
基本情報技術者試験の勉強法|IT初心者が合格のためにやっておくべきこと
基本情報技術者試験、略称FE。
「よく名前が挙がるけど、どんな問題が出るのかいまいちイメージできない」「IT業界でやっていくためには取るべきと聞いたが、独学で合格できるのだろうか」といった声もよく聞きます。
基本情報技術者試験はITエンジニアとして基礎的な知識、能力を備えていることを証明できる国家資格です。
IT業界全体の知識が問われる為、その出題範囲はプログラミングやソフトウェアの仕組み、プロジェクトマネジメントなど多岐にわたっていて、短期間での丸暗記はかなり難しいと言えます。
しかしその代わりきちんとスケジュールを立て、効率的な勉強法で挑めば、IT業界初心者でも十分に合格できる資格です。
かくいう筆者も文系出身のエンジニアですが、これから紹介させて頂く工夫をしたことで基本情報技術者試験に合格しています。
本記事では、独学で勉強を進める為に初心者が意識すること、そして試験に合格するための勉強法をお伝えします。
目次
1.基本情報技術者試験の勉強法でIT初心者が意識すること
本章では、IT初心者が試験を受けようとする時に心がけなければならない点を取り上げます。それはズバリ「スケジュール」と「重要分野」。初心者でも計画的に重要分野の対策が出来れば合格は難しくありません。
1-1.最低3ヶ月の勉強期間を確保する
基本情報技術者試験の初心者の勉強時間は、平均150~200時間と言われています。平日に1時間、休日に4,5時間勉強すると仮定しても、3ヶ月は必要な計算になります。
3ヶ月間必ずこの時間を勉強に割けるとは限りませんので、3ヶ月は最低ラインとして、4~5ヶ月かけて少しずつ確実に知識を定着させていくことをお勧めします。1週間ごと、1ヶ月ごとの勉強時間を決めておき、一定期間の中で都合に合わせて勉強をこなしていくなど、ある程度流動的なスケジュールを組むと良いでしょう。
重要なことは最低3ヶ月以上の勉強期間を確保し、無理のないペースで続けられるスケジュールを組むことです。
1-2.科目A「テクノロジ系」、科目B「アルゴリズムとプログラミング分野」の対策を最優先する
この分野を最優先として挙げたのは、どちらも出題される割合が多く、かつIT初心者にはとっつきづらい為です。具体的にどのようなことを問われるのか見てみましょう。まず科目A「テクノロジ系」について、出題範囲をおおまかな表にしました。
【表1. 科目Aテクノロジ系出題範囲一覧】
大分類 | 中分類 | 出題範囲(知識項目例) |
基礎理論 | 基礎理論、アルゴリズムとプログラミング | 2進数、ベン図、配列、プログラミング言語など |
コンピュータシステム | コンピュータ構成要素、システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア | コンピュータの動作原理、OSの種類、設計ツール、電子経路など |
技術要素 | ヒューマンインタフェース、マルチメディア、データベース、ネットワーク、セキュリティ | GUI、AR、データベース操作、インターネット技術、暗号技術など |
開発技術 | システム開発技術、ソフトウェア開発技術 | システム要件定義、ソフトウェア開発モデル、著作権管理など |
【参考】FOM出版『よくわかるマスター 令和5-6年版 基本情報技術者試験 対策テキスト』2023年より抜粋
2進数やベン図などの数学からインターネットの仕組み、システムを開発するときの手順や開発モデルなど、ITにあまり触れてこなかった初心者には中々ぴんと来ない項目が多いことが分かるかと思います。表の通り出題される分野も多岐にわたる為、ある程度時間をかけて知識を定着させていく必要があります。
更に科目Aでテクノロジ系の対策を最優先するべき理由として、科目Bにおいてもこの分野の知識を前提とした問題が出題されるからです。学生時代に文系科目を専攻しており数学に触れるのが久しぶりという筆者のような方は、十分に時間を確保して取り組むことをおすすめします。
次に科目Bの出題範囲を見てみましょう。
【表2. 科目B出題範囲一覧】
分野 | 技能項目例 |
プログラミング全般に関すること | 実装プログラムの要求仕様、既存プログラムの解読など |
プログラムの処理の基本要素に関すること | 型、配列、変数、比較演算、選択処理、繰り返し処理、関数の呼び出しなど |
データ構造及びアルゴリズムに関すること | 再帰、スタック、キュー、木構造、グラフ、連結リストなど |
プログラミングの諸分野への適用に関する事 | 数理、データサイエンス、AIなどの分野を題材としたプログラムなど |
情報セキュリティの確保に関すること | マルウェアからの保護、バックアップ、ログ取得及び監視、脆弱性管理など |
