システムエンジニアの将来性|将来性があると推測できる3つの根拠
システムエンジニアに将来性はあります。そんなに過剰に心配しなくても大丈夫ですよ。但し、それは条件付きです。
最近世間を騒がせている「2025年の崖」問題でも懸念されているように、システムエンジニア市場はまだまだ人手不足です。そして、この傾向は今後更に大きく深刻になると、あちこちの調査レポートで予想されています。
筆者であるわたしは、IT業界キャリア25年を過ぎたシステムエンジニアですが、現場における人手不足を日々実感しています。また、目まぐるしく変わっていくIT業界のここ最近のニーズの変化も我が身に感じています。
本稿では、「システムエンジニアに将来性はあるのか」と心配するIT業界志望のみなさんに向けて、各種調査データから読み取ることができるシステムエンジニアの将来性と、現役SEのわたしがIT業界の現場から感じる本音について、明快シンプルにお話ししようと思います。
本稿を読み終わった時に、みなさんの心配が少しでも払拭されていますように…。
関連記事目次
1.システムエンジニアに将来性があると推測できる3つの根拠
1-1.【根拠その1】ニーズの高さは調査結果の数字からも明らかだから
システムエンジニアへのニーズは、確実に高まっています。そして、その傾向は今後も増えると予想されています。大きな根拠の一つは、求人倍率の高さです。
大手転職斡旋企業のdoda(デューダ)調べによる2019年9月の職種別の中途求人倍率において、技術系(IT/通信)は10.33倍という高倍率です。ちなみに、dodaが調査した11職種の中で、唯一の2桁数字です。そして、5年前(2014年9月)の求人倍率(6.06倍)と比較しても、その上昇傾向は明らかです。(※1)
システムエンジニア1人に対して、採用したい企業が約10社あるという需給のバランスは、システムエンジニアひいてはIT業界の将来性の高さを示しています。
(※1) 参考:doda「転職求人倍率レポート(2019年10月15日発表)」
1-2.【根拠その2】企業経営にとってIT投資は今後益々重要なテーマになるから
企業におけるIT投資は、企業経営の重要なテーマであるからこそ、システムエンジニアに対するニーズは、これからも不変的に継続すると予想することができます。
例えば、前項で調査データを挙げたdodaの調査レポートでも、銀行や証券会社でITシステムやWebサービスの拡充に力を入れるため、システムエンジニアの採用を強化する動きが見られる、という分析がされています。
また、金融機関以外の流通、生保、製造業、メーカ等の一般企業も、景気回復と共に、後手に回っていたシステム再構築にいよいよ着手するために、社内SEの採用を増やしているという傾向もあります。その背景として、業務効率化だけではなく企業戦略のひとつとして、WebサービスやITの重要性への認識が高まっていること、そして、スピード感のあるシステム構築を行い、そのノウハウを次に活かしたいと考える企業が増えていること等が挙げられます。
そのため、企業では外部にシステム開発を依頼するのではなく、社内業務を理解したスペシャリストとして企画、開発、保守・運用を行う社内SEを採用する動きが高まっています。
システムエンジニアに対するニーズは、IT業界のみならず一般企業内部にも広がりをみせているのです。
1-3.【根拠その3】AIが苦手なヒューマンスキル領域はずっと生き残るから
AIが将棋でプロ棋士に勝ったという事件は、世間に大きな衝撃を与えました。
そういう背景もあり、システムエンジニアが早々AIに仕事を奪われるという懸念を持つ人もいるでしょうが、わたしはそうは思いません。何故なら、顧客が人間である以上、AIが苦手とするヒューマンスキル領域は、ずっと生き残るからです。そして、プログラマーやシステムエンジニアの仕事をAIがすべて代替わりできる時代は、まだまだ先の未来だと考えるからです。
それでは、システムエンジニアの仕事の中で、AIが苦手とするヒューマンスキル領域とは、一体どのような領域を指すのでしょうか。
そこにこそ、システムエンジニアの将来性があるのです。
- システム開発の企画立案、提案
- 顧客へのヒアリング
- 要件定義
- 仕様調整等、顧客との折衝を含んだコミュニケーション業務
システムエンジニアは、ロボットではありません。そして、システムエンジニアが構築したシステムを利用する顧客も、またロボットではありません。お互い人間であるからこそ、データ化できない部分を察する力を持っています。それですら人間が必要なくなるレベルのAIが普及するのは、10年、20年という近い未来ではないはずです。
とは言え、「IoT」や「AI」、「VR]といった未来テクノロジーは、やがて企業内はもちろんのこと、わたしたちの日常生活レベルまで普及して来るでしょう。普及が進むということは、それに比例してシステムエンジニアも必要不可欠になるということです。
AIがシステムエンジニアの仕事を奪う未来がやって来るというのであれば、いっそそれらを開発、運用する側へキャリアシフトするという手段も、システムエンジニアの大きな将来性のひとつと言えるのではないでしょうか。
2.現役SEが語る「システムエンジニアの将来性」とは
2-1.人手不足は本当の話
IT業界が慢性的に人手不足というのは、本当の話です。
それについては、調査データにもしっかり表れており、IPAが公表した調査(※2)では、約92%のIT企業と約85%のユーザ企業が、IT人材が不足していると回答しています。システム開発等のITニーズは今後も拡大していく予想ですが、それに反して少子化等による労働者人口の減少に伴い、ますます人材不足が深刻化すると予測されているのです。
そして、実際にIT業界の現場にいて実感するのは、人手不足によるシステムエンジニア一人当たりに対する業務負担の大きさです。そもそも根本的な数が足りていないうえに、スキルの高い人に業務が集中するという必然ともいえる傾向があります。
これからのニーズの拡大に対応していくためにも、システムエンジニアを始めとするIT人材の拡大は、急務であるといって過言ではありません。また、ニーズが高く、かつ切実に人手不足だからこそ、努力次第では未経験者が活躍できるチャンスが多いとも言えるでしょう。
(※2) 参考:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「IT人材白書2019(令和元年5月24日)」
2-2.IT業界はまだまだ未成熟な世界
最先端技術を駆使する世界で仕事をしていると思われているIT業界ですが、実は、社会的にはまだまだ未成熟な世界なのです、と言ったら信じますか?
