴書、職務経歴書といった書類で、文字だけでは表現しづらいもの、面接ではうまく説明できない部分を「詳しくはポートフォリオで!」と、託すわけです。
たとえば、自分が持っているスキルの中で最も得意な分野はこれで、こんなこともできます!の、「こんなこともできます」について強調したり、今の状態と比較して将来はこんなスキルを身に着けたい!など、文章で書くより図表化してみたり、イラスト1枚添えてみるだけでも印象が違います。図表化できる内容であれば、そちらの方が相手も把握しやすくなります。
なんだか面倒くさい・・と思ったかもしれませんが、ここで思い出してください。「ポートフォリオに決まった形式はない」ということを。自分のアピールしたい項目で構成すればいいのです。そう言われてもいい項目思いつかないし、という方は次のサイトをご一読ください。
◆RPG風レーダーチャートで見る、エンジニアの仕事18種と求められるスキル
各レベルで7項目についてのスキルレベルを表しています。取り入れるのであれば、ここで得意な1項目(たとえばアプリ開発)を抜き出して、各言語のレベルを示したレーダーチャートを追加したり、将来的にはこうなりたい、というチャートを追加してもよいと思います。
4.ポートフォリオ作成時の注意点5つ
自分の好きなように作成できるポートフォリオですが、先にあげた誤字脱字に加えて、不快な内容が含まれていないか、あなたの最近の状況が書かれているか、という基本事項に加えて注意すべき点があります。
4-1.公開してよいものか確認(守秘義務)
今までのプロジェクトのなかで是非ともアピールしたい!と思う作品や実績がある方ほど要注意です。
企業の依頼で作成したものは、著作権はその企業にあり、作成したあなたには守秘義務があります。仕様やコードは勝手に公開できません。掲載するのであれば、引用元を明らかにする、機密事項に触れない部分の紹介にとどめる、といった注意が必要です。
紙媒体で作成したポートフォリオであれば、面談終了後に回収するなどすれば管理が可能ですが、Web上に公開してしまうと「誰にでも見てもらえる」という利点が「誰が見るかわからない」というデメリットになってしまう場合がありますので、安易に掲載して悪用されてしまうことのないように注意してください。
4-2.相手の知りたいことが伝わる内容か
採用担当者があなたのポートフォリオを見たとき、何を知りたいと思うでしょうか。
「この人、戦力になるかなぁ」「応募理由は何だろう」「何か自分で勉強しているのかな(特に未経験者)」「コミュニケーションとれるかな」「どんな性格かな」など、いろいろありますが、あなたのスキルと経験は必ず知りたい事項です。1か月だけかかわったプロジェクトでも、それは応募先にとっての隠れたニーズにつながる場合もあります。「ショボい」「たいしたことない」「関係ない」と、自分で取捨選択せずに、とにかく書いてみましょう。IT未経験者の場合は、今まで経験されてきたことについて、その業界を知らない人でもわかるように書いてください。
応募理由にかかわることも書いておけば、面接時にも話が楽になります。
4-3.簡潔にまとめられているか
スキルの分布状況や具体的なアプリ、サイトなど、提示できるものは掲載した方がよいのですが、数が多ければ良いというわけではありません。それを見る方が疲れるからです。渾身の作Best3!くらいに絞って掲載し、そのほかは階層をわけて掲載する、など、見る方への配慮が必要です。
説明は時系列に沿って箇条書き、くらいで一度書いたあとに、少し補足を加える程度にまとめましょう。
たとえば、自分が作成したアプリの解説文ひとつにしても「結局何なの?」と思われるくらいなら、機能概要、作成期間、使用言語、特徴、と箇条書きにしてしまった方が相手も内容を把握しやすいですね。
どうしても長くなりそうなことは、別ページにまとめるなどしてみましょう。
4-4.手間のかけすぎに注意
デザインや構成など、凝り始めるとキリがありません。慣れた方ほど、本来の目的を忘れサイトの見栄えに時間をかけてしまいがちですが、ポートフォリオの主役はあなたの経歴とスキルです。また、いままでサイト作成を行ったことが無い方は、練習で一度作ってみることをお勧めします。無料で作成できるサイトは沢山ありますので、自分で作るとどの程度の手間がかかるのか試してみましょう。
一度作成してみて自分には無理そうだと思ったら、作成を手伝ってくれそうな人に相談するか、いさぎよく諦めて紙媒体での作成に切り替えるのも一つの手です。
良いデザインとは何か気になる方は参考にこちらをどうぞ。