【参考】FOM出版『よくわかるマスター 令和5-6年版 基本情報技術者試験 対策テキスト』2023年より抜粋
このうち、「情報セキュリティの確保に関すること」以外はプログラミングとアルゴリズムの分野にあたります。科目A同様初心者にとっては学習に時間がかかり、かつ出題の割合が多い分野である為、最優先で対策することが必須といえます。
それでは、各科目を学習するにはどのような方法を取ればよいのでしょうか。次の項目で具体的に解説します。
2.科目Aの勉強法
科目Aは短い問題文を読んで回答を選択する科目です。
基本的に用語を暗記していくことで対策ができますが、前述のように科目Aの知識を下敷きにした問題が科目Bに出る為、しっかり知識を身につける必要があります。
2-1.最重要分野はテクノロジ系「基礎理論」
科目Aでの最重要分野は「テクノロジ系」と書きましたが、中でも重視するのは「基礎理論」です。なぜなら、2進数やベン図、配列といった、数学が苦手な人にとっては攻略に時間のかかる分野である為です。また、この分野は暗記だけでなく解き方を合わせて覚える必要があります。
例えば、下記は過去実際に出題された問題です。「and」や「or」の定義を把握するだけでなく、それらを組み合わせて問題の範囲を表すにはどうすれば良いかを考える必要があります。これは単純な用語の暗記だけでは解くことができません。
※平成29年度 秋期 基本情報技術者試験 午前 問98(引用元:https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/openinfo/questions.html)
このような、解法も覚えなくてはならない科目A「基礎理論」の対策としておすすめをご紹介します。
2024年版 基本情報技術者試験問題集Lite(全問解説)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.startthailand.fe_lite&pcampaignid=web_share
(※リンクはGoogle Playのもの)
これはスマホ用アプリで、試験の過去問が全て出題されています。
解説がついている為、例で挙げたような基礎理論の問題も解き方を覚えながら勉強することができます。通勤時間や休憩時間などのスキマ時間を使ってお手軽に学習できるところもおすすめです。
基本情報技術者試験ドットコム
こちらはWeb問題集で、解説付きの過去問を解くことが出来る点では前述のアプリと同じですが、試験制度の解説、掲示板、参考書や問題集の紹介なども見ることが出来ます。他の受験者からの情報なども参考にしながら学習したい人におすすめのサイトです。
2-2.マネジメント系、ストラテジ系は「問題を解く⇒語句を調べる⇒覚える」の繰り返し
前項で触れたテクノロジ系以外に、科目Aはマネジメント系とストラテジ系があります。それぞれについて出題範囲を表にしました。かなり広い分野から出題されますが、基本的に用語の暗記や表、フロー図の見方を理解していくことで対策できます。
【表3. 科目A マネジメント系出題範囲一覧】
大分類 | 中分類 | 出題範囲(知識項目例) |
プロジェクトマネジメント | プロジェクトマネジメント | プロジェクト全体計画の作成、スコープの定義、コストの見積、リスクの評価、品質管理 など |
サービスマネジメント | サービスマネジメント | ITIL、サービスマネジメントシステムの支援、パフォーマンス評価、システム運用管理 など |
【参考】FOM出版『よくわかるマスター 令和5-6年版 基本情報技術者試験 対策テキスト』2023年より抜粋
【表4. 科目A ストラテジ系出題範囲一覧】
大分類 | 中分類 | 出題範囲(知識項目例) |
システム戦略 | システム戦略 | 情報システム戦略、ソリューションビジネス、業務分析 など |
システム企画 | システム化構想、ITポートフォリオ、要求分析、調達計画 など | |
経営戦略 | 経営戦略マネジメント | 競争戦略、マーケティング理論、ビジネス計画立案、競合分析 など |
技術戦略マネジメント | 技術動向、コア技術、技術開発投資計画、製品応用ロードマップ など | |
ビジネスインダストリ | ビジネスシステム、IoT、生産管理システム、民生機器、産業機器 など | |
企業と法務 | 企業活動 | PDCA、コーポレートガバナンス、品質管理手法、財務会計 など |
法務 | 著作権法、サイバーセキュリティ基本法、コンプライアンス、JIS など |
【参考】FOM出版『よくわかるマスター 令和5-6年版 基本情報技術者試験 対策テキスト』2023年より抜粋