ひと昔前までは、「努力と根性で、無茶振りな仕事もどうにかしろ」が平気でまかり通っていました。深夜残業、徹夜作業、自宅持ち帰り作業も当たり前。セキュリティに厳しい今の時代では考えられないですよね。
世間では「システムエンジニア35歳定年説」や「システムエンジニア会社は不夜城だ」という誤解が、まことしやかに囁かれているようですが、それはその時代のシステムエンジニアの働き方が、未だにイメージとして根強く残っているからです。
昨今の「働き方改革」の波が、ようやくIT業界にまで到達してきて、上記のような無茶苦茶な働き方を強要する会社や上司も無くなりつつありますので、安心してくださいね。
そういう意味では、システムエンジニアのみならずIT業界の労働環境としても、今後まだまだ良い方へ伸びる余地のある、将来性の高い業界であると期待を込めて主張したいと思います。
会社選びは大事ですけど。(苦笑)
関連記事2–3.システムエンジニアの将来性は条件付き
前書きで、「システムエンジニアに将来性はあります。但し、それは条件付きです。」と書きました。
これまでご説明してきたように、システムエンジニアという職業全体の傾向としては、今後も高い将来性が見込めますが、その将来性の波にうまく乗れるか、乗れないかは、結局は、本人の意欲と努力次第です。だから、「条件付き」なのです。
ニーズのある企業から高い需要で求められるのは、スキルのあるシステムエンジニアです。そして、今後ニーズが高い将来性のある業界だからと言って、入れさえすれば一生安泰というほど甘い業界ではないということは、長くIT業界に身を置く者として申し上げておきます。
でも、それはIT業界に限らず、他の業界でも同じではないでしょうか。
自分自身のビジョンをしっかりと見据え、業界で生き残っていくための努力を続けなければ、業界からも企業からも取り残され、使い捨てられてしまう危険性が存在することも、また揺らぎない事実です。
3.将来性のあるシステムエンジニアに必要なものとは?
システムエンジニアが、これから将来性のあるIT業界で生き残っていくためには、技術スキルのみならず、人間力を高めて、必要とされる人材になることです。
どんなに技術スキルを磨いても、同じ技術を持っている人材がふたり現れた時に、どちらでもいいという判断をされる場合があります。そんな時に、「この人と仕事がしたい」と思われる人間であることが重要です。
システムエンジニアというと、コミュニケーション能力低めと世間では思われがちですが、「1–3」でご説明したようなヒューマンスキル領域の仕事をするためには、顧客や同僚と円滑にコミュニケーションを取ることは、必須条件です。逆に、コミュニケーション能力なしで、システムエンジニアという職業は務まりません。
人間は、たった一人でロボットのように仕事をしていくことはできません。そしてまた、ひとりきりで完結するシステムも世の中には存在しないのです。それでは、どうやって人間力を高めればよいのか、という点については、ボリュームのあるお話になりますので、当サイトの別記事にお任せしたいと思います。
以下の記事を参考にして、ぜひ人間力を磨いてくださいね。
関連記事 関連記事4.さいごに
システムエンジニアの将来性について、現役SEである筆者の視点を交えてお話してきましたが、如何でしたでしょうか?
本稿を読んでくださったみなさんが、IT業界に対して少しでも前向きな気持ちで興味を深めてくれたとしたら、業界に身を置くひとりとしてこんなに嬉しいことはありません。
最後に、IT業界についてネット検索をする際の注意点について、わたしからひとつアドバイスというか、お願いがあります。
ネットで検索したIT業界について書かれた記事を読む際には、どうかその記事がいつ書かれたものなのかをよく確認してから読むようにしてください。IT業界は他の業界と比べると様々な点において変化が激しい業界です。世間での数年前の認識が、今では全く当てはまらないことも多々あります。
Google検索で上位に表示された記事が、最新情報とは限りません。自分のアンテナを高く伸ばして、今の最新情報をキャッチしてくださいね。
そうすれば、ひと昔前には「3K(きつい、帰れない、給料が安い)」と言われていたIT業界も変わりつつあるのだということが、きっとご理解いただけるのではないかとと思います。
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