◆やってはいけないデザイン
4-5.SNSと連携するなら内容に注意
「実はいままで技術系ブログを書いていました」「ちょっとしたコネタアプリを作って個人サイトで公開していました」というような方は、ポートフォリオにそのサイトをリンクさせたくなるかもしれません。5年、10年と続けていらっしゃる方のサイトもお見かけいたします。しかし、そこは本当に採用担当者に見られても大丈夫なサイトでしょうか。
それまでは本名を公表することなく記事を書き、アプリを作成できていたことに加え、ちょっとしたコメントも気楽に書けていたと思いますが、リンクさせるということは本名や住所、経歴も知らせたうえで見られるわけですから、過去に書いた内容も十分精査してリンクする、しないを判断してください。
長く続けていても更新が少なすぎるサイトなども「飽きっぽいのかな」と思われる原因となります。
5.ポートフォリオをどこで作成するか
無料で作成できるサイトもありますが、自作のアプリやWebデザインなどを公開したい方は有料ですがレンタルサーバ契約をお勧めします。(月1000円前後から契約可能です)
とにかく一度試しに作成してから本番に臨みましょう。
■無料で作成できるサイト
・Github
作成方法
http://atmarksharp.v01.jp/posts/github-static-site-generators.html
・Wix(無料は広告付き・有料は広告なし)
・RESUME
■有料で作成(月額で費用が発生)
契約後にWordPressが利用できます。無料お試し期間や各社不定期にキャンペーンを行っていますので、初期費用が安く済んだりドメイン取得費用が割引になったりします。
・エックスサーバー
・さくらのレンタルサーバ
・ロリポップ
6.参考にしたいポートフォリオ
ネタは揃った、注意点も理解した、作成できるサイトも見た!でもどうやって作ったらいいの?と、ここで手が止まる方もいらっしゃると思います。超初心者向けではありますが、サンプルをご用意しました。Wordpressとwixで作成したサンプルです。無料のテンプレートを少々変更して作成しています。
こちらをちらっと見ていただいたうえで、他の人がどんなポートフォリオを作成しているのか、以下にご紹介するポートフォリオも参考にしていただければと思います。初めて作成する方にとってはハードルが高いものもありますが「こういう見せ方もあるのだな」「こう書けばいいのか」など、参考にしていただければと思います。
どのポートフォリオもご自分のスキルをレーダーチャート、棒グラフや一覧表を使って視覚化されているので、「こういう経験が長いのか」「こういう分野が得意なんだな」ということが一目でわかります。
また、ご自分の趣味もさりげなくアピールされたり、SNSへのリンクも設定されているので、日ごろの生活や人柄も伝わります。
・HODA Web Engineering Laboratory
https://hodalab.com/portfolio/
・Naoto Suzuki’s portfolio
https://nsuzuki7713.github.io/portfolio/
・ITの万屋 PCS – Piyopiyo Create Service
https://wa3.i-3-i.info/profile.html
「こういう仕事は受けない」という点をハッキリ書いておられますが、あんまりきつく感じないところが個人的に好きです。
・スキルマーケット coconala
メニューの「出品者を探す」からサービスを選択して出品者を見ると、あなたが持っているスキルをウリにしている人がいますし、アピール文も参考になります。ポートフォリオ作成に行き詰まったらちょっとのぞいてみては。
7.さいごに
ポートフォリオと言われると、美術系の方か、資産状況を示す円グラフを真っ先に思い起こす派ですが、いまや学生さんも就活でポートフォリオをWebで作成すると知って「時代ですなぁ」と遠い目をしながら書きました。確かにWebで作成しておけば追加・修正もラクですし、作成者がどんな人なのかもジワジワ滲みでてくるような気がします。FacebookやInstagramで、その人の書きっぷりを見ていると「この人こんな感じの人なんだろうなー」と、想像できたりしますよね(それが当たっているかは別)
口ベタな人、面接で緊張していつもうまくしゃべれない、という人は是非ポートフォリオに助けてもらってください。
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