マネジメント系やストラテジ系は、前項で紹介したアプリやWeb問題集だけでも対策は可能です。問題を解き、用語解説を読んで理解し、用語を暗記していく作業の繰り返しになります。「スマホやPCの画面を見続けると疲れる」「紙の参考書の方が使いやすい」という方には、対策テキストが出版されていますのでそちらも活用すると良いです。
筆者は「問題を解く前に知識を入れておきたい」と思ったので最初に参考書を読んでから問題に取り掛かりましたが、まず問題を解くことから始めて、理解しづらい部分は参考書の解説を読む、という流れでも問題ないと思います。大切なのはそれぞれに合った続きやすい学習法を見つけることです。
下記のテキストは解説が詳しく、Web試験も付いていてお得ですのでおすすめです。定期的に新しいものが出版されるので、最新のものを購入しましょう。(ただし科目Bの問題や解説は載っていないので注意が必要です)
FOM出版『よくわかるマスター 令和5-6年度版 基本情報技術者試験 対策テキスト』
3.科目Bの勉強法
科目Bは、1つの大問の中にいくつかの小問が出題される形式です。問題文も長く、科目Aに比べて1つの大問を解くのに時間がかかります。基本情報技術者試験に合格する為には、科目Aと科目Bそれぞれで1000点中600点を取る必要があります。科目Bで600点を確保するためには、知識と解き方の理解、そして出題形式への慣れが大切です。
3-1.全問中8割を占める「アルゴリズムとプログラミング分野」は知識と解き方の理解の合わせ技
1-2で触れた通り、科目Bの殆どはアルゴリズムとプログラミング分野からの出題です。これらの対策は科目Aで用語を覚えること、そして解き方を理解することです。ですので、科目Aテクノロジ系の学習をある程度進めてから取り掛かるようにしましょう。そして、解き方を理解する為には数を多くこなすより、少数の問題を繰り返し解いて考え方をインプットしていく学習法がおすすめです。
IT初心者は始め苦戦するかもしれませんが、この分野の対策がきちんとできれば、合格ラインの600点を超えることができます。筆者も最初に科目Aテクノロジ系の学習を進めていた為、いきなり科目Bの学習をするよりは比較的スムーズに解いていくことが出来ました。
科目Bについては、基本情報技術者試験を実施しているIPA(情報処理推進機構)のホームページでサンプル問題や公開問題を公開しています。
IPA(情報処理推進機構) 科目B試験サンプル問題
https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/henkou/2022/20220425.html
3-2.ボリュームの多い科目Bを限られた時間で正確に解けるようにする訓練
科目B試験は試験時間100分で20問を解く試験です。問題数こそ少ないものの問題文の量が多く、慣れていないとかなり苦戦してしまいます。本番で慌てないよう、時間配分を意識した対策もしておきましょう。勿論いきなり100分で20問を解こうとするのは大変なので、まずは数問をじっくり解き、文量や形式に慣れてから本番を意識した対策を始めるのがおすすめです。
考えても分からない問題は一旦飛ばして全ての問題に目を通し、確実に解ける問題に正解する、時間が余った場合は飛ばしたものに戻って再度考えてみるなどの解き方を身につけておくと効率が上がります。筆者はこの訓練をする時間があまり取れず本番で少し焦ってしまったので、時間内で数をこなす訓練は出来れば何度かやっておくことをおすすめします。
また、基本情報技術者試験の実施方式はCBT方式(コンピュータで受験する方式)です。
前項で紹介したIPAのサンプル問題はPDF形式なので、時間配分の訓練には不向きです。限られた時間で問題を解く訓練の為には、下記をおすすめします。
基本情報技術者試験過去問道場(午後)
こちらは2-1で紹介した基本情報技術者試験ドットコムの午後問題(現名称科目B試験)を扱うページです。Web問題集ですので、実際に本番の試験を受けている感覚に近い形で問題を解くことが出来ます。出題分野を絞ることもできるので、対策したいところにフォーカスして取り組めて便利です。
4.まとめ
- 最低3ヶ月の勉強期間を確保する
- 科目A試験ではテクノロジ系「基礎理論」、科目B試験では「アルゴリズムとプログラミング分野」の対策を最優先する
- 科目Aの勉強法:アプリやWeb問題集を活用し、「問題を解く」⇒「用語を覚える」の繰り返し
- 科目Bの勉強法:いくつかの問題をじっくり解いて出題形式や問題文の量に慣れてから、効率よく解いていく為の訓練をおこなう
- 対策は①科目A試験 ②科目B試験 ③科目B試験の本番訓練 の順でおこなう